55- 実験概要
【ダンジョンクエスト 『トラル国営研究所』 を開始します】
仰々しく出てこられても入り口はレーザーの余波ででろでろなので何というか威厳が無いですね。
一応冷えて固まってはいますが所々プラスチックが解けたみたいになっています。
「ていうか国営ですか。 元は国があったってことなんでしょうが……」
――もしかしてあのアンドロイドの残骸たちは国の住民でそれが何かしらの事件で一斉に滅亡したとか?
そうだとしたら本当に何があったのか気になりますね。
敵が出てくるかと思いましたが流石にあのオルドル戦の後の手心なのか、全く敵は出てきません。
武器らしい武器と言えば腕と足の爪くらいなので出なくて助かったです。
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「――これは…… 人…… だったものですか」
しばらく進んでいると、地面に人型の石像が転がっていました。
服はとっくに風化して無くなっています。
――何か幸せそうに眠っていますね。
その石像からはなぜかは分かりませんが安堵感を覚えます。
「――首に何かありますね」
これは…… 鍵ですね。
真っ黒な妙に仰々しい鍵で、持ち手の所は何かしらのマークでくりぬかれています。
首輪にくっついていますが、かなりの年月が経っているらしく、首輪が簡単にぼろぼろになり、鍵が取れてしまいました。
何の鍵かは分かりませんが一応持っておきましょう。
――このマーク何か見覚えがありますがどうせ大したことないでしょう。
さらに進むと、とうとう最深部らしき様々なモニターのある場所にたどり着きました。
「思ったより狭かったですね…… モニターは生きている…… おや?」
モニターには何かの機械兵や空っぽのフラスコ、そして私たちが攻略したイクスエルツ大研究室の最深部と思われる、ビルドアーマーを無くしたロボットの残骸と、フュージョンコアが乗っていたであろう円錐が映っています。
『お久しぶりです。 博士』
「誰ですか!」
後ろを向き、爪を構えると、そこには四角い箱に金属の棒のような足が付いているロボットがいました。
何だかスチームパンクのようでこの研究所の雰囲気とは合わないはずなんですが、なぜか不気味にマッチしてしまっています。
『私をお忘れですか、博士。 無理もありません、博士が睡眠をとっていたのは3467年と8月27日5時間46分36、4532……』
「少し待ってください。 あなたは私をここの博士だと何故思うんですか?」
『その鍵の持ち主だからです。 そのカギは博士の首にくっついていたはずなので取れません。 なので博士はその鍵の持ち主をマスターコードとしたのです』
「へぇ……」
思ったよりガバガバな管理ですね……
確かに首輪にくっついていましたが、あれが取れないものだとしたらまあ、納得はしますが……
というか人間の寿命や性別が変わっていることが気が付かないんですかね?
もとの持ち主もさっきそこで石化してましたよ?
なんというか色々とピースが欠けていますね。
前任者…… この鍵の持ち主はこれが都合がいいと思ったのかもしれませんが。
『博士、何なりとご命令を』
「――ではここで行っていた研究の現状の説明を」
都合がいいので使ってしまいましょう。
何かいいものがあるかもしれません。
『了。 プロジェクトネーム【幸福、そして秩序】正規ルート、失敗。 別ルートによる達成率は100%です。 そして同時にイクスエルツ大研究室にて行われていた【星誕】達成率、失敗、修復100%不可能です』
「実験の説明をお願いします」
結構なことやってたんですね。
まずプロジェクト名が不穏です。
『了。 【幸福、そして秩序】はカオスコアとオーダーコアを用いて全生命体の消滅を図りました。 ですが、カオスコアは王家により隠されてしまい、オーダーコアのみでの実験となりました。 オーダーコアの力を無理やり引き出したため、暴走。 ほぼすべての人間は機械となり、オーダーコアのある方向へ集まり、そして自壊しました。 これが【幸福、そして秩序】の実験概要となります』
「――では【星誕】の方を」
何かとんでもないことしてたようですが、とりあえず聞いておきましょう。
『イクスエルツ大研究室の最深部にて、星誕の金属【ノヴァメタル】の生成実験中、規定量に達したため回収だけとなりましたが、防衛ロボットが破壊され、【ノヴァメタル】は強奪されてしまいました。 フュージョンコアの崩壊も確認されたので、実験は不可能となりました』
これは私とケイ達がイクスエルツ大研究室を攻略したことによる影響ですね。
「なるほど…… 何か実験計画みたいなのはありますかね?」
ここまで聞いちゃうと気になるので聞いておきたいですね。
『実験計画は…… カオスコアの波長を確認しました。 実験を進行させます』
そういって目の前のロボットは急に話を変え、何かの操作をし、モニタールームの中央の隠し扉を開けました。
「科学力はあるはずなのに、このロボットは妙に古臭いですね……」
急に話を変えるところなど、何というかイクスエルツ大研究室の防衛ロボットを作れるはずなのに、技術をセーブしてこのロボットを作ったって感じがします。
あのロボットは少しうざかったですが、味方となるなら心強いはずです。
何かこういう古臭いロボットの方が便利だったんですかね。