51- 【龍血晶】
「ん…… あ……」
――見事に食われましたね……
どうやら体内は液体金属でできていたらしく、私にピッタリ合うように冷たいものが密着しています。
なぜか呼吸はできているし、ビルドアーマーも生きていますが液体金属の空間がどんどん狭くなっているので死ぬのは時間の問題でしょう。
というかさっき話しかけてきた人は誰ですか……?
「っつくぅ!」
液体金属の圧力で腕が折れましたか……
これで腕のスラスターは使えなくなりましたね……
『ねえねえ、このままじゃ死んじゃうよ? 頑張って作ったこの機体がなくなっちゃうよ?」
別に死んでも問題ないですよ。
オルドルの効果でデスペナルティはありませんので。
死に戻ったらまた攻略方法を考えないと……
『それはあなたが抵抗しなかったが故の慈悲。 今のあなたはあの秩序に抵抗したからその効果は切れてるし、むしろ秩序の憤怒によってすべて失うかも』
そんなこと言われてももうオルドルのお腹の中なので死ぬのは確定しているんですがね。
ビルドアーマーのエネルギーがほぼ枯渇しているのにどうやって脱出するんですか。
『知りたい? どうしよっかなぁ』
もったいぶらずにさっさと教えてくださいよ。
そういえばあなたは一体誰なんです?
『私の名前はリア。 あなたの【龍血晶】に封印されたとでも言っておけばいいかな。 詳しく説明したいところだけど時間がなさそうだから単刀直入にいうね。 これ借りていい?』
これというのはビルドアーマーのことですか?
それだったら自由にしてください。
どうせ壊れますし。
『わかった、ありがと。 それじゃ、しばらく借りるね』
リアがそういったとたん、目の周りが包み込まれるようになり、意識が落ちていきました。
・
・
・
「さて…… 早速暴れようか! 【円環之龍】起動!」
私、リアはオルドルを倒すために【龍血晶】の力を開放する。
オルドルの内部で空間が限られているにも関わらず、無理やりビルドアーマーを変形させる。
本体であるセツナの意識は【龍血晶】に押し込んであるから私がやられるとお互い死んじゃうからね。
何とかしないと。
『ギュルガァ!?』
「よし! 成功!」
【円環之龍】の効果の1つは【龍血晶】から動力水晶にエネルギーを戻して無限に得るという離れ業を行えるようにすること。
これによりエネルギーは【龍血晶】か動力水晶が壊れるまで増え続ける。
そしてビルドアーマーも【円環之龍】にふさわしい形に姿を変えていく。
背中のスラスターは効果をそのままに大きな龍の翼に、そしてレッグアーマーは龍の足のような大きな爪が、アームアーマーにも大きな爪と大砲に形を変えていた。
もしセツナがこの技を使っても1秒もしない内大爆発が起こるが私、リアだからできる技だろう。
「どおりゃっせい!」
『グゥガ!』
リアの右足とオルドルの右腕が空中で勢いよくぶつかり合い、衝撃波を発生させる。
かなりの上空で発生した衝撃波なのにも関わらず地面にまで届き、アンドロイドの残骸が巻き上がっていく。
『キュリュァ!』
オルドルは巻き上がったアンドロイドの残骸をすぐさま液体金属で自分に接続し、私目掛けてレーザーを放なってくる。
「さっさと落ちろ! 【アンバランス】!」
【円環之龍】で発生したエネルギーを【アンバランス】によって左腕に集め、全力でオルドルの顔面をぶん殴る。
大きく吹き飛ばされたオルドルは背中の羽のスラスターを使ってリアの方まで突っ込んでくるが、エネルギーを翼に叩き込んで上昇し、回避する。
『ギュルゥ……』
「まだまだ! 【魔龍脚】!」
エネルギーの噴射が終わったオルドルの背中目掛けて龍の足で大きく蹴り飛ばし、地面にたたきつける。
その衝撃で【アンドロイドの墓場】のアンドロイドたちを薙ぎ払うように地面を擦っていく。
『ギュルォ!』
地面に立ったオルドルは再度私の方を向き、にらみ合う。
咆哮をしたと思うと、体がどんどんと小さくなり、車サイズまで小さくなっていく。
「諦め――!」
今までとは比べ物にならない速度で突っ込んできて足を切断していきます。
「ここからが第2ラウンドかな?」
目の前には、戦艦と見間違うようなサイズだったオルドルとは思えないようなサイズの小さい龍が空を飛んでいました。
追記
私はこういう他人が乗っ取って体を動かすというのが好きなのです。