39- 多分そういう星の下
「っ! 飛んだ!?」
私が前線に入ったとたんにケイを攻撃していた1体がリルとルイスの方に飛んでいきます。
「ドラゴンが一番やばいと思った方を先に潰しに行ったんだ!」
「こいつらエネミーのくせして頭がいいですね!」
連係プレイとは恐れ入る。
外にいるロボットが操作している感じもないですし最高傑作というのもうなずけますね。
『何か褒められた気がするな! どうだ! すごいだろう!』
こいつは後でしばくとしてまずは目の前の敵です。
「今はまずいです! ルイスさん! お願いします!」
「任せてねぇ」
ルイスがドラゴンの方に銃を構えると口が爆発しドラゴンの姿勢が若干ズレて床にかみつきます。
「仲間に近づいてんじゃねぇ!」
最初にドラゴンに向かていったケイが首に向かって大剣を振り、私が杭で押し込みます。
ドラゴンは物言わぬ顔で首を再生してこちらをにらみつけています。
「ケイ! そっちは任せました!」
一応これで一人が1体を相手するという最高の陣形が取れましたね。
『ギュルゥゥゥィン!』
こちらを威嚇するように金切り音のような咆哮を上げてきます。
その咆哮に反応するように爪や尻尾といった武器が黒いオーラをまとっていきます。
「こっちも剣…… 剣は初めてなのでお手柔らかにお願いしますよ!」
剣というには棒ですけどね!
私の声に反応するようにドラゴンは右腕の黒いオーラをまとった爪で攻撃をしてきます。
私はその攻撃に横から杭を当てて横に逸らします。
「受け流せないことはないと…… それならドラゴンのターゲットを取り続けることは!」
突如、空中に黒い斬撃が伸び、右の手首から先が切断されました。
「――何故攻撃が2回も」
しかもさっきの攻撃はあのドラゴンの最初に私が逸らした攻撃のルートです。
時間差の斬撃…… ですかね?
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――確定ですね。
あの黒いオーラを持つ部位の攻撃はその攻撃のルートに二回目の攻撃として黒い斬撃が飛んできます。
しかも厄介なことに攻撃の時差が一定じゃありません。
完全に忘れたころの攻撃の斬撃で右腕がほとんど飛ばされてしまいました。
「セツナさん! ケイさん! ドラゴンをまとめてください!」
どうやら準備ができたみたいです。
リルの方を見ると【ドラゴンブレス】のバッテリーパックが外され、代わりにリルの背中のバックパックから伸びた太い電線が刺さっています。
攻撃を避けつつ【ドラゴンブレス】の目の前まで連れていきます。
「今だ! 【インパクト】!」
ケイが相手していたドラゴンの頭を思いっきりぶったたき2体を衝突させます。
「行きます! 【フルバースト】!」
リルがそういった瞬間、【ドラゴンブレス】に取り付けた【龍血晶】が今までに見たことがないくらいの輝きを放ち、レーザーを放出しました。
レーザーは今まで私が撃っている太さとは比べ物にならないほど太く、ドラゴンを飲み込んでいきました。
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「大丈夫ですか~」
――あれ?
寝てましたかね……?
なぜかルイスがこっちをのぞき込んでいます。
「残りのHPが少ないのとあの轟音が重なって見事にスタンしてましたよぉ。 あ、腕は直しておきました」
「――ありがとうございます。 それでどうなりました?」
「パーティの被害とすればセツナちゃんのダメージとリルの装備が完全に使い物にならなくなったことかな? それでドラゴンはと言えば…… 見ればわかると思うよぉ?」
ドラゴン姿は完全に消えていて、それどころか私たちを取り囲んでいた金網、あのムカつくロボット、その後ろの壁を越えて岩盤ごと消し飛ばしていてぽっかりと空間が空いています。
「――こんな威力出せるんですか……」
「そのことについてはリルから聞くといいよぉ」
ルイスと話して一息ついたので進められた通り、リルの方を見ると【ドラゴンブレス】の近くにいました。
――【ドラゴンブレス】から煙が上がってるんですが……
「お疲れ様ですリル。 いい一撃でした」
「それなんですけど…… 壊しちゃいました! ごめんなさい!」
「は?」
流れるような土下座をしながらバッテリーパックを6つ差し出してきました。
早速取り付けてチャージを開始してみますが……
「――嘘ですよね! チャージが…… 出来なくなってます……」
「多分瞬間的な高出力に内部の基盤が耐えられないんじゃないかな…… と思ってます」
「――何で…… 私の作る武器はみんな壊れるんですか……」
今までのに比べると直せそうではあるのが幸いですが……
使い物にならない物はさっさと倉庫送りです。
「はぁ……」