200ー 決戦 ミロク Ⅵ
――最後の不敵な笑み、それは戦艦内に響き渡るサイレンとして帰ってきた。
「何のサイレンです!?」
「敵エネミーの出現だ! 運が悪いな! クソ!」
戦艦の外を見るとまるで宇宙空間が一つに固まったようなものが浮かんでいます。
徐々にそれが形を変えていき、タコのようなクモのようなよくわからない生物に変わっています。
「ノワールホラー。 宇宙空間をランダムで飛び回るコスモス内の最強生物だ。 ――さて、どうしようか」
「このロボットで倒せないんです?」
「奥義撃ったから動けん」
「――この時にミロクが来たら案山子ではないです?」
システムからの返事はありません。
それはつまりミロクがまだ倒れていないということになるんですが……
「あの亀裂は即死技なんだ。 それなのに生きているってことは今のミロクはあの空間内で封印されていることになる。 動けない状態でそのままならログアウトするだろ」
ログアウトすれば強制的に母船に戻されます。
そうすれば自動的に私たちの勝利ということにもなって……?
「じゃあ私達が倒れたら良くて相打ち、最悪負けではないですか」
「ま、そういうことなんだが…… 2人に任せてもいいか?」
「私と……」
「私だね」
いつの間にかマナがこっちに来ています。
「倒せますか?」
「多分余裕。 少なくともミロクに比べれば」
「ははははは……」
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真っ暗闇に取り残されたミロクが思ったことは「案外やるな」だった。
分身状態でレスト達を殲滅、本体の方でセツナやマナを迎え撃つ予定だったのだが、【原本抹消】によって分身は消滅、本体も甚大なダメージを追って本体の方で戦うことになってしまった。
本体の方なら一瞬で殲滅出来ると思っていたのに、セツナの能力であるエネルギーの無限化によってあの空間装甲を突破することができなかった。
ミロクはレストに攻撃を当てられない、レストはミロクに攻撃を当てられない。
それならばあたる攻撃、それも即死技を打つというのは基本すべての攻撃に当たるミロク相手ならば正解のはずだった。
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「まさかこんなに簡単に釣れるとは。 もういいよ、ノワールホラー」
私が相手を倒そうと外に出てそれなりの距離に移動したときでした。
ノワールホラーがまるで王の御前にいるかのように縮こまっています。
「バカな! 何で出てこれる!」
「――レスト、もしかして勘違いしてない?」
「――! 何を」
「私が操っているのは空間じゃない。 時間だよ」
「――! 何だこの数値は!」
レストの動揺が大きくなるにつれて私の内部出力が上がっています。
いや、これはリア側の出力増大……!
「――リアの時間をいじってエネルギーを生産、内部暴走で戦艦を爆破させる気ですか」
「惜しい、正しくは常に一定のエネルギーの流れを早くして乗算で増幅させてるだけだよ。 ――リアだっけ? その子の時間は止めてある」
確かにリアを戻そうとしても帰ってくる気配がありません。
「レスト! 持ちそうですか!」
「逆に使わせてもらってるよ!」
良かった。
大爆発で終わるということはなさそうです。
「――そろそろ義理はお腹いっぱいかな。 【***ー】」
ミロクが棒を軽く振ります。
「――は?」
その瞬間、レストの乗っていたロボットが木っ端みじんに切断され、いつの間にか出現していた空間の亀裂に飲み込まれていきます。
「じゃ、やろっか、本命たち」
【魔剣】が剣を、私は刀を構えミロクを迎え撃ちます。