199ー 決戦 ミロク Ⅴ
「展開」
変形したロボットの肩アーマーから現れたのは数百機の砲台ビット。
それらがミロクの周囲に浮かび照準を合わせる。
「プレイヤー以上の強さがあるとは思えないけどな」
「本命はこっちさ」
次々と潰される砲台ビットをおとりに自らもビットを叩き潰してその剛腕をミロクに叩きつける。
「――あれ、切れない」
「涼しい顔して受けられると中々困るな」
叩きつけた拳をミロクの持つ武器に当たり相殺、黒い稲妻をあたりに走らせる。
効かないと分かった拳は即座に引っ込め、ビットによる氷結弾を放つ。
「――再生するというよりすべての攻撃が受け止められているって感じですね?」
「流石は第二形態。 もっとひどくなってる」
「こっちからすれば何で切れないのかが気になるんだけどね」
「色々工夫をしてるからな!」
右の拳がミロクの剣に直撃、巨大ロボットとは思えない速さで左の足がミロクの翼の亀裂に直撃する。
「こんなもん!? こっちはまだまだ本調子じゃないんだけど!?」
ミロクの剣から繰り出される3つの黒い斬撃。
ロボットのボディ、肩アーマー、顔面に直撃し霧散し無効かする。
「ありゃ」
「これは短期決戦に踏み切った方がよさそうだ。 セツナ、エネルギーもらうぞ!!」
「ご自由にどうぞー」
どうせ吸われるのはリアですし。
「奥義【断裂次元】発動!」
右の拳がミロクの剣に直撃、右腕と切り離し拳自体が展開しミロクが出した亀裂とは違う純黒の亀裂から生えた影がミロクを亀裂の中へと押し込もうとする。
「あーそうか。 この影は同類なのか」
「同類、か」
「ありゃ」
「まあいい。 異空間へ追放とさせていただこう!」
いつの間にか復活していた右手と左手で黒い亀裂を広げ、影が勢いよく放出する。
「あれはどういう技なんです?」
「見た方が早い」
ミロクの体に黒い影がまとわりつき徐々に亀裂の中に押し込まれていく。
見る分だと完全に亀裂に閉じ込められるのは時間の問題ですね。
「――即死系ですか?」
「もちろん」
「じゃあ何でミロクは無抵抗なんです?」
「ミロクの癖だろ。 今回はそれに助けられたわけだが」
本当にそうなんですかね……
亀裂から伸びた影はとうとうミロクを亀裂に押し込み、その口を閉じようとしています。
「この戦艦の奥義と膨大なエネルギー…… うん? 減ってないな? まあいいや。 あれが完全に閉じれば我々の勝ちだ!」
「――あっけないですね」
「盛者必衰ってやつだな」
あんなに本気で来いって言ってたミロクがこんなですか……
一応最期を見届けましょう。
「――ん?」
「どうしたの? セツナ」
「――笑ってません?」
私の目の前で亀裂が閉じ、そこには最初から何もなかったかのように普通の空間が広がっていました。