108- タイプカオス
「――即死すると思ってましたね」
『うん、意外と生きているものだね』
どうやら生きているみたいで、私の周りには赤い血管のようなものが浮かんでいます。
目に吸い込まれたんだから当たり前と言えば当たり前ですかね?
「というか私の体無くなってません?」
全身が動きません。
できるのは周りを見ることだけです。
――あれ? 詰み?
『原因があると言えばこの空間に充填してるエネルギーかな。 全てマイナスのエネルギー、普通なら吸い込まれた瞬間に消滅するけど、コアとして1つの球が残ったって感じ。 因みに【龍骨晶】と【龍血晶】は融合してる』
「いまいち死んでいるのか生きているのかわからない状態ですね……」
そういえばあの船に入るときに使ったエネルギーもマイナスのエネルギーって言ってましたね。
「ねぇ、リア。 私がこの空間を掌握することってできるんでしょうかね?」
【龍骨晶】が最後に使った変形、タイプカオス。
あれは反転エネルギーを使って反物質の生成を行っていました。
この場に満ちるエネルギーをすべて掌握して反物質に変化させられれば……
とんでもないことが起こると思います。
『――やる?』
「行きましょうか。 ――アーキテクスチャ起動 タイプカオス――」
赤と白が交互に入れ替わっていた赤い球の色が赤く変化します。
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「――あれ? おっかしいなぁ」
もちろんセツナが【崩壊】内にバラバラになりながら入っていくのは私も見たし、現に出てきていない。
目は閉じたから出ることも不可能なはず。
それなのに相手が死んだって情報が来ない。
それは生きているって証明であって……
「! ――黒い大玉?」
胸のコアが1回大きく震えるのと同時に大きめの球が頭上に浮かんでいる。
それがゆっくり、ゆっくりと地面に向かって落ちてきている。
ぱっと見はただの大玉、だけど私の中でずっとサイレンが響いてる。
あれを壊さないと大変なことになるって。
「【破滅の呪い】」
剣から赤い光線が放たれ、大玉に命中する。
命中と同時に無数もの斬撃やレーザー、爆発が虚空から放たれる。
普通の敵なら最初の光線で消滅、もし生きていたとしても超火力の攻撃が絶え間なく浴びせられることでほぼすべての物質を消滅させることのできる【魔剣】の必殺技。
「――ほとんど変化なし!? 流石にまず――」
黒い大玉が地面にぶつかると同時に大きく膨れ上がる。
そして数刻後、私に襲い掛かったのは全く制御されていないエネルギーの大奔流、それは地面をえぐり、星さえも大きく削っていった。




