表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

宇宙船2816109

作者: 犬二号

A「こちら宇宙船2816109。システムオールグリーン。シグナルレッド。救助要請救助要請。応答願う。応答願う。……はぁ」


(Bが入ってくる)


B「よう。どうだった今日の成果は」


A「ダメだった。今日も救助船とは通信できなかったよ」


B「もう諦めろって。この広い宇宙でどうやってたった一個の宇宙船見つけてもらうんだよ」


A「逆にお前はどうしてそう簡単に諦められるんだよ」


B「だってここ居心地いいし。漫画とか映画のデータもたくさんあるから暇しないしさ」


A「地球を出発するときこれで遭難しても平気だぜとか言いながら持ってきたんだよな。あんなこと言うんじゃなかったよ」


B「言っても遭難してたって。別に不自由ないじゃん。例えば空気」


A「万能製造機が作ってくれる」


B「水」


A「万能製造機が作ってくれる」


B「食い物」


A「……万能製造機が」


B「何も問題ないじゃん」


A「アレ万能すぎてコエーんだよ!」


B「まあいいじゃん。映画でも見ようぜ」


A「いいよ。もう何周もしたから飽きたよ」


B「今日見るのは『君の名は。』」


A「見るわ」


B「『君の名は。』は何回見ても面白いからな」


A「これ何回目だっけ」


B「確か178回目」


A「よく覚えてんな……あ、でも腹減ったな。映画の前にメシ食おうぜ」


B「おっ!メシジャンケンだな!負けた方が万能製造機に注文するんだぞ!」


A「……いやまあ。いいけど」


B「メシメシジャンケン、ジャンケンポン!あいこでしょ!しょ!しょ!くっそー決着つかねえ!」


A「もう手の内分かってんだよなあ」


B「くっそー!じゃあ俺パー!次パー出すぞ!」


A「……じゃあ俺……グー出すわ」


B「なにい!?負けるぞお!?バカかあ!?」


A「あいこで」


B「ポン!……ああ!」


(互いにチョキ)


A「お前パー出すんじゃねえのかよ!」


B「お前こそなにチョキ出してんだよ!」


A「裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏まで読んだらこうなったんだよ!」


B「俺もだよ!」


A「いいよ、もう!俺取ってくるから。なに食う?」


B「カレー」


A「奇遇だな。俺もカレー食おうと思ってたんだ」


(言いながら扉を開けて出て行くA。無表情で硬直するB。少しして扉が開き、Aが慌てた様子で戻ってくる。同時にB笑顔に)


B「どした?」


A「大変だ!万能製造機が壊れた!」


B「マジで!?」


A「人数分頼んだのに一個しか出てこなかった!」


B「なんだ出てきたの。食っていいよ。ハラ減ってないし」


A「なに呑気なこと言ってんだ!このまま本格的に壊れたら……!」


B「狂うしかねえな」


A「は?」


B「狂って現実を忘れるんだよ」


A「……そうだな。よし。でも上手く狂えるかなあ」


B「余裕だろ。想像しろ。ここにはもう一人いる」


A「もう一人いる」


B「詳細に思い浮かべろ。そいつはどんなヤツだ」


A「えーっと。気の合う親友」


B「ダメ!」


A「なんで?」


B「俺が2人になっちゃうだろ!」


A「意味わかんねえよ!……ああもう。やめやめ。どうかしてた。そんなことしたら脳みその処理が追いつかねえよ」


B「頭の中に一人増えるだけなら平気だって。俺だけじゃ暇だろ?女の子とか妄想して作ろうぜ」


A「……そうだな。よし」


B「どんな子がいい?」


A「えっと。可愛い子」


B「ディティールが甘い」


A「厳しっ」


B「もっと設定つめろ。理想を妄想するんだ」


A「じゃあ……。ボクっ娘で」


B「だいぶ攻めたな」


A「ショートカットのボーイッシュな感じで」


B「よしいいぞ」


A「身長が100mで」


B「狂ってんのか!?」


A「え?」


B「いねーよ!そんなヤツ!」


A「理想を妄想するんじゃないのかよ!」


B「もっと地に足ついた妄想しろよ!現実見ろ!」


A「宇宙のどっかにいるかもしれないだろ!」


B「いるかもしれねえけどここにはいねえよ!」


A「なんで言い切れるんだよ!」


B「宇宙船に入らねえからだよ!」


A「……そうだな」


B「途中まで良かった」


A「おう」


B「身長だけ直そう」


A「おう」


B「じゃあいくぞ!ボクっ娘!ショート!ボーイッシュ!はい!身長は!?」


A「えーっと5m!」


B「だ、か、ら、いねーよ!そんなヤツ!」


A「宇宙のどっかにいるかもしれないだろ!」


B「いるかもしれねえけどここにはいねえよ!」


A「なんで言い切れるんだよ!」


B「宇宙船に入らねえからだよ!」


A「……頑張れば入るよ!」


B「ずっと体育座りみたいな姿勢で縮こまった狭っ苦しい想いさせるぞ!」


A「……確かに」


B「お前はお前のヒロインにそんな可哀想なことを強いるのか!?」


A「い、いや……」


B「はい修正!身長は!?」


A「……2m!」


B「……いいだろう!」


A「よかったあ!」


B「ギリギリ合格!」


A「しゃあ!」


B「ギリギリ現実と折り合い付けた、いい狂い方してる」


A「しゃあ!」


B「じゃあその子の存在を本気で信じ込んで……、呼び出せ!」


A「こい!」


(暗転。次の瞬間光が点いて、Bが消えている)


A「……やっぱ二人は処理しきれないよなー」


(暗転)

うちゅうせんにはひとりだけ


システムオールレッド。システムオールレッド。


うちゅうせんにはひとりだけ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ