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俺の王都生活はどこか間違っている。 3


 アリアの手にある二枚のカード。

 俺は右側にあるカードへと手を伸ばす。


 「あわわわわわ」

 「……」


 アリアの反応を見て、左側のカードを摘まむ。


 「ふふん」

 「……」

 「どうしました? 早く引いてください。神である私に負けるのが怖くて引けないんですか? ぷぷぷ」


 俺たちがやっているのは、ババ抜きである。

 アリアに連れていかれたおもちゃ屋さんになんとトランプが置いてあったのだ。『11』『12』『13』『ジョーカー』の絵柄は俺の知っているモノと多少違うが、五十四枚で構成されていて、数字が記載されたカードは間違いなくトランプだった。


 「このゲームには必勝法がある」

 「なっ!?」

 「今日も俺の勝ちだああああああ!!」


 俺は高らかに叫んで、アリアがあわあわした方のカードを引き抜いた。

 手元に残った一枚のカードと数字が合った事を確認し、


 「はい上がりぃ! それじゃあ風呂当番よろしくぅ!」

 「ズルしましたね! ズルしましたねっ!!」


 妙な言いがかりを吹っ掛けてくるポンコツを無視して、ソファにダイブ。

 ぶつぶつと文句を言いながら俺の部屋を出ていくアリアを見送っていると、


 「くはは。カケルもそろそろ負けてやったらよいのではないか?」

 「そうだぞカケル。毎日アリアが負けていては可哀そうだ」


 ―― こいつらよくそんな事が言えたもんだ。


 俺は視線をテーブルに移し、


 「真っ先に抜けたお前たちだけには言われたくねえ。アリアが可哀想だってんならお前らが負けてやったらいいだろうが」

 「…… さ、妾は風呂の準備が出来るまで読書を再開するとしよう」

 「そ、そうだ。私もまだ刀の手入れの途中だった」


 これはただのババ抜きではない。

 風呂当番というとてつもない面倒な家事を賭けたババ抜きだ。

 四部屋分の風呂にお湯を入れるのは蛇口のような魔道具を捻るだけなので簡単なのだが、問題はその後の掃除だ。

 俺たちは一応冒険者なので明日にはこの宿を出るかもしれない。

 つまり、毎日ちゃんと掃除をしておかないと宿屋のおばちゃんに怒鳴られるのだ。

 その為、風呂当番を決めるババ抜き大会は俺たちの日課になっているというわけである。


 「このトランプとかいうモノはババ抜き以外には使えぬのか?」


 ステラが一枚のトランプを手に持ちながら言った。

 俺はソファで横になったまま、


 「他にもあるぞ。七並べとか神経衰弱とか。あとはそうだな…… 大富豪とかポーカーぐらいか」


 トランプを使ったゲームを思い付く限り言った。


 「ほう、大富豪とやらが気になるな」

 「私は神経衰弱が気になる」

 「…… なら風呂に入った後教えてやるよ」



 俺の部屋に風呂上がりの三人がやってきた。 

 俺は三人に大富豪、神経衰弱のルールを一通り伝え、こいつらは一回で全部覚えた。

 大富豪に関してはローカルルールもすべて覚えた。

 どうやらおバカたちの吸収力は高いらしい。

 遊び方を教えながら、こいつら冒険者やめて学者か何かになった方がいいんじゃないかと思ったのは内緒である。


 「寝る前にやってみるか? 俺は大富豪でも神経衰弱でもどっちでもいいけど」

 「妾は大富豪がよい」

 「私もです! お金持ちになれます!」


 なれねえよ。


 「トウカも大富豪で良いか?」

 「構わないぞ」


 トランプをシャッフルしていると、


 「カケルのいた日本? でしたっけ。その国はどんな所なんですか?」

 「モンスターも魔王もいない世界にある島国。多分だけどジャポンティと同じような感じ」

 「そういえばカケルはソーラン節を完璧に踊れていたな」

 「あっちの世界にもあったからな。太鼓もお茶も、トウカの持ってる刀は俺の世界だと日本刀って呼ばれてるぞ」

 「な、何だその呼び名は! 詳しく!」

 「お、おい! いきなり飛び掛かってくるな!」


 胸倉を掴んできたトウカを退けて、各自にカードを配りながら日本刀の話をしてやった。

 日本刀の話って言っても俺はそんなに詳しくない。

 天下五剣と呼ばれている名刀やその逸話。有名どころの刀の名前ぐらいしか知らない。

 それでもトウカは満足したようで、


 「わ、私の刀も千鳥という名前に――」

 「その刀に名前あるのか?」

 「……」


 え? 何で無視?…… なるほど。


 「お前の刀の名前分かったわ」

 「口にしたら斬るぞ」

 「……」


 ―― おー怖い怖い。自分の刀に卑猥な名前を付けるような奴には思えないな。


 トランプを配り終え、自分の手札を見る。


 ―― うーん。これは負けたな。エースも『2』もジョーカーも無い。俺の手札で最大の数字は『9』。しかもその他は役無しばかり。つまりこいつらに強いカードが集中したってわけだ。ふざけるなと言いたいところだが、自分で配った手前なんも言えない。


 心なしか全員がにやついているように見えた。


 「準備は出来たみたいだな。じゃあダイヤの3を持ってる俺か――」

 「罰ゲームどうします?」

 「は?」

 「くはは! そうじゃな! やはり勝負事には罰ゲームが必要じゃな!」

 「なら大貧民になった者が一週間風呂当番というのはどうだろう?」

 「「さんせーい!!」」

 「あの、俺の意見は?」

 「「「多数決」」」

 「……」


 理不尽っ!!

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