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俺の異世界生活は最初からどこか間違っている。  作者: 六海 真白
第一部 一章 異世界生活編
26/88

俺の通り名はどこか間違っている。


 * 冒険者ギルド ≪ストレリチア≫ *


 「おい、いい加減慣れろよ。もう一週間だぞ」

 「…… じゃってえ」

 「カケルカケル! アイスクリン買ってきていいですか? 私も働いてるんですから当然いいですよね!?」

 「…… あぁいいぞ。ほれ」

 「わーいっ!」


 ステラがパーティーに加わってから一週間が経過していた。


 コモモドラゴン討伐クエストに味を占めた俺は、ギルドに委託されたそのクエストを新たに受注し、達成。たった一週間で約200万サリーもの大金を稼ぐことに成功している。

 ステラにモンスターを一掃してもらい、その死体をアリアに運ばせる。俺はただモンスターの前を走るだけで大金が手に入るという素晴らしいシステムを構築していた。

 金を稼ぐ為に転生した訳ではないのだが、いざ大金を手にしてみると正直笑いが止まらない。

 俺はアイスクリンを買いに走って行ったアリアの小さな背中から、目の前で顔を隠しているステラに視線を移す。


 「別にいいじゃねえか。子供のやることだって俺もアリアも分かってるんだから。ほら、あのポンコツ見てみろよ? 自分が何やらかしてもケロっとしてやがる。ステラが恥ずかしいのは分かるけどさ」

 「……っ」


 ステラは幼女化している時の記憶を持っている。あの日もアリアがステラとお風呂に入っている時に大人に戻り、赤面して出てきた。

 元に戻るのは半日から一日かかるようで、元に戻る時間は日によって違うらしい。

 そして、元に戻ったステラは、幼女時の発言や行動を思い出し、赤面し、硬直するのだ。『じゃ』という言葉が口から出た時恥ずかしがるのは幼女の時を思い出すからだろう。


 「不思議だよなあ。なんで魔法使って小さくなるんだろ?」

 「…… 妾にも分からん」

 「でもステラの魔法いいよなあ。俺も使えるなら使いたいもんだぜ。あんなカッコいい魔法をさ?」

 「…… そうであろう? 妾の天体魔法はかっこいいであろう?」

 「あぁ、心の底からそう思う。だって星だぜ? 天体だぜ? そんなのカッコいいに決まってるじゃねえか」

 「…… くはは! もっと褒めてもよいぞ!」

 「じゃあ今日も頼むぜ。世界最強ともいえる天体魔法は何度見ても飽きねえからな!」

 「くはは! 任せておけ! 最高にして最強である妾の天体魔法でモンスターなんぞ蹴散らしてくれよう!!」


 幼女ステラは面倒な事この上ないが、大人ステラはある意味アリアと似ている部分がある。ちょっと残念なのだ。

 このふざけたデメリット付き魔法の使い手について分かったことがもう一つあった。


 「よしその意気だ。…… そんで、せめて自分の食費ぐらいは稼ごうな」

 「…… くはは」

 「……」

 「し、仕方ないであろう! 腹は減るものだ!」

 「確かに腹は減る! けどな…… 限度ってもんがあるだろ! マルメドリの丸焼きそんなうまいか!? ただ焼いただけだぞ!?」

 

 こいつが他のパーティーから追い出された理由…… 小さいステラはめちゃめちゃ食べる。小さな体の一体どこに吸収されているのか分からんがめちゃめちゃ食べる。飯を取り上げると泣き喚くから質が悪い。

 ここ数日はコモモドラゴン討伐というおいしいクエストがあったから余裕はあるが、それが無くなったら家計は火の車になるだろう。

 500サリーを渡せば満足するアリアなんか金銭面ではかわいいものだ。

 

 「ようカケル! なにやってんだ?」

 「……」

 「デンバーとオーランか。今この大喰らいの胃袋を小分けにしてやろうかと思ってたところだ」

 

 この一週間でギルドにいる他の冒険者と仲良くなっていた。

 キングマルメドリの件は受付のお姉さん達が上手く言ってくれたようで、誰も気にしていない様子だった。どちらかというと、60万サリーを俺に押し付けたことでちょっと気を使ってくれたのかもしれない。異世界の荒くれ達は意外といいやつが多いのかもしれない。


 調子のいい様子で話しかけてきたのは赤髪で火の魔法を使えるというデンバー。無口な方は治癒魔法を使えるという青髪のオーランだ。二人とも俺と同じ駆け出しの冒険者で、気のいいやつらである。オーランは同年代とは思えない肉体をしており、正直治癒魔法なんか使いそうにないが。


 「ステラは結構食べるらしいな!」

 「結構なんてもんじゃあねえ。めちゃめちゃ食べる」

 「いいじゃねーか! 食べないよりは食べる方がさ! それにステラみたいな美少女が仲間なんて羨ましいぜ」

 「お前らのとこで引き取るか? 今なら幼女状態で引き渡す特典付きだ」

 「面倒そうだからいらねえや。ステラがいると金がいくらあっても足りなさそうだし。オーランの筋トレ費用で金欠気味だし。と、そんなことよりカケル。お前最近話題になってきてるぞ?」


 この野郎。ステラがかわいそうだろ。ほら涙目じゃん。…… にしても、

 

 「話題?」

 「あぁ。少女二人を連れたドラゴンハンターがいるってな」

 「…… ドラゴンハンター……。ドラゴンハンター?」

 「そうドラゴンハンター。お前いつもコモモドラゴンの死体を引きずって帰ってきてるだろ? 小型とは言え一応ドラゴン系モンスターだからな。そりゃ話題になるだろうさ」

 「ドュルァゴンハンター」

 「「……」」


 なんて良い響きだ! そうだ! これが異世界だ! 倒したモンスターの実績を元にかっこいい通り名や称号をつけられるのが異世界のお約束だ! 俺は今日からドラゴンハンター・カケルだ! …… 倒してるのはステラだけど。コモモドラゴン引きずってるのは言霊魔法の維持に疲れたアリアだけど。


 「そういや、カケルたちは今日も討伐クエストに行くんだろ? 頑張れよ!」

 「俺はドラゴンハンター・カケル」

 「「……」」


 俺は立ち去る二人を見送り、ステラに視線を移した。


 「今の聞いてたか? 俺はドラゴ――」

 「聞いておったわ。虚しくならんのか?」

 「…… うるせえ」

 「まあよい。それはそうと、アリアはどこへ行ったのだ? 先ほどから姿が見えんようだが」

 「ほんとだ。どこにもいねえ」


 あいつどこ行ったんだ? そろそろクエスト行こうと思ってたのに。


 「カケルカケル! 見てください! ここですよここ!」


 俺は声のする方を見上げた。…… 見上げた?


 「お前…… なんで浮いてんの?」


 ふわふわと宙を飛んでいるアリア。

 その光景を俺とステラは呆然と見上げている。


 「ふふん! どうです? 驚いたでしょう? 驚きましたよね?」

 「「……」」

 「どうしたのです? 私のあまりの神々しさに声も出ませんか?」

 「その…… アリアよ……。妾も言いにくいのだが…… 見えておるぞ」

 「ふむ、白、か」


 俺が声を漏らすと、アリアの顔はだんだんと赤くなり、飛んでいた体はだんだんと落ちて来た。


 「なっなななななななななな」

 「先に言っておくが俺は悪くないぞ」

 「―― っ!!」


 俺はここで動揺なんて絶対にしてはならない。平静を失えば、きっとギルドの荒くれ達が騒ぎ始め不名誉な称号を付けられるに違いない。そういうマイナス面のお約束展開は絶対に回避しなければならない。


 「俺はお前みたいなちんちくりんに興奮なんてしない。なぜなら、俺の好みは色々なところが大人になった女の子だからだ」

 「…… なぜそこで妾の胸を見る」

 「見てない」

 「見たであろう」

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