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俺の異世界生活は最初からどこか間違っている。  作者: 六海 真白
第一部 一章 異世界生活編
24/88

俺の2人目のパーティーメンバーはどこか間違っている。 3


 「くっ!! どうなった!?」


 俺は閉じた(まぶた)を薄く開けた。


 「す、すげえ……」

 「……」


 俺の眼前に広がっていたのは隕石でも落ちたかのようなクレーターと黒煙。コモモドラゴンの群れはプスプスと音を立ててひっくり返っている。つい先刻まで確かに存在した緑溢れる平野(へいや)は原型を留めていなかった。

 俺に抱きかかえられたままのアリアは何故か後ろを見ている。


 「おい、おい! アリアも見てみろ! これが魔法! 魔法ってやつだ!!」

 「……」


 何黙ってるんだこいつ。…… あぁそうか。自分の言霊魔法とあまりに違いすぎて現実を直視できないのか。


 「にしてもすげえ! 俺も使いたい!! ステラ!! もう一回やってくれ!!」


 俺は後ろを振り返った。だが、ステラの姿は無い。


 「あれ? どこいった?」

 「…… カケル」


 腕の中のアリアがちょんちょんとつついてくる。


 「んだよ。俺は今ド派手な魔法見て感動して…… ん?」


 俺は右足に違和感を覚えた。アリアは俺の右足の方を指差して、


 「カケル…… その子は」

 

 俺は違和感のあった方を、つまりは俺の右足にくっついているモノに視線を向けた。

 アラヤダナニコレカワイイ。…… じゃなくて、

 

 「なあアリアさん。この幼女どっかで見た覚えのある服と顔と髪色なんだけど。めっちゃニコニコで俺の足にしがみついてるんだけど」

 「で、ですね。私もついさっきまでその子を大きくした方と話してた気がします」

 「そういえばステラの魔法にはデメリットがあるって言ってたような気がするんだが」

 「私もそんな感じの事聞いた気がしますね」


 おい、まさか。あの素晴らしい魔法のデメリットって。


 「ス、ステラ……?」


 俺の腰ぐらいまでの高さしかない小さいそいつに、俺は恐る恐る声をかけた。

 そいつはニコニコ笑って、


 「そうじゃよ! わらわはすてらじゃ! わらわかみさまなんじゃ!! おにいちゃんたちはなにものなんじゃ? まさかわらわのてきなんか?」

 「「……」」


 どうしよう。ただ幼児化するだけじゃなかった。幼児化前の記憶消えてる系だった。俺の事知らないのに足にくっついてるし。どうしよう。


 「ちょっと待っててなステラちゃん」

 「ん? わかった!」


 俺は小さいステラにそう告げてからアリアを連れて少し離れた場所に移動した。


 「おい何とかしろよ」

 「し、知りませんよ!」

 「小さいステラちゃんお前と似てるとこあるじゃん。何とかできるだろ」

 「ど、どこが私に似てるって言うのです!? 私は立派な大人な女性なのですよ!?」

 「いや、ほら。あの子も自分の事神様って言ってるし似たようなもんだろ」

 「バカにされてることだけは伝わりました。ですが、何とかしろって一体どうしろと言うのですか」

 「とりあえず敵じゃない事を伝えて打ち解けてきてくれ。男の俺よりは同性のアリアの方が仲良くなりやすいだろ?」

 「まあそういうことなら……」

 「任せたぞ」


 アリアはステラの元に歩み寄って行き、少し話した後……



 …………



 小石を投げつけられて逃げ帰ってきた。


 「おかしいですよあの子! 神である私に石を投げてきましたよ!?」

 「……」


 こいつほんと使えねえ。


 「ちょっと俺が行ってくる」

 「気を付けてくださいね! 石投げられますよ! 石!」


 そんなことされるのお前ぐらいだよ。

 俺は暇そうに草いじりをしている小さいステラの元に向かった。


 「やあステラちゃん」


 なるべく笑顔を絶やさないようにしないとな。


 「なんじゃ? きもちわるいかおじゃ。やっぱりおにいちゃんはてきか!」


 ひどい! この子ひどい! 

 もう笑顔やめるわ。泣きそう。


 「俺は敵じゃないよ味方だよ」

 「うそじゃ! あそこのおねえちゃんがじぶんのことをかみさまっていっておった! このせかいにかみさまはわらわひとりなんじゃ!」


 あのポンコツ何言ってくれてんだ。余計面倒になってるだろうが。


 「違うよ? あのお姉ちゃんは頭がおかしいんだよ、ごめんね? だからここにいる神様はステラちゃんだけなんだよ?」

 「そ、そうなんか! やっぱりわらわだけじゃったか!」

 「そうそう! 俺はカケル、あそこにいる頭のおかしいお姉ちゃんがアリアって言うんだ。よろしくね」


 とりあえず小さい子には頷いて肯定してあげるのが正攻法だって誰かから聞いた気がする。


 「かける! ききたいことがあるんじゃが」

 「なんだい?」

 「これはせいちょうしたわらわがやったんか?」


 小さいステラちゃんの指先には天体魔法で(えぐ)られた大地があった。


 ―― この子自分が幼児化したって自覚はあるのか。


 俺は頷いた。


 「そうだよ」

 「そうか! わらわはまほうとかつかえんからな! せいちょうしたわらわはすごいんじゃ! やはりこんなげいとうはかみさまであるわらわしかできぬのじゃな!」

 「うんうん! そうだステラちゃん! 俺たちと一緒に街まで帰ってきてほしいんだけど…… どうかな?」


 とりあえず街の外にこんな幼女を連れ出しているのは危険だ、色々と。さっさと帰ってギルドにステラちゃん預けてこよう。

 ステラの天体魔法を逃すのは惜しいが、さすがに冒険者のパーティーとしてクエストの途中で幼女化されたらまずすぎる。あのすごい魔法も幼女になったら使えないみたいだし。元に戻ったステラに直接パーティー加入をお断りしたらいいだろう。

 それに、自分で自分のことを神だと言い張る仲間なんて一人でも面倒なのにこれ以上扱いきれん。

 

 「くはは! わらわはきぶんがいい! わらわはかみさまじゃからな、げぼくであるかけるのいうことをきいてやろう! くっはっは!」

 「……」


 今なんて!? 下僕(げぼく)って聞こえたんですけど!?


 「ステラちゃん? 下僕なんて言葉どこで覚えたんだい?」

 「ん? おとこといういきものはわらわがげぼくっていうとよろこんでおったんじゃが。かけるはちがうんか?」


 おいどこの変態だこの野郎。


 「う、うん。俺はそんな言葉で喜ぶ変態じゃないからね? カケルお兄ちゃんでいいんだよ」

 「……? かけるはわらわのあにではないはずじゃが?」

 「……」


 めんどくせえええええええええええええええええええ!

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