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第16話 クヴァリッグ王国への襲撃

 クヴァリッグ王国が襲撃されるという情報が入り、のんびりアルパスカ王国からの返答を待っている場合ではなくなった。

 2日足らずとはいえ準備できる時間があるのはありがたい。

 俺はメンバーを招集することにした。


 「え~、あたし襲撃なんて何もできないわよ」

 「はい。何をすればいいか教えてくださいね」

 「ふわあ、怖いです。でもせっかく作ったものを壊されたくないので頑張ります」

 「まあ野蛮な方たちがいらっしゃるのですね。私にできることを教えてくださいませ」

 「師匠、私めはすぐ傍におります」


 「うわあ!」


 順にヴェロニア、ミリアン、アリステラ、マーガレット、最後がメアリで叫んだのが俺だ。

 そういえばジェロビンを【察知】で見つけた後はスキルを発動していなかったな……。

 もういきなり驚かされることはないと思ってたのに早速これだよ。


 「いえ師匠。気配遮断は使っていませんので、別のことに気を取られていたせいではないかと」


 「あ、単純にそういうことか」


 「襲撃のことは存じています。お役に立てるよう頑張ります」


 「ああ、助かる」


 次はレフレオンとマックリンか。

 2人はどこにいってるんだろ。


 「師匠、レフレオンさんとマックリンさんは帝国に行ってます」


 「そうなんだ。帝国で何してるの?」


 「空いた時間ができたら帝国で手合わせする約束をしていたそうです」


 「帝国兵相手に遊びに行ったってところか」


 「はい、そういうことです」


 「ふーん、まあ声をかけてみる」


 俺はレフレオンに【以心伝心】で呼びかけてみた。


 {レフレオン、いま話せるか?}


 {チェスリーか。おう、大丈夫だぜ}


 {2日後にクヴァリッグ王国に襲撃がくるとの情報が入った。これから準備をするつもりだ}


 {ほう、敵の戦力はどれぐらいだ?}


 {150人ほどの元冒険者だ。野盗になってクヴァリッグ近くの森林で禁止薬物を栽培していたらしい}


 {けっ、たった150人の冒険者くずれだと。そんなのどうとでもなるだろ}


 {ああ、そうだが人間相手だし多方面から攻められる可能性もある。みんなに人殺しはさせたくないしな}


 {ふん、甘いと言いたいが賛成だぜ。あいつらに殺しはさせられねえ}


 {こちらに戻ってこられるか?}


 {てめえのことだ。既にどうするか考えてんだろ。俺らの役割は何だ?}


 {2人は臨機応変に立ち回ってもらうつもりだ}


 {おう、任せとけ。なら準備はそっちに任せるぜ。こっちも厄介なことがあって片づけときてえんだ}


 {え、大丈夫なのか?}


 {俺とマックリンがいれば問題ないぜ。詳しいことはまた話してやらあ。2日後にそっちに戻るぜ}


 {わかった}


 帝国は落ち着いたと思っていたが、何か問題があったのだろうか。

 レフレオンとマックリンはクヴァリッグ王国の切り札だ。

 襲撃当日にいてもらえるなら心強い。


 後はグレイスとアメリアだな。


 「ジェロビン、グレイスはどこにいるんだ?」


 「王都の散策でやすね。アメリア嬢ちゃんと一緒でやす」


 「へえ、アメリアも一緒なのか。危ないことはさせてないよな?」


 「へい。単なる散策でやすし、目につくものがあれば嬢ちゃん抜きで改めて調べやす。おっと、噂をすれば帰ってきたでやすね」


 「お、ちょうどいいな。準備を始めることにしよう」


 メンバーが揃ったところでクヴァリッグに転移する。

 現地で準備しながらみんなに戦術を説明するつもりだ。



 「よーし、まずはクヴァリッグ王国と周辺の地図を作成しよう。だいぶ農園が広がってるし全体を把握しておきたい。ミリアンとメアリは魔力供給を頼む」


 「「はい」」


 飛行魔法で上空へ飛び、2人の魔力供給で描画魔法を発動する。

 うーむ、相変わらず素晴らしい魔力だ。

 描画が捗る……捗るのはいいんだけど、やけに作物が育っているような。


 「ミリアン、作物が前より巨大になってないか?」


 「あ、あはは。育ちがよすぎて収穫が間に合わなくて」


 「……まあ、全部食べるのも無理があるししょうがないか」


 「すみません、もう少しまめに収穫しておきます」


 「いや、今回は都合がいい。国民が増えたら収穫して食べればいいし、ミリアンとアリステラがいれば別の場所に移動することもできるしね」


 「ふふふ、そうですね」


 いまさらだが土地の移動が簡単って感覚はおかしいよな。

 転移に慣れて距離の感覚がおかしくなったように、土地が移動できることにも慣れてしまったようだ。


 地図が完成したので地上に戻った。

 地図をみんなに見せながら準備の説明をしよう。


 「この地図が戦術の要になる。見ての通りクヴァリッグの城は農園に囲まれているね」


 「ええ、作物が外へ外へと広がるのでいつの間にか周りが農園になっちゃいました」


 「人が通れるように道を作ったのはアリステラとミリアンだね」


 「はい。作物が巨大で壁みたいになっていますけど……」

 「整理してあげないと絡んじゃうんですよ~。私たちも行き来できなくなってしまいますし」


 「うん。それじゃ今から指示するように道を作り直してほしいんだ」


 「「はい」」


 「えーと、次はアメリアだね」


 「道なんてつくれないかも……」


 「いや、アメリアには別のことをやってもらう。【慧眼無双】スキルが必要なんだ」


 「は、はい。それなら大丈夫かもです」


 「マーガレットはアメリアの手伝いだね。【以心伝心】スキルを使ってもらう」


 「了解ですわ」


 「ジェロビン、メアリ、グレイスは敵を捕らえる役割だ。敵の集合予定地点で準備しよう」


 「集合予定でやすか?敵はどこから攻めてくるかわかりやせんぜ」


 「そうなるように仕向けるつもりだ」


 「へっへっ、そいつは楽しみでやすね。ではいきやしょう」


 「よし、行こう。マーガレットとアメリアも一緒にね」


 「「「「はい」」」」




 こうして準備は順調に進み、襲撃当日を迎えることになった。

 レフレオンとマックリンも予定通り合流した。

 戦術を説明したところ、レフレオンに「たかが150人相手にやりすぎじゃねえのか?」と言われてしまった。

 だが無駄に戦闘することなく荒くれどもを改心させるために必要なことなのだ。



 敵の襲撃が始まった。

 どうやら5つほどの集団に分かれて周りを取り囲むよう一斉に攻めてくるようだ。

 偵察した時点で人の出入りがあまりなく、こちらが少人数だとわかっているはずだ。

 それでも多方面から挟撃してくるのは逃げられないようにするためかな。


 現在、俺はミリアンと共に上空から敵の様子を見ている。


 「あら、柵は入りやすいように開けておいたのに壊してますね」


 「威嚇のつもりかな。既に周りを囲んであるから委縮させるつもりだろう」


 「何も知らなければ驚いていたでしょうね……」


 「そ、そうだね」


 驚くだけならいいんだけど、弾みで魔物用の戦術を使ってしまうほうが怖かったんだよな。

 ほんと先に襲撃のことが知れてよかった。


 「あ、作物は傷つけずに道なりに進んでいるようですね」


 「占領したら自分たちの食料になるからな。それにあんなに巨大だといちいち壊すの大変だし」


 巨大作物の利点がこれだ。

 単に壁だと柵のように壊されるかもしれないが、食料になる作物なら無暗に潰したりしない。

 襲撃中に森林のように生い茂る作物の中をかき分けて進むこともしないだろう。


 そして道なりに進んでくれるなら、別々の場所から攻められても関係ない。

 ミリアンとアリステラに道を作り直してもらい、どこから侵入しても同じ場所に辿り着くようにしてあるのだ。


 「おっと、1集団が集合地点に着いたようだ。アリステラよろしく」


 傍にいるのはミリアンだけだが指示はマーガレットの【以心伝心】を通して共有している。


 俺の指示でアリステラが【能工巧匠】を発動した。

 すると敵のいる地面が傾斜しはじめる。

 突然自分の立っている大地が動き、斜めになるなんて思いもよらないだろう。


 アリステラは孤児院の遊具としてすべり台を作ったことがある。

 最初に作ったものは滑る面が滑らかすぎて危なかったので少し荒く加工してもらったものだ。

 今回はそんな遠慮はいらないので表面はつるっつるだ。

 飛行魔法か道具でも使わなければ滑り落ちるしかないだろう。


 「ん?1人鞭を持ってるのがいたのか。作物に掛けて這い上がろうとしてるな」


 「師匠、私が参ります」


 「よろしくな」


 メアリが視認転移で鞭を掛けた作物の元へ移動する。

 短剣を取り出し鞭を切断すると、あえなく滑り落ちていった。


 「師匠、やりました」


 「ご苦労さん」



 敵が滑り落ちた先はお城の地下に作った牢屋に繋がっている。

 牢屋と言ってもただの大部屋なんだけどね。

 大部屋にはジェロビンとグレイスが待機しており、落ちた順に気絶させて魔力封じのロープで縛りあげてもらう。

 実演してもらったが気絶から拘束する流れは実に鮮やかであっという間だ。

 何となく熟練しすぎな気がしたが深く考えないことにした。


 1集団の対処が終わったところで、アリステラに地面を戻してもらう。

 後は集団が辿り着くたびに同じ手順を繰り返すだけだ。


 「チェスリーさん、何人か様子見で残っている人がいるようですね」


 「ああ、そっちはレフレオンとマックリンに任せる」


 敵の様子は上空から全て見えている。

 場所を伝えてレフレオンとマックリンに指示して拘束してもらえばいい。

 数人の冒険者崩れを捕らえることなど2人にとっては準備運動程度だろう。



 襲撃は終わった。

 こちらの被害は壊された柵がいくつかあるぐらいだ。

 まあ敵も滑り落ちて気絶させられただけなんだけどね。

 レフレオンとマックリンにやられた人たちが1番の被害者かもしれない。


 「おい、俺たちだって1発いれて気絶させただけだぜ」


 「はいはい。それじゃ次の段階を実行するよ~」


 「「「「はい!」」」」


 襲撃してきた敵に少々反省してもらわねばなるまい。

 俺たちは敵を捕らえた大部屋に集合し、次の戦術を実行することにした。


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