表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/23

第15話 クヴァリッグ王国の危機?

 ジェロビンの怪しい動きを調べようとしていたが、ヴェロニアと話して集中が途切れたうちに見失ってしまった。

 屋敷の外から壁を調べてみたが、やはり出入り口らしきものはない。

 あ、待てよ。

 ジェロビンが移動していた位置は地面より下にあったような。

 そうすると地下に通路があるのかもしれない。


 ふーむ、教えてもらってないということは秘密にしてたんだろうな。

 でも知ってたからには教えてもらうことにしよう。


 これでもう1つジェロビンを驚かせることができる。

 ふははは、1度に2回もジェロビンの驚く顔が見られるなんて楽しみすぎるぞ。


 「ふふふ、チェスリーさんが何やら楽しそうなことを考えてます」


 「あんたねえ……だいたいわかったわ。ジェロビンを驚かせようとか思ってるんでしょ」


 何も言葉にしていないのに、ミリアンとヴェロニアに悟られてしまった。

 相変わらずヴェロニアの読心は正確すぎて怖い。

 しかし今はいい気分なので気にならない。


 「ふっ、心を読まれたようだが問題ない。ジェロビンにお返しできれば満足だ」


 「ふ~ん、まあせいぜい頑張りなさい。何となくオチが見えたわ」


 「何とでもいうがいい。ジェロビンといえど調べてもいないことを見通すことはできないだろ」


 「はいはい。それじゃスキルの改良は上手くいったのね?」


 「ああ。……ミリアンの協力がないと十分に使えないけどな」


 「なら問題なし。ミリアンよろしくね」


 「はい、お任せください」


 とりあえず懸案だった敵が気配遮断を使った場合も対処できるようになった。

 今は改良した【察知】を反復練習して、効率よく使えるようにしておこう。




 翌日。

 【察知】スキルの練習をしていると、誰か近づいてくるのを探知した。

 さっそくお楽しみのときがきたようだ。


 「ジェロビン、そこにいるのはわかってるぞ」


 「おっと、わかるでやすか。こいつは驚きでやす」


 「はっはっはっ。これでもういきなり驚かされることはない」


 「へい、大したもんでやす。まあ昨日できたでやしょうとは思ってやした」


 「……え?昨日気づいてたの?」


 「あっしも【察知】を使ってやした。旦那がこちらを追いかけるように動いてやしたからね」


 むう、昨日の行動から感づかれることになるとは。

 「驚いた」とは言ったが、冷静に返されただけだものなあ。

 俺は「うわあ!」とか驚いてるのに……。


 「まあまあ。感心してるのは確かでやすよ。よくぞ気配遮断を見破る方法を見つけてくれやした」


 「ついでに心を読まないでくれ。はあ、これはもう1つのネタも期待できないな」


 「もう1つって何でやす?」


 「屋敷の隠し通路のことだ」


 「な、な、何のことでやしょ」


 あれ、こっちは思ったより動揺してるな。


 「昨日ジェロビンを探知したときに地面より下の位置を移動してるのがわかったんだ。恐らく地下に通路のようなものがあるんだろ?」


 「……こいつはマジで驚きやした。気配遮断を見破れるだけでなく密閉した場所を探知できるでやすか」


 「あ、ああ」


 「さすが旦那でやす。いつもあっしの想像の上をいきなさる」


 「え、いやあ、そんな大したことは」


 「へっへっ、あらためてお願いいたしやす。あっしにご教授いただきたいでやす」


 えええ、ジェロビンが深々とおじぎでお願いしてきた。

 態度があらたまりすぎてかえって戸惑うんですけど。


 「じぇ、ジェロビン。そんな頼み方しなくて教えるよ」


 「いえ、こいつはけじめでやす。散々驚かした謝罪もいたしやす」


 「そ、そう?……はい、謝罪を受け入れます」


 「ありがとうございやす」


 ジェロビンを驚かせたはずなのに、こんな返され方をされるなんて想定外だ。

 結局俺が驚いてるし。


 「さっそく教育といきたいでやすが、その前に伝えることがありやす」


 「え、なに?」


 「2日後にクヴァリッグ王国が襲われやす」


 「はあ!?何でクヴァリッグ王国が?まだあの場所は仲間しか知らないはずだし……」


 「偶然でやすが近くの森林に隠れてやばい草を栽培してる場所があったでやす。巨大な城がそこから見えたようでやすね」


 「……おい、そのやばい草ってのは」


 「お察しのとおり、例の禁止薬物の材料でやす。あちらさんも人里離れた場所でやってたようでやす」


 「しかしどうやって王都に禁止薬物をもっていけるんだ……そうか転移使いがいるのか」


 「その通りでやす。転移がありゃあ距離なんて何とでもなりやすからね」


 「とんでもないことに転移を使ってるな。よし、その拠点を潰そう。場所を教えてくれ」


 「いえ、まず襲撃の対処をお願いしやす」


 「何でだ?拠点を潰してしまえば終わりじゃないのか」


 「敵の狙いはクヴァリッグ王国そのものでやす。禁止薬物で儲けにくくなりやしたから、無防備なクヴァリッグ王国を襲って城と農園を手に入れるつもりでやす」


 「ほう……そいつは聞き捨てならないな」


 つまり敵は無防備なら奪って自分のものにしていいという考えの持ち主だ。

 俺が大嫌いな考え方だ。

 禁止薬物も他人の事情など関係なく精神を狂わせるものだ。

 こいつは相応の罰を受けてもらう必要があるな。


 「普段は王都を行き来して戦力が分散してやす。クヴァリッグ王国の襲撃で戦力が集結しやすから、そこを叩いたほうが手間が省けるでやす」


 「なるほど。襲ってくる人数はどれぐらいかわかるか?」


 「150人程でやす」


 禁止薬物、150人の襲撃者、転移使いか。

 相当な力をもっている悪党だな。

 こんな奴らを放っておくと不幸な人が増えるだけだ。

 根こそぎ叩き潰すべきだろう。

 ならばジェロビンの言う通り、戦力が集中する襲撃に対処したほうがよさそうだ。


 「わかる範囲で敵の情報を教えてくれ。戦術を考えるのに役立つ」


 「了解でやす」


 主な戦力は元冒険者で質の悪い荒くれどもらしい。

 武術や魔法スキルの詳細は不明だが野盗に成り下がるぐらいだ。

 上級スキルが使えるような実力者がいるとは考えにくいし、いたとしても数は少ないだろう。

 やはり最大の脅威は数で押してくることだな。


 いくら数が多かろうと、こちらには桁外れのメンバーが揃っている。

 国会で話し合ったときに戦力の話題がでた。

 レフレオンはアルパスカ王国相手でも問題ないと少々大げさだったが、野盗程度に後れをとることはない。


 それにしてもジェロビンが事前に情報を掴んでくれてよかった。

 いきなり襲われていたら、どんな悲惨な目にあっていたかわからない。

 まあ……悲惨な目にあうのは敵のほうなんだけど。



 たとえ荒くれものとはいえ、仲間に人殺しをさせたくない。

 レフレオンとマックリンなら上手くやれそうだが、2人だけでは多方面から攻められると対処が間に合わず、ミリアンたちが戦うことになったかもしれない。

 魔物ならまだしも人間相手にあの凄まじい威力の魔法を使ってしまうと……おっと、現実逃避してしまいそうになった。

 彼女らに教えたのは魔物に使う手加減なしの戦術だけだからなあ。


 まだ誰も知らないはずのクヴァリッグ王国が人間に襲われるなんて想定していなかったのが甘かったか。

 だが敵の戦力がわかっているなら、適切な戦術を教えることができる。



 「転移使いは襲撃に参加しないんだな?」


 「へい。武術はからっきしのようでやすからね」


 「わかった。しかし助かったよ。事前に襲撃の情報を教えてくれて」


 「へっへっ、助かったのは敵のほうでやしょ」


 「何だ、ジェロビンも同じことを考えていたのか」


 「へい。あっしも対魔物用に嬢ちゃんたちが使う戦術を知ってやすから」


 「あはは、あまりみんなに戦闘させたくないから、戦術を多く教えるのはどうかと思ってね」


 「気持ちはわかりやすが、今回は嬢ちゃんたちの力を借りやしょう」


 「そうだな。そのほうが被害なく終わらせられそうだし」


 「へっへっ、お任せしやす」


 「ああ。……ところで屋敷の隠し通路のことなんだけど」


 「……ばれちまったものはしょうがありやせん。実はあっしとグレイスはこの屋敷の隠し部屋に住んでやした」


 「そうだったのか。何でまた隠し部屋なんかに住んでたんだ?」


 「理由は……もう教えてもいい頃合いでやすね。旦那が屋敷の警備を固めようとしたことがありやすよね?」


 「そうすればジェロビンとグレイスが一緒に住めると思ってね」


 「実は逆なんでさ。警備を固めるほどあっしらはやりにくくなりやす」


 「え!?そうなの?」


 「へい。警備ってやつは厳重にするほど敵は手強くなりやす。つまり――」



 ジェロビンは警備を厳重にしすぎることで想定されることを教えてくれた。

 敵もバカではないので、厳重な警備ほどより慎重により手強い相手が事にあたるようになる。

 特に俺が王城で目立った後だ。

 何かあるのではないかと勘繰られる可能性が高くなる。

 俺たちがジェロビンやグレイスの警備を知らないほうがやりやすかったとのことだ。


 「なるほどねえ。でも教えてもいい頃合いってのは?」


 「恐らくクヴァリッグ王国は認められると思いやす。そうなると住む場所が変わりやすからね」


 「あ、クヴァリッグ王国の王城に住むことになるのか」


 「そうでやす。王城なら警備を厳重にするのが当たり前でやすし、敵がくるとなりゃあ当然手練れになるでやしょう」


 「そうなるのか。王城の警備をどうするかはまた相談させてくれ」


 「へい。屋敷にいる間はあっしたちのことは気にしないで普段通りでお願いしやす」


 「あ、ああ。わかった」


 うーん、しかし屋敷内にいるなら一緒に食事したり会話したりしたいよな。

 グレイスがいるなら【暗中飛躍】スキルの改良とかやりたいし。


 「……やっぱり無理そうでやすね。まああと少しでやすしいいでやしょ」


 「いいの?それじゃグレイスとスキルの練習でもしようかな」


 「旦那……襲撃のことをお忘れなく」


 「あ、いや。忘れたわけじゃないから。グレイスにも一仕事してもらおうかなと」


 「へっへっ、あっしも手伝いやすんで戦術に組み入れてくだせえ」


 「了解だ」



 力の差があるので対処自体はどうとでもなるが、襲撃者にきっちり反省し考えを改めてもらいたい。

 そのための戦術は……神の力でも借りるとしようかな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読み終わりに↓ををクリック!いただけると嬉しいです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ