身分差を理解できるほど大人になってしまっていた俺達は、
主人公 魔法の才能を発揮して特待生として学園に入った平民
ヒロイン 貧乏伯爵家の長女
ヒーロー 富豪の辺境伯嫡男
脇で乙女ゲー展開があれば面白い。
かつて、「お元気で」と願った彼女が居た。
彼女は高貴なる貴族。俺はどこにでも居るような平民。
なんの運命の悪戯か、俺と彼女は常に側に居た。
言葉にしないだけで、俺と彼女はお互いに唯一無二の人だった。
けれど、彼女は貴族、俺は平民。
故に結ばれないのは必然で、それが判るぐらいには大人になってしまっていた俺達は、学園を卒業するその日に「お元気で」という一言で別れた。
それから俺は、軍に入った。
ただがむしゃらに、この力を活かすために。
風の噂で、彼女が結婚したと聞いた。
辺境伯の嫡男と、伯爵家長女の婚姻に、街は湧いていた。
奇しくもその時の任地がかの辺境伯領だったのも、よく覚えている。
戦争でピリピリした空気の中で久しぶりの祝い事に、どこもかしこも笑顔で溢れていた。
そう、今でも覚えている。
ここは戦場。命の墓場。俺達は次々と命を散らしていく。
ああ、願わくば。
俺達が必死に護っているこの国で、どうか幸せに暮らして欲しい。
主人公(俺)とヒロイン(彼女)はいつも一緒にいた。(お互いの傍が心地良い)
両片想い(身分さえ釣り合っていたらきっと仲睦まじい恋人だった)
ヒーローとヒロインは夜会(という名のお見合い)で出会う。ヒーローがヒロインを気に入った。
ヒーローはヒロインの身辺調査で主人公の存在を知ってる。(歯牙にもかけていない)
主人公は卒業したら軍か王宮勤めになるのが決まっていた。(神がかり的な才能があった)
お互い身分の差とかしがらみとかよく理解した大人になってしまっていたので、一線を超えることなく「さよなら」って別れた。
主人公は王宮勤めになるつもりだったが(ヒロインに会える可能性があるから)、けじめとして軍に入ることに。平民かつ優秀な人材のため、最前線や難しい作戦に投入されるとめきめきと頭角を現し、民衆のヒーロー扱いされるまでになる。
辺境の地で、奇襲攻撃にあい総攻撃を受ける総指揮官(辺境伯)を護りつつ奇襲部隊を殲滅して重症を負う。辺境伯が主人公を気に入り、度々野戦病院に訪れて話をするようになる。傷が癒えるにつれ悪くなってくる戦況に、ある日主人公が辺境伯に直談判する。その結果主人公(&志願兵)は死兵として突撃し、敵に甚大な被害を与え、結果戦況を大きくひっくり返して圧勝した。
志願兵は死兵にも関わらず、主人公の部下達や、主人公に憧れていた兵士たちを中心に大勢が集まった。その数と士気の高さで貴族達を驚かせた。主人公、慕われてる。
戦勝後、主人公達は吟遊詩人に英雄譚として謳われる存在になる。平民が活躍する物語であるがゆえに、民衆にとてつもない人気を誇った。
その曲で謳われる「戦う理由」に、「己の命にかけても護りたい人がいる」という一節が若い女性を中心に受け、兵士たちを中心に同意を得た。
なお、この曲を積極的に広めたのは辺境伯である。ちょくちょく内容を本人から聞いたものにしたため、主人公を知る多くの人が「その通り」と頷く曲になった。
余談として、主人公の名前にあやかった子供が増えると、何故かそのほとんどが密かに活躍したり、有名になったり、何かしらの才能を発揮するようになったりした。
(主人公の人気は留まるところを知らない…)
結果、主人公の国はとても豊かになったという。
そして、200年の年月が流れ、御伽噺や寝物語として主人公の英雄譚が語られるようになると。
「──見付けた」
かつての記憶を失い、婚約者に理不尽に詰られ婚約破棄させられた伯爵令嬢を見て、とある国の公爵家嫡男が場違いなほど晴れやかに笑った。
それは、のちに国を駆け巡るラブストーリーとして伝えられる、溺愛物語。