1
結論から言ってしまうと、これは私に起こった物語。
長くもなくて短くもないそんな物語。
三十一回もあれば足りるとわかっている。
私の名前は、雨空傘音。
雨空という苗字は珍しい部類だと思う。
でも、雨空という苗字に、雨からすぐに連想できる傘という文字とありがちな音という字を組み合わせた名前は、少し安直だと思う。
別に、名前をつけてくれた両親にどうこう言いたいわけではない。
両親とは今月から離れて暮らしている。
私は、そこそこ偏差値の高い大学に運よく合格した。
地方から大学のある東京まで出てきて、今月から一人暮らしなのだ。
住んでいるマンションの家賃は、月八万円。
仕送りとバイト代で、何とか家計を回している。
もちろん、大学生である以上、学業も疎かにはできない。
そうは言っても、成績は中の上というところ。
上には上があることを痛感させられた。
そんな暮らしを送っていた私は、その日もいつも通り目覚まし時計のベルで目がさめた。
寝ぼけまなこのまま、ゆっくりと起き上がった。
「ねむ……」
寝起きの自分の声は、自分ではないみたいに聞こえる。
冷水で顔を洗って、大学に行くための身支度をはじめた。