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第5話 ファーストコンタクト

 人気ひとけのない村の外れに、二人の声が響いている。

 一人はニート、もう一人は魔王の娘である。


 「お兄さんが、 “ニート” さん、ですよね?」


 「そ、そうだよ。ボクはニートだよ。……君は一体誰なんだい?どうしてボクのことを知っているの?」


 人付き合いが得意でないニートの挙動不審な態度を全く気にする様子もなく、魔王の娘は目を輝かせて「わーい!大正解~!」とはしゃいでいる。


 「私はね、 “魔王の娘” です!」


 「ま、魔王の娘だって……!?」


 ニートの困惑している様子にようやく気がついた魔王の娘は「ふふふっ、良い反応しますね!」と笑い、彼にこれまでの経緯を話した。


 「それでねっ、ニートさんに協力してほしいんです!」


 「ぼ、ボクに魔王の娘のパートナーなんて、できるわけないだろう……」


 ニートの返事は予想通りであったのか、魔王の娘は表情を変えずに言った。


 「でもねでもね、ニートさん以外には、絶~対できないことなんですよ!ニートさんだって、村がこのままじゃ困るでしょ?このままじゃニートさん、生きていけませんよ!だって “ニート” なんですから!」


 「うぅ……あ、頭が……」


 痛いところを突かれたニートは、頭を抱えて蹲ってしまった。


 「もう~、しっかりしてください!」


 魔王の娘はしゃがみ込み、ニートの顔を覗き込んで続けた。


 「それで、ニートさん。今、どこに向かっているんですか?」


 「あ、ああ……今は宿屋に向かっているよ。君は旅人だから、どちらにせよ泊まる場所が必要だろう?と言っても、村がこの状況だから着いても “宿屋やどや” がいるのかどうか……」


 ニートはふと何かに気づき、魔王の娘を見て言った。


 「宿屋は村の外れも外れ、森に面した場所にあるんだ。村との接点もあまりない所だから、もしかしたらあの辺りには頼れる人がいるかもしれない。とりあえず、諸々のことは宿屋に着いてから考えよう」




 二人は暫く歩くと、一軒の大きな宿泊施設に辿り着いた。

 宿屋である。


 「わあ~!大きな建物だ!」


 魔王の娘は無邪気な笑顔でその入口へ駆け寄って行った。


 「つ、疲れた……」


 実は、魔王の娘はここへ辿り着くまで、珍しい花を見つけると「可愛い~!」と飛びつき、知らない生き物と遭遇すると「あれはなになに~!?」と興味を示す、ということを何度も繰り返してきた。

 彼女の旺盛な好奇心に引きずり回されたニートは、元々あまりない体力のほとんどを消耗し尽くしていたのだった。


 「お~いっ、ニートくん!ここ開いてるよ~!」


 他人と距離を縮めるのが早い魔王の娘は、いつの間にかニートに対して敬語を使うのをやめていた。


 「ま、待ってよ。ボクも入るから……」


 魔王の娘は「はやく早く~」と急かしながらもニートが来るのを待ち、二人は宿屋に入って行った。

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