春の祭り
「フンフフン~~」
鼻歌を歌い匂いのすてきな紅茶を淹れてくれているのは私の侍女、ニナ。彼女は私が公爵令嬢だった時からの侍女だ。
「ニナ。ご機嫌ね。」
そう声をかけると....
「そりゃあそうですよ!サファイア様!なんてったってもうすぐ春の祭りですから!!」
と、元気に弾んだ声で答えられた。
春の祭り.....
それは、この国特有の四季の祭りの一つだ。この国には四季がある。そしてその四季に合わせ四回の祭りが行われる。そしてもうすぐ来るのは春の祭りだ。それぞれ、執り行われる月が決まっておりそれに近づくにつれ執務が忙しくなる。ここ最近、死ぬほど忙しかったのはこれのせいだ。
王族は衣装の色などは白と決まってはいるものの型が決まっている訳ではない。そのためそちらにも時間がとられ本当に死にそうだった。
今では執務も落ち着き、こうしてゆっくりと紅茶を楽しむことができる。
そう、気楽に楽しくできる___
はずだった
あの事さえなければ!!
この間のごく内輪で開いたお茶会。それは、私にとんでもなく大きい爆弾を落としてくれた....。
あぁ。思い出しちゃった。...最悪…
私の夫、王太子のエディーが私の忙しい隙に浮気。
あぁ。さ・い・あ・く。
「サ、サファイア様?どうされたんですか?王太子殿下にご結婚を早められた時ぐらいお顔が死んでいます!!」
「あ、あらそう?ちょっとあいつの首絞めたいなって思っただけよ!」
「サ、サファイア様...」
ハァ。と大きなため息をつくニナ。
「そんなに大きなため息をつくとお肌に悪いわよ?」
「誰のせいですか...誰の...」
と、言われた。ニナは整った美人な女性だ。これで子供が二人もいるのだからなんとも言えない...。
「それよりも、春の祭りの準備は順調ですか?」
「えぇ。完璧よ。でもやっぱり私は街でパレードを見たいわ。」
「何いってるんです!?サファイア様は夜会の準備です!!」
そう。最悪なことにこの四季の祭りには必ず夜会が付いてくるのだ。
民たちは街で行われるパレードや屋台、露店、王族による祭りの挨拶などで祭りを堪能するが、貴族は違う。
王都に近い場所に領地を持つものは朝早くから領地での祭りの準備をし、領民たちに挨拶をする。他の貴族たちも離れてはいても領地での祭りの準備をおこたらないようにし、それが終わり次第、王宮での夜会の支度を始める。
だが...王族は死ぬほど疲れるこの祭り。秒単位で式典の準備が進み、目が回る。私は二年前王族になったため、この行事はもう九回目だ。何せ一年に四回あるのだから...。
そして、王族の色と言うべき白の衣装を汚さないかものすごく注意しなければならない。
白....それはこの国で王族の色とされる色。いくら上位の貴族であろうとこの色の衣装を着てはならない。もちろん、白を使ってはならない訳ではない。ベースの色が白でなければ良いのだ。ただ、それでも貴族が集まる式典や夜会では白を多く使う衣装はご法度だ。
「大変ですが頑張りましょう?」
突然、声をかけられびっくりしたがニナの言う通りだ。頑張ろう。
「えぇ。頑張りましょう!ニナも大変だろうけどよろしく頼みますね!!」
「 はい!! 」
とてもうれしそうに笑うニナを見て、私も最後まで頑張ろう!と思えた..。でも、浮気男のエスコートは嫌だなぁ~。