お茶会 王妃様目線
サフィー目線から王妃様目線に変わって続きとなっています。
私はこの国アクアリスト王国の王妃、ステリアーノ・レイ・アクアリスト。
今、私の目の前には驚愕の事実を告げられ放心状態になっている可愛い娘、サフィーがいる。
「驚くのも無理ないわ。だってサフィーはここ数ヵ月ずっと執務で忙しくしていたもの」
そう、彼女は忙しかったのだ。それはもう見ているこちらが目を回しそうなくらい……
諸悪の根元は我が息子、エレディオール・ライト・アクアリストだ。
まぁ、原因はバカ息子だけではないのだけれど………。
淑女の鑑と名高いサフィーをここまで脱け殻にさせた話とは………
要約すれば、夫の浮気!!!
まぁ、母親の立場から言わせてもらうならば。
それは多分……否、確実にない。
この世で我が息子ほどサフィーを愛しているものはいない。その溺愛ぶりは親の私でも引くほどだ……。
少し、話がそれたが、噂はきっとデタラメであろう。
「大丈夫よ。サフィー。あなた以上に魅力的な女性はいないわよ!」
と、私は精一杯彼女を励ます。
しかし……
「王妃様。別にわたくしは気にしておりませんわ。エディー様はまだお若いのですわ。愛人など許容範囲ですもの」
と、美しい微笑みでなんとも王族らしく言う。
信用していた夫に浮気の疑惑がたったら私はすぐにでもその首、絞めようと考えるけどなぁ~。
あら、失礼。国王が浮気なんてあり得ませんわ!オホホホホ!
……まぁ、それは置いといて、サフィーのことが心配ですわ。
次期王妃たる彼女には私自ら、王妃教育を施しています。
いえ、正確には施していた……といった方がいいですわね。
サフィーが物心つく以前より、エディーとの婚約は決まっていて、元々筆頭公爵令嬢であったサフィーには、私の王妃教育など二日ほどで教えることなんてなくなってしまいました。
しかし、なんでもすんなりと吸収してしまう彼女が唯一苦労したことが一つだけありました。
それが、表情の固定です。
王族は決して他のものから感情を読まれてはいけない……そのためには、いかなる場合でも王族としての表情という仮面をはずしてはいけないと……。
当時まだ年端もいかない幼い少女だったサフィーは、それはそれは豊かな感情を持っていました。
表情を殺すために、幼い子供の感情を押さえつけたことは、今でも辛くなってしまいます。
幼い頃身につけたその技は、サフィーの私的な感情をほとんど殺してしまいました。
「サフィー……」
何かに気づいたらしい、サフィーの母でユリニスト公爵夫人のミリアがサフィーに声をかけた……。
「お母様、私は平気ですわ。残念ながら王太子殿下のご寵愛はいただくことが出来ませんでしたが、お母様たちには決してご迷惑をおかけしないように致しますから」
あ、やばい...やばいよ?これ。
この際、私の口調がおかしいのは放っておいて...。
サフィーがエディーのことを『王太子殿下』と呼んだわ……サフィーは普段、王太子を『エディー様』と愛称で呼ぶ。
それをわざわざ『王太子殿下』と、呼んだと言うことは相当怒っている……?
それに気づいた他の三人も顔をひきつらせている。
三人は私と同様にサフィーを幼い頃から知っているし、すごく身近でサフィーを見守っていた。
だからこそサフィーの言葉の意味もよくわかった。
サフィーは表では心配した母に自分は大丈夫だということを言ってはいるが裏をかえせば
『お母様、私は平気です。あのバカ王太子は愛人なんか作りやがったけど実家のお母様たちに迷惑がかからないようしばくから気にしないでね!』
という感じになる。まぁ多少ズレはあるだろうがこんな感じで間違ってはいないはずだ。
我が息子ながら本当に情けない……。
無実だったとしても、これは制裁ものの案件ですわね。