優秀 エディー目線
「おはよう。サフィー。」
「今さらですか。遅いです。」
ここは寝室。王太子である俺とその妃であるサフィーの部屋だ。
俺は、先程キスをせがんだ結果、俺にキスし真っ赤なサフィーに朝の挨拶をする。
朝の寝起きのサフィーは王族としての言葉使いが完全に抜け落ちている。何でも完璧にこなすサフィーの唯一の弱点だ。
支度をし、サフィーと共に朝食をとった俺はレイドがいるであろう執務室へ向かった。
「よう、おはよう。エディー。」
室内へ入るとやはりレイドの姿があった。
「おはよう。レイド。」
「あぁ、そうだ!今日の執務は地獄だな!色んな所から書類が届いてるぞ?」
「げっ……てか、お前、俺の側近だろ。手伝えよ。」
「無理。今日は父上の所に行って宰相指導受けることになってる。てか、お前しってんだろ?俺を過労死させる気か!」
「いやいや。まさか、大切な側近の義兄を殺すなど多少のことがなければしないよ?」
俺はできる限りの笑顔を見せた。
「ひぃ!!やめろ空気が凍る。しかも多少のことで俺を始末するのかよ!!」
あからさまに顔を青くしたレイドに俺はクスクスと笑った。
「安心しろ、レイド。冗談だ。」
「冗談だったのかよ!?」
「はははは」
「ったく。笑えない冗談やめろよな!お前が言うと本当に聞こえんだよ!?」
そんな風に言ってくるレイドは俺が王族であっても対等に接してくる面白い側近である。
レイドはサフィーの兄でもあるが、それ以上に俺の数少ない友人でもある。
最初の頃こそ、妹のサフィーを盗ったクソ野郎認定されていたが、今ではいい感じに二人で執務をこなしている。
「あぁ。そう言えばサフィーから書類が来てたぞ?」
え?もうか?
「結構な量回してなかったか?」
「いや、お前サフィーの執務のやり方知らないのか?」
……そう言えば、知らないな。
結婚してずいぶんたつ。
当時からよくサフィーには仕事を回していたが、自分の仕事も忙しくあまり気にかけていなかった。
「あいつの仕事のやり方は異常だ。」
何故か異様に顔を青くするレイド。
「ほう、レイドがそんなに言うほどなのか?」
レイドはこう見えても特務師団の団長と次期宰相として俺の側近を兼ねるだけ優秀だ。
するとレイドは恐ろしく青い顔で話し初めた。
「だってあいつの仕事のペース恐ろしく早いんだ。……サフィーがまだ公爵家にいるとき、父上がサフィーに仕事を回してたんだ。何でサフィーにさせてるんだ?と思っていたんだが、ある日理由が分かった。サフィーから返ってくる仕事は事実確認つきで丁寧なわりに時間が短すぎる。それを不思議に思いサフィーの執務室を覗いたんだが………」
「執務室の中には大きな鏡のようなものが何枚も浮いていてそれには町の様子や貴族の屋敷果ては王宮までもが一枚一枚に写っていた。サフィーが短時間で事実確認までできる理由は執務室の中で魔法を使い各々の様子をしつかりと見ていたからだったんだ……。」
「レイド……。」
確かに、魔法を使いそんなことをしようと思うのはサフィーくらいだ。
「だが、お前……それくらいで、青ざめるな!もっと特別なことしてると思うじゃないか!!!」
「いや、怖いだろ!だってそれを何時間も何日も繰り返すんだぞ!?俺は無理だ。あれにはさすがにサフィーが家をついだ方がいいんじゃない!?って思ったくらいだ……。」
なんとももう……本当に呆れる。
「ってか、レイドお前宰相のところ行くんじゃないのか?」
「え……?」
みるみるうちに青を通り越して白くなるレイド。
「早くいってこい!」
コクコクと頷いたレイドは一瞬にして俺の前から転移していった。
まぁ。こってり絞られるだろうな。
「俺もそろそろやんないとヤバいなこれ……。」
俺の目線の先には大量の書類の山。
「あぁー。どうするかなこれ」
と思ったとこにいい考えが閃いた。
「誰かいないか?」
扉の外に向け俺は声をかけた。
「何でございましょうか。」
すぐに来た侍従に俺は書類の山を指差して言った。
「これを、王太子妃の執務室へ運んでくれ。」
「しょ、承知いたしました……。」
何やら戸惑った顔で書類を運ぶ侍従を見ながらこれで仕事が減ったな、と満足げな王太子。
後程、妃からこってりと怒られたのは言うまでもない……。




