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怪獣はヒーローが嫌い!  作者: SAKAHAKU
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第七話(ファイターエースの能力)

ギガノから聞いた話では、昨日の眼帯男は自分のことをファイタージャッチと名乗ったようで、ソイツはおそらくブラザーズの一人だった筈だ。

「そうか。眼帯をした地球人の体を借りているヒーローと言えば「ジャッチ」に間違いないだろうねぇ」

社長も俺の説明を受けて納得している様子。「やっぱりジャッチか。でも可笑しいな。確か俺の知っている奴は眼帯などしていなかった」

「少し前に片目を失ったんだ。絶賛指名手配中の星人「目潰し星人」との戦闘中にね」

「あんな弱そうな星人に苦戦するとか、ジャッチも大したことないんだな」

ジャッチの実力の無さを口にした俺に社長は

「ちっちっち」と人差し指を振って、

「光大君、それは違うよ。ジャッチに実力が無い訳じゃない。目潰し星人、彼が手強すぎるんだよ」

「手強い?あんな骸骨みたいな面の奴がか?」

「彼はね、痩せ細ったガリガリの体をしていてかなり動きが素早いんだ。ブラザーズ時代は戦闘を挑んだヒーロー達が敗北したという報告をよく耳にしたなぁ」

しかし、この社長が元ブラザーズとはどうも信じられん。

あの連中は気性の荒い奴ばかりで、こんな穏やかな性格をしたメンバーがいた何て聞いたことがないぞ。

「あんたがブラザーズ辞めた理由って何だったんだ?」

「僕が辞めた理由かい?そうだなぁ……彼等の、悪い怪獣も優しい怪獣も関係なく殺してしまうやり方に嫌気が差したからかな」

「何だよ。はっきりしないな」

「僕のカード怪獣がスカイちゃんだけじゃないのは前に話したよね」

「ああ。確か、三枚のカードを見せびらかしてたな」

「僕の仲間の怪獣二体はブラザーズの一人に殺された。だからこの二枚のカードの中にはもう誰も居やしないのさ」

星宮の社長は二枚のカードを懐から取り出して俺に見せる。そのカードは真っ白でただの紙切れに姿が変わり果てていた。

「誰が殺った?」

「え?」

「誰がお前の仲間を殺ったのかって聞いてんだよ!」

「それを聞いて、君はどうするつもりなのかな?」

「ぶっ飛ばしに行くに決まってんだろ。命を粗末にするようなヒーロー何かこの世に存在しちゃならねぇ。そうだろ」

「気持ちは嬉しいけど、止めておいた方が良い。いくら君でも彼には「絶対に」勝てないよ」

「誰何だ?シャインか?エースか?タロットか?」

「ファイターゾフ。現ブラザーズの隊長を勤めるヒーローだ」

「……ゾフ?聞いたことねぇな」

「そりゃそうだろう。彼は光大君がブラザーズ引退後に入隊したヒーローだからね」

社長はブラザーズの隊長であるファイターゾフについて隠すことなく、自分の知っている情報を教えてくれた。ソイツが圧倒的な強さを証明して新たな隊長に任命されたこと。なぜ、俺がゾフに勝てないと言い切ったのか、その理由についても。

「スカイちゃんはよく喋る明るい子だったんだよ。それだけショックだったんだろうね。友達の二人を殺されて」

「あんたはこのままで良いと思ってんのか?」

「何がだい?」

「そんな優しさも思いやりもねぇ野郎を地球を守るヒーローの天辺にいつまでも置いておく訳にはいかない。そうは思わねぇか」

「そうは言っても、ブラザーズを引退した今の僕にはどうすることも出来ない」

「俺がゾフを倒す。だからあんたがブラザーズの隊長になれ」

「簡単に言うけど、どうやって倒すつもりだい?彼には実体が無いんだよ?こっちの攻撃が全く通らないんだ。まるで幽霊のようにね」

社長は仲間の怪獣の敵を討とうとゾフに挑んだらしいが、実体を持たない相手になす術もなく返り討ちにされブラザーズから追放された。自分から辞めたんじゃなかったんだな。

「何とかなるだろ。この俺に倒せない奴何か存在しねぇよ」

「絶対とは言えないが、そうかもしれないね。君は自分以外のブラザーズを全滅させた凶悪怪獣を倒したファイター星の英雄だ。あり得ない話じゃない」

社長が俺に右手を差し出して握手を求める。「任せても良いんだね。僕とスカイちゃんの仲間の敵討ち」

「おう。俺に任せろ」

社長の手を取って約束を交わす。

そこへタイミングが良いのか悪いのか、休憩室にギガノが入ってきた。

「ねぇねぇ、二人で何のお話してるの?ギガノも混ぜて」

「悪いが、ガキのお前には到底理解出来ない話でな」

「僕の頼み事を光大君に引き受けて貰っていたところだよ」

「へ~、有明って頼み事とか引き受けてくれるんだぁ。ギガノ相手にはあまり見られない優しい態度に驚きです」

「ギガノ、てめぇ……」

「ひぇ……ごめんなさい、冗談です。有明はギガノに対して世界一、いいえ宇宙一優しいです」

「分かれば宜しい」

「何だか、無理矢理に言わされてる感じだねぇ」

「そうなんだよ~。有明はいつもギガノのこと虐めるから恐いの」

「虐めてねぇ。大体いつも仕掛けて来るのはお前からじゃねぇか。いちいち俺の気に障るようなこと言いやがって」

「ギガノは本当のことを言っているだけです」

今の一言でカチンとした俺は、自分が出来る限りの最も恐い顔を作りギガノを睨みつけてやった。

「ひっ!有明睨まないで下さい!顔がすごく恐いです!」

「そういや、スカイの奴はどうした?一緒に遊んでたんじゃないのか?」

「……え?ギガノは知らないよ?ずっと一人で本読んでたし」

その問いには社長が代わりに答えてくれた。

「スカイちゃんなら、この時間はいつも街の見回りへ外に出て貰ってるんだ。あの子は空を飛べるし、上空から様子を見られるからね」

「何の為に?」

「そりゃ困っている優しい怪獣が居ないか確認する為さ。光大君、忘れたのかい?この会社が何の為にあるのか」

「分かってるよ。ギガノみたいな怪獣をヒーローから守る為だろ」

毎日暇そうに本を読んでるだけのお気楽な会社じゃなかったんだな。

スカイにそんなことをさせていたとは気付かなかった。

そんなことを話していたらそのスカイ本人が会社に帰って来た。

気のせいかも知れないが、いつも無表情のスカイの顔色が少し悪いように感じる。

「スカイちゃんおかえり。どうだった?困っている怪獣は居なかったかい?」

「困っている怪獣は……居なかった」

「スカイの怪獣はって言い方を、他に困っている奴がいたように聞こえたのは俺だけか?」

「居た。街の中でたくさんの人間達が石化している姿を見て恐怖を隠せないでいた。これはあるヒーローの仕業じゃないかとスカイは睨んでいるところ」

「……スカイちゃん、まさか君はそのヒーローが守るべき対象である人間を石化させたって言うのかい?悪い怪獣や星人の仕業じゃなくて?」

「男路も知っている筈。ブラザーズの一人には対象を石化させる技を使うヒーローが居ることを。その名は」

「「エース」なのか?」

「スカイもそう言おうと思っていたところ」

「ありえない。彼等が怪獣に手を出すことはあっても、怪獣の脅威から守るべき人間に危害を加える何て絶対にない。それじゃまるで……」

「ダークヒーロー、だって言うんだろ。あり得ない話じゃない。俺はブラザーズ時代にそういう奴等を腐る程見てきた。過去にはブラザーズの中にだって正義の力を悪に染めたヒーローがいたんだ」

たまに出てくるんだ。そういう闇の力に支配されちまう未熟者が。

ダークヒーローとなった奴等の排除は正義のヒーローの頂点であるブラザーズの役目となっているが……ブラザーズ同士の殺し合いとなるとそれなりに苦戦するだろうな。

俺にも昔、何度か死にかけた経験がある。



















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