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怪獣はヒーローが嫌い!  作者: SAKAHAKU
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第四話(ファイター星最強の戦士)

(……俺は、一体どうしちまったんだ?)

昨日アイツの笑顔を見てから、何故だか心が痛む。これじゃまるで俺がギガノに恋をしちまったみてぇじゃねぇか。

嫌だぁ~っ!俺は巨乳で歳上の女がタイプな普通の成人男性何だ。

そこら辺のロリータコンプレックスな奴等と一緒にされては困る。

(……そうだ、こんな時は巨乳のお色気たっぷり歳上お姉さんの水着写真でも見て落ち着こう)

俺はグラビア写真集を開いた。

……そうそう。そうだよ。やっぱこれだよな、俺はこういう大人の女性がタイプ何だよ。

あんなガキに好意を持つ何て俺はやっぱり可笑しいんだ。

もう今日は眠っちまった方が良いかもしれんな。

俺は病気何だ。

きっと明日には普通に戻れて……。

「有明、何をじろじろと見てるんですか?」

「うおぅっ!?ギッ、ギガノ……お前いつからそこに居た?」

「今来たばかりです。何を見ているのかと気になり、忍び足で近付かせて貰いました」

リビングのソファーで寝転がり写真集を眺めていた俺の元に、眠りから覚めたばかりのギガノがやって来た。

「ほうほう。有明はそういうタイプの女性が好み何ですね」

「あっ、ああ!そうさぁ~っ!男だったらこれがあたりめぇだろ!」

「えっ、でも社長の好きなタイプは十歳より下の若い女の子だって言ってたよ?」

救いようが無いロリコン野郎だな。

あの男は何をコイツに話しているんだよ……十歳より下の若い女の子は若いに決まってんだろ。

アイツは十歳より上の女の子は一切受け付けないってか?

(……あれ?)

でもあの男、ギガノのことを可愛がっていたよな。

「ちなみにお前の歳は?」

「ギガノは十一歳です」

……ほう。

つまり、一歳上はOKということか。

まあ、それでも十分にロリコンと呼べるクラスに変わりないが。

「どうしてそんなこと聞くの?」

「ああ、いや……気にするな。何でもねぇよ」

ギガノの方を向いて気付いたことが一つある。何か封筒のようなものを手に持っているな。

「その封筒どうした?」

「ああ……これポストに入ってたから持ってきた」

まさか、新聞も契約していない、知り合いも無しの俺ん家に郵便物が届くとはな。

……一体誰からだ?


ふっ、差出人不明とは……怪しすぎるぜ。

封筒を開けてみると、そこに入っていたのは指名手配されている宇宙人一体の手配書だった。

「闇の暗殺者目潰し星人?あまり聞かない名前だな」

「協力者には賞金二千万円貰えるみたいだね。そこに書いてあるよ」

…… ほほう。二千万ね。

こりゃ良いな。コイツを俺が片付ければこの賞金は俺のものって訳だ。

「それはそうと有明、今日はモンスターディフェンスへ行く日だよ。覚えてる?」

「そういやそうだったな。何時に行きゃ良いんだよ」

「ギガノは九時半って聞いてるよ」

九時半か、面倒だな。

まあ、あそこに関わるのは後何日かで終わるだろう。

この指名手配犯を撃破しちまえばさっさとおさらば出来る。それまでの我慢だ。


「おはようギガノちゃん。待っていたよ。それと、光大君も」

「……あんた、俺のことはどうでも良いんだろ」

「そんなことないよ。社長はこれでも有明のことを歓迎しているんだよ」

……そうなのか。

こんなロリコン野郎が俺のことを。

歓迎されようが、されなかろうが、俺にはどうでも良いこと何だけどな。仕事だから、仕方なく来ただけだ。

「……なあ、とりあえず俺は何をすれば良いんだ?」

「うん。まあ、そうだね。今日は暇だから、適当にそこら辺にある本を読んでいて良いよ」

おいおい、随分とテキトーなこと言うじゃねぇか。それじゃサボっていて良いと言っているのと同じだろ。

「……本を読むことが仕事か」

「うん。まあ、今日は、そうだね」

本を座って読むだけで良いって言うなら、こんな楽な仕事は無いわな。

適当に一冊の本を手に掴むと、ギガノが座っている席へと向かい、椅子に腰掛けた。

「……ん?」

ギガノはやたら分厚い本に夢中になって目をキラキラさせていた。

その本は「怪獣図鑑」

怪獣が怪獣図鑑を読むとか、何か面白い。

「バットン様、かっこいい……」

何やらそんなことを声に出している。

ギガノの言う「バットン」とはすんげぇ昔に、あるヒーローの命を奪った有名な怪獣だ。

バットンは銀河恐竜というカッコいい呼び名を持っているが、見た目はダサいし恐竜には見えない。

俺にはあの姿、ゴキブリにしか見えなかったしな。

「なあ、お前、その怪獣のどこがカッコいいって言うんだ?」

「もうっ、有明はバットン様のカッコ良さをわかってなさ過ぎです。見ればそんなことすぐにわかるよ」

図鑑を手渡され仕方なく目を向けてみるも、

「……うん。全くわかんねぇ。だいたいよ、ゴキにしか見えない怪獣をカッコいい何て思える方が可笑しい」

「有明の目は節穴なの?バットン様は恐竜でゴキブリじゃないよ」

「ああん?てめえ今何て言った」

「節穴。と言いました」

「そのヘンテコな耳引っこ抜かれてぇのか?」

「ひぇっ!止めてくださいっ!これは耳じゃなくて角だって何度も言ってるじゃないですかっ!」

……前から思っていたが、コイツはよく敬語とタメ口を混ぜて喋るな。何故だ?

「なあ、お前はどうして変な喋り方をする?」

「変ですか?何が?」

「それだよ、それ。いつも敬語とタメ口混ぜて喋ってんだろ。キモいから止めろ」

「この口調は有明のせい何だもん!今更直せないです!有明の馬鹿!有明が恐いからつい敬語で喋っちゃうだけなの!」

けっ。コイツはまたすぐ俺のせいにして……困った奴だな。

俺が恐いとかありえねー。俺はこれでも優しい方何だぜ。

「お話中に悪いね。光大君、ちょっと良いかな」

「ああ?」

星宮男路(社長)が俺の座る近くの席へと腰掛け、こちらを真剣に見つめる。悪いが俺に同性愛の趣味はねぇんだわ。他を当たってくれ。

「どうしたの?何かお話?」

「ギガノちゃん、済まないけど少しの間だけ席を外してくれないかい。僕ね、光大君と二人で大切なお話をしたいんだ」

「うん。良いよ。ギガノ向こうで図鑑眺めてる」

ギガノは席を立ち、俺と社長から離れた窓際の席へぱたぱたと走って行った。

アイツは素直にこの男の言うことを聞きすぎてる。あの様子じゃ、いつか騙されて自宅にお持ち帰りされちまいそうだな。

「どうしてアイツに席を外させた?」

そう聞くと星宮は深刻そうな顔をして話を始めた。

「ギガノちゃんの命が危ないことは、もう知っているね」

「ああ。まあ、な」

アイツ自身に聞いたし、立派な手配書も見た。間違いない。

ギガノはこの星宮にも助けを求めたのだろうか?

「で、それがどうした?」

「僕はね、昔ある宇宙人との戦闘中あの子に命を救われているんだよ」

星宮男路は俺に自分の過去を語り出した。自分が悪い宇宙人との戦闘中死にかけて、危ないところをギガノに救われたこと。それから仲良くなったこと。そして、アイツがヒーローを昔は大好きだったことを。

「僕には優しいギガノちゃんがあんな大罪を犯した何て信じられないのさ。あの子は絶対に死なせない。あの子は僕を助けてくれた……今度は僕が命をかけて守る番何だ」

「ギガノがあんたを体張って助けた、ねぇ……」

「光大君」

「あ?」

星宮がいきなり俺の手を取って、真剣な瞳でじいっと見つめてきた。

「なんだよ?」

「君に僕から最初の仕事を与えるよ。ギガノちゃんをヒーロー達から守れ。良いね?もう知っているとは思うけど、モンスターディフェンスとはそういう仕事をする会社だ」

アイツに守ってやると言っちまった以上、今更断ること何て出来ねぇよな。

やってやるよ。ようやく仕事らしい仕事にも就けたことだしな。

「それが仕事だってんならこっちも好都合だ。ギガノを救えば良いんだろ。ファイター星最強の俺にはそれくらい朝飯前。簡単なことだ。どんなヒーローが来ようが片付けてやるよ」

「よく言ってくれたね。光大君の今の言葉、僕は本当に嬉しいよ。実はね、一人で大勢のヒーローやブラザーズ相手に戦うのは正直のところ不安だったんだ。共に力を合わせてギガノちゃんを守り抜こう」

「わかった。わかったからとりあえずこの手を離せ。良い加減気持ちわりぃんだよ」

「おっと、済まない。嬉しくてつい君の手をぎゅっと握りしめていたよ。悪いね」

「社長さんよ、安心しな。ギガノはぜってぇに死なせやしねぇ。約束する。そこで相談何だが……」

俺は社長との交渉の末、給料五万を二倍の十五万に引き上げることに成功したのだった。



















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