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怪獣はヒーローが嫌い!  作者: SAKAHAKU
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第一話(二角怪獣ギガノザウルス三世)

昨日からヒーローだった俺と怪獣少女の同棲のような奇妙な生活が始まった。

他の大勢のヒーロー達から追われる身となったギガノは、どっかの誰かさんに擦り付けられた容疑のせいで捕らえられれば死刑になることは決定していると言う。

そんな可哀想な怪獣少女ギガノザウルス三世を、俺は仕方なく自分の自宅へ匿い守ってやることに決めた訳だが、

「あぁ~あ、面倒くせぇええ……やっぱり断れば良かったわ~」

「何が面倒臭いんです?断れば良かったって一体何を?」

俺様お手製(てきとーに作った)目玉焼きを美味しそうに頬張りながら、ギガノはほへっと頭にはてなマークを浮かべていた。

命狙われてるってのに、何て呑気な奴何だ。

「ん?決まってんだろ。お前を守ることをだよ」

「酷いっ!酷すぎますっ!有明、貴方それでも「ヒーローだった」男何ですかっ!?鬼畜過ぎます!外道ですっ!悪人面です!」

ギガノに次々と罵声を浴びせられる俺。

あんなことを軽々しく口にされて黙っていられる程、俺は優しい性格をしていない。

「ふふふっ。外道とはもしかしなくても俺のことを言ったのかな?ギガノ君?」

「……すすっ、すいませんでしたっ!言い過ぎました!許してください!げんこつは嫌何です!」

必死に頭をぺこぺこ下げて俺へ謝りまくるギガノ。

どうやら俺が怒っていることに気付いたらしい。

「ちっ、仕方ねぇな。今回だけは見逃してやる。だがな、次は無いと思え。心優しい俺様に盛大に感謝しろ」

「ふぅ……危ない所でした。ギガノを匿って貰っている貴方に殺されたらこうしてそばに置いて貰っている意味がありませんからねぇ」

「おいてめぇっ!守って貰っている身で何調子にのって溜息何かついてんだ!ギガ公の癖に生意気だぞっ!暇ならお茶でも汲んでこいやっ!」

俺は国民的アニメで有名な苛めっ子のように、ギガノへ怒鳴りつける。

その声に当たり前のように怯え始めたギガノは、駆け足でキッチンの方にあるポットの元へと向かって行った。

「ううっ、どうしてそんなに機嫌悪いんですか?まるで眼鏡の少年を苛める苛めっ子のような口調です。ギガノはのび君じゃありません。謝って下さい」

「誰が謝るか。ぶっ飛ばされてぇのか?ああん?」

びちゃっと、ギガノがお盆にのせて運んで来たお茶をこぼした。

「ひえぇえっ!恐いっ!その顔やめて下さい!恐いんです!」

「怪獣の癖に弱虫な奴だな。それでもお前ついてんのか?」

「ついてるって……何がです?もしかして、この立派な角のことですか?」

ギガノは自分の角を指差して俺にそう聞いた。

「バ~カ。ついてるって言ったらあれしかねぇだろ。てめぇは男にあって女に無いもの、何だか知らねぇのか?」

「ひっ、酷いですっ!ギガノはこれでもオスではなくメスですよっ!?そんな汚いものはついていませんっ!言って良いことと悪いことがあります。今すぐ訂正してください」

コイツは冗談で言ったことを本気にしやがって……。

どうみてもお前は男に見えねぇよ。

……まあ、ヘンテコな獣耳つけた変態には見えるが。

「ふっ、そうかい。ならば服を全て脱いで全裸になりな。それでじっくりと眺めてから判断してやるからよ。くくっ」

「有明、貴方はすでにギガノの裸を拝んでいるじゃないですか。初めて会った日、ギガノの服を下着まで脱がせてお風呂に一緒に入ったことをもう忘れたのですか?」

「おお……そういやそうだったな。あまりにもぺたんこな胸だったんでそん時は男だと思ってたわ」

「やはり貴方には何を言っても無駄そうなので……もう良いです」

「ああんっ?何だとぉ~っ!」

俺はギガノの胸倉を掴んで小さな体を引き寄せ、自分の膝の上にちょこんと座らせた。

「ひぅっ!止めて下さいっ!ギガノに何をするつもりですかっ!いっ、痛いっ、角を引っ張らないで下さいっ!痛いです~っ!!」

「うるせ~。悪い子にはお仕置きが必要だろ。これは俺様からの愛の鞭だと思えやっ!」

……そして十分後。

ギガノは俺の膝の上で息絶えた。

まあ、それはもちろん俺のおちゃめな冗談な訳でただ気絶しただけなのだが……。

「おい、怪獣。良い加減に目ぇ覚ませや」

頬を指でつんつんすると、すぐにギガノは目を覚ました。

「……な、何だか、すごく酷い目にあった気がするのですが、これはギガノの気のせいで合っているのでしょうか……?」

「ああ。安心しろ。お前の言う通り、気のせいだ」

「……そ、そう、ですか……な~んて、騙されませんからねっ!ギガノは有明という苛めっ子に苛められたんです!猫型のロボットに言い付けて懲らしめて貰います!覚悟していて下さい!」

コイツはさっきから有名アニメのネタをよく口にするなぁ。

「はいはい。勝手にしてくれ」

「……てっ、あれ?一体どうしたんですか、有明。もう怒ることに飽きたんですか?貴方らしくないですね」

「人を年中怒っている奴みたいに言うんじゃねぇ」

俺はギガノ弄りに飽き、ソファーの上に体を転がせるとパラパラと求人広告を眺め始めた。

……良い仕事って中々ねぇもんだな。

正社員で入ってもせいぜい手取り十四万~十五万ってところか。

それじゃほとんどバイトと変わらねぇし、せめて手取り二十万は貰える仕事場じゃないと嫌だな。

まあ、今はそんなことも言っていられない状況なのだが。

なんせ、余計な金も無いってのに一人分の生活費が増えちまったんだからなぁ。

……そう言えば、コイツに聞いていないことが一つあったな。

五千万もの賞金を懸けられる程の大罪。

そりゃ一体どんなことだ?

「なあ、ちょっと聞いても良いか?」

「えっ、は、はい……何でしょう?」

ギガノは少し怯えた表情で俺の方へと振り向いた。

なぜコイツは俺に話しかけられただけで恐怖を感じているのだろう。

別に手を出す気何て「今は」無いのに。

「お前が誰かに擦り付けられたとか言ってた罪の内容を教えろ。お前はなぜ疑われている?」

「……はい。そういえばまだお話していませんでしたね。ごめんなさい」

「いや、別に謝る必要はねぇよ……で?」

「はっ、はい……ギガノは、何者かに「ブラザーズの一名を殺した容疑」を押し付けられたみたいで、それだけではなく危険度最高のSランクまで付けられてもう最悪です。あの日からギガノはまるで地獄に居るかのような、生きた心地のしない日々を過ごして来ました。隠れても隠れても、ヒーロー達に見つかって怪我を負わされる。ギガノは死を覚悟しました……」

コイツの言う「ブラザーズ」という連中はファイター星最強と恐れられているエリートヒーロー五名程で構成された地球を怪獣達から守る正義のヒーローの集団で、昔は俺もこのブラザーズのメンバーだった。

弱虫でひ弱なギガノに戦闘のプロである彼等をどうこう出来るとは全く思えない。

コイツにそんなヤバい犯罪行為を押し付けやがったのは一体どこのどいつだ?

……ソイツは、今どこに身を潜めている?

ブラザーズを殺せる程の実力を持った凶悪怪獣を野放しにしておけば、またそれなりの被害者が出ると思うが。

「ある日突然彼等ヒーロー達に襲い掛かられたんです。お前には容疑がかけられている。おとなしく連行されろと……逃げようとしたら暴力を振るわれました。逃亡生活が始まったのはそれからです」

「そうか、そりゃ大変だったな」

「何だか、軽すぎる反応です。まるで他人事のような言い方ですね」

「まあ、実際そうだしな」

「有明、貴方はもうヒーローでは無いかもしれません。ですが、少し前まではヒーローだった男です。怪獣達を何体も何体も殺して来た筈です。悪い怪獣や良い怪獣も区別せずに……ですので、貴方には償いをする必要があると思うんです。そこら辺のところ一体どう思っていますか?」

怪獣ギガノザウルス三世は、全怪獣の代表として昔ヒーローだった俺へ偉そうにそう言った。

……コイツは俺にどうしろと言いたいんだ?

「……どうって」

俺は悪い怪獣は倒しても良い怪獣を倒した覚えは無いんだがな。

「モンスターディフェンス……」

「はあ?」

「一箇所だけ、貴方の就職先に心当たりがあります」

何だと……コイツ今、俺の就職先がどうとか言ったか?

それがもし本当だとしたら俺はニートじゃなくなることになる。

「その話、詳しく聞かせろ」

「良いのかな~?ギガノにそんな偉そうな態度取って~。素直にお願いしないと教えてあげないよ~」

ちっ、この怪獣、面倒みてやってるってのに調子に乗りやがって。何故か口調がいきなり生意気に変化してやがるし。

こりゃちょっと仕置が必要みてぇだな~。

俺はゆっくりと小生意気な怪獣娘に近付いて行くと、

「いっ、痛いっ!止めてくださいっ!痛いです~っ!」

両手に握り拳を作り、小さな頭をぐりぐりした。

ギガノはじたばたと暴れ、俺から逃げようと必死だったが、俺はそうはさせなかった。

それから暫く頭ぐりぐり攻撃を続けていると、

「うわぁあああんっ!痛いよぉ~。有明のばかぁ~」

とうとう泣き出してしまった。

俺は少し仕置が過ぎたと思い、攻撃を止めギガノを解放した。

これくらいで泣きやがって……コイツ本当に怪獣かよ……。

「有明は本当にヒーローだったんですかっ!?ギガノには貴方が正義のヒーローだった何てとても思えません。鬼か悪魔の間違いじゃないですか」

「ああん?何だとコラ。もういっぺんぐりぐりされてぇのか?何回でもやってやんぜ。特別にノーマネーでな」

「お金を取る気だったんですか!?酷い人です」

「俺は人じゃねぇ。ファイターマンだ。良いからさっさと教えやがれ」

「嫌です」

「お願いします。教えてください……」

気付くと俺の口からギガノに対し、丁寧語が飛び出していた。

俺は早く現在の生活から抜け出したいのだろう。

……そう。虚しいニート人生から。

























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