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怪獣はヒーローが嫌い!  作者: SAKAHAKU
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第十八話(ファイターゾフ。本来の姿)

光大がベリアルから借りた「侵入」の能力で夢の中に向かおうとしていた頃、ギガノは自分の夢の中で街や図書館。他色々な場所を探し歩き、皆が、というか、自分以外の生き物が何処にも存在しないことに気付いた。

「……有明、社長、スカイ、シト……。皆何処に行っちゃったの?ギガノ、このままずっと一人なの?」

光大の自宅に帰ってみても、やはり彼の姿は無い。

自分以外が誰も存在しないこの世界に恐怖を感じたのか、ギガノの瞳は潤んでいて今にも泣き出しそうな表情をしている。

「……有明、何処に居るの?会いたいよ。ギガノのこと一人ぼっちにしちゃやだ……」

悲しみの中、ギガノがふと思い出したのは昨日光大が自分に言ってくれたあの一言だった。

「嬉しかったな。有明に好きって言って貰えた。これってギガノ達、両想い……、何だよね」

「あっしはそうは思いませんねぇ。怪獣とヒーローが結ばれた実例など過去に一度もありませんので」

光大宅の日当たりの良い縁側で雲一つ浮かんでいない綺麗な青空をぼんやりと眺めていた。そんなギガノの所へやって来たのは、この夢の中に怪獣少女を閉じ込めた張本人でありブラザーズ現トップ。ファイターゾフだった。

「貴方、ファイターゾフ……。どうして有明の家の中に居るの?」

「命を奪いにやって来たんですよ。あっしが個人的に恨みを持つ君を殺しにね」

「どうして?恨みって……、ギガノ貴方に何もしてないよ」

「殺し屋星人デスデビル。この名を聞いて何か思い当たることは無いですか?」

デスデビル。その名を聞いたギガノは過去にファイターセブン(社長)を殺そうとしていた腕の立つ星人を思い出した。

「デス、デビル……。社長の命を奪おうとしてた星人だよね?」

「思い出してくれた様ですねぇ。そう。あっしは過去デスデビルとしてヒーローを手にかけ幾つもの星を征服した名の知れた星人です。現在はブラザーズ全員を支配下に置くファイター星のトップ。ファイターゾフですが」

「どうして生きてるの?確かデスデビルは社長が倒した筈なのに」

ギガノはピンチに陥った社長の援護をしただけだ。デスデビルがギガノを相手にしている間のほんの少しの隙をついて社長が彼に止めを刺したのをよく憶えている。

「ええ。確かに殺されましたよ。あっしはファイターセブンに敗北し、現在の魂だけの存在となった。あの時君が彼に味方さえしなければ、あっしは実体を失わずに済んだんです」

「だって、ギガノが助けないと社長が殺されちゃうって思ったんだもん」

「良いんですよ。死んでも。君も知っている筈です。今まで怪獣や星人がどれだけ彼等に撃破され葬られてきたのかを」

「そうかも知れないけど、ヒーローが倒すのは悪いことした怪獣と星人だけで、何もしなければ危害を加えられることは無いよ」

「そんなことはどうでも良いんですよ。とにかくあっしはヒーローに味方した裏切り者である君を生かしておくことは出来ません。自分の夢の中で一人寂しく死んで逝きなさい」

「……夢?此処ってギガノの夢の中なの?」

「ええ。そうですよ。この中に入れるのはこの世で経った一人。あっしだけです。残念でしたねぇ。君の大好きな有明君は絶対に助けに来れませんよ」

「……そっか。そうだったんだ。可笑しいとは思ってたんだよね。いくら探してもギガノ以外誰も居ないんだもん」

これが自分の夢だと言われたら頷ける。

此処は元居た現実の世界じゃない。だから有明も他の皆も誰も居ないんだと。

「良いよ。ギガノが憎いなら殺しても」

「おや、死を決断するのが早いですねぇ。いきなりどうしたのです?此処は夢の中とはいえ、あっしに殺されれば魂は抜かれ肉体はいずれ朽ち果てる。そうなれば二度と有明君には会えなくなるのですよ。それでも良いんですか?」

「うん。だってギガノが地球でしたかったことはもう、全部叶ったんだから」

ギガノがこの星にやって来た理由は、ブラザーズから命を奪われないように逃げて来たから。という訳ではない。

指名手配される前から地球の何処かに住んでいる筈の元ヒーローを探しにやって来ていた。

ファイターマン。彼へ過去に命を助けられた時のお礼を伝える為に。

有明光大ファイターマンはブラザーズ時代にダークヒーローの集団に襲われていたギガノを救ったことがある。光大は憶えていないかも知れないが、ギガノは違った。

地球で再開した頃はあまりの乱暴さにお礼を言う気さえ失っていたが、今度こそはと心に決めていた。

「有明とお話したり、一緒にご飯食べたり、図書館に行ったり……。あと、最後に好きって言って貰えた。だからもう十分。思い残すことは何も無いよ」

「そうですか。それでは、何故涙を流しているのでしょう?」

ギガノが泣く理由など経った一つしかない。

此処で殺されてしまえば大好きな光大と二度と顔を合わせることが出来なくなる。そう考えたら、自然と涙が溢れていた。

「……実は、全部叶ったって言ったのはギガノの強がり。本当は後一つだけ、思い残す事あったの。まだ有明にお礼伝えてない。こんなことになるなら恥ずかしがらずに言っておけば良かったな。以前にも貴方に助けられた時があるんだよ。ありがとうって」

「ふふ。ふひ……ふひゃ。ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。ひゃーっはっはっはっ!」

ギガノが涙を堪えようとしながら自分へ語った台詞に、ゾフは不気味な声を上げて笑い出した。

「そうです!あっしが欲しかったのは貴女のそういう悲しみの表情ですよ!こうでなければ殺す価値も無い。何度でも言って差しあげますよ。君はもう二度と有明君とは会えません。残念でしたねぇ」

「何回も言わなくても……、良いよ。もう分かってるもん」

ファイターゾフが静かに出現させたのは死神の鎌によく似た鋭利な得物。それでギガノの魂を刈り取るつもりだろう。

泣いている少女を前にしても容赦など微塵も感じられない。これがダークヒーローとなった彼のやり方だ。

「それでは、そろそろ魂を奪わせて貰いましょうかねぇ。安心して下さい。君の魂はあっしが美味しく頂きます。決して無駄にはしませんよ。ちゃんと残さずに食べ尽くしますから」

「…………助けて。助けてっ!有明ーっ!!」

助けに来ないと言われようが関係ない。

そんなことは無いと信じて精一杯、声を張り上げて名前を呼んだ。

ダークヒーローの言うことなど本気にしない。ヒーローは、有明光大は「助けて」の言葉を察知しきっと駆けつけてくれる。ギガノは最後まで願い続けた。

「なるほど。こんな野郎がヒーローを語るとか、世も末だな」

ギガノが夢の中で見たのは実体が存在しない筈のファイターゾフの顔面を容赦なく殴り飛ばす正義のヒーローの姿だった。

「有明っ!」

「待たせたな、ギガノ。すぐに助けてやるからな」

ブラザーズ初代隊長と現隊長。ファイターマン対ファイターゾフ。一対一の戦闘が始まろうとしていた。

























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