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怪獣はヒーローが嫌い!  作者: SAKAHAKU
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第十二話(ファイターシャインの魔の手)

株式会社モンスターディフェンス。この会社、表向きは私立図書館ということになっているが、実際は何の罪も無い怪獣や星人を助ける為にファイターセブンである星宮男路が設立した組織となっている。

この会社に途中入社した本日の俺の作業は社長から直接頼みが無い限りは、返却された大量の本を棚に戻す作業と子供が散らかしたであろう本の整理くらいだ。

それが終われば、後は適当に椅子に座って本でも読んでいれば一日は何気にすぐ終了する。

こんな楽な仕事は他に中々無いだろう。

あの男の最近の焼き餅を除けばの話だが……。

「あーっ!光大君、どうしてギガノちゃんの近くで本読んでるのさ!近い!近すぎるよ!」

「うるせー男だな、あんたは。図書館で大きな声出すんじゃねぇよ」

「ほらほら、ギガノちゃんこっちにおいで~。お菓子欲しくない?」

「わーい。社長大好きー」

俺のギガノがお菓子でロリコン男何かに簡単に餌付けされた。

何気にショックを受けたので休憩室を出て行こうとソファーから立ち上がる。図書館の方へ向かおうとすると、そんな俺に気付いてギガノが声をかけて来た。

「有明、何処行くの?」

「ん?たまには図書館の中の見回りでもしようかと」

「ギガノも有明と一緒に行く~」

見回り何かに付いて来ても何も面白くないのに。可愛い奴め。

「ああっ!?ギガノちゃん、行かないで!僕の傍に居てぇええええっ!!」

無様だな。

でも不思議と、すごい可哀想に見えるのは何故だろう。

「良いのか。アイツと一緒に居てやらなくて」

「うん。だって社長はスカイのご主人様だもん。ギガノがずっと一緒に居たら悪いよ」

「最近お前達、いつも一緒に居るな」

図書館の中で本を立ち読みするブラザーズの月神シトが俺達の姿を見つけて話かけて来た。

「あ、シトだ」

どうでも良いが、ギガノの奴何時からコイツを下の名前で呼ぶほど親しくなったんだ?

「怪獣少女よ。その呼び方は止めろと何度言われたら気が済むんだ?」

「えー、じゃあギガノ、シトのこと何て呼べば良いの?」

「ジャッチで良い。元々「月神シト」という名はこの体を借りている地球人の物だからな」

「でも、シトだって有明のことギガノと同じように呼んでるよ?」

「それは、呼びやすいからだ」

「だったら、ギガノも呼びやすいからシトって呼んでも良いよね」

「……勝手にしろ」

最近になって思ったんだが、皆ギガノの無邪気な笑顔に弱いよな。社長も月神も。もちろん俺も含めて。


「あらぁ、お嬢ちゃん。その耳怪獣のコスプレ?可愛いわねぇ」

ギガノが見回りの途中で気になった本を見つけ立ち読みをしていたら、一人の熟女がその姿を見つけて話かけて来た。

頭に生えた角を見てコスプレだと勘違いしているようだが、その子は本物の怪獣娘です。

「こす、ぷれ?それなぁに?」

「お嬢ちゃんみたいに偽物の耳をつけて怪獣になりきってる子のことよ」

「ギガノは偽物じゃなくて本物の怪獣だよ。これ耳じゃなくて角です」

「あら、ごめんなさい。そういう設定なのね」

そういう設定でも無いんだけどな。

この人には何を言ってもギガノが本当の怪獣だって信じてくれなそうだ。

「もしかしておばちゃん、何か本を探してるの?」

「ええ。可愛い孫の為に絵本をね」

「ギガノが一緒に探してあげる~」

「あら、良いの?それじゃ、お願いしようかしら」

「有明~、ギガノちょっと行って来るねー」

行って来ると言っても図書館の中なのは変わらないし、少しくらい目を離しても大丈夫、だよな。

「俺のことは気にしないで良いから行って来い」

「うん!」

入れ替わりに俺のところへ月神がやって来て、心配そうにギガノの背中に視線を向けていた。

「一人で行かせて大丈夫か?」

「平気だろ。此処は図書館の中だぜ。それに、いざという時は俺もお前も近くに居る」

「……確かに。でもな、どうもあの人間の「オッドアイ」が気になる」

「オッドアイ?何だそれ?」

「左右で目の色が異なる点が「シャイン」の化けた人間何じゃないかと疑ったんだが……忘れてくれ。職業病って奴だ」

月神の予想が本当ならば、ブラザーズの一人であるファイターシャインの能力は他者の姿に変われる仮装能力か。

こりゃまた厄介な能力だな。エースの石化ほどでは無いが。


……あんなことを口にされては気にもなっちまう。ギガノのところに行ってみるか。


(別段、特に変わったことは無いようだが……)

仲良さそうに話してるな。

普通に、一緒に本を探して回っているようにしか見えない。

……でも、確かにあの熟女、左右の目の色が違う。月神の言うようにシャインの可能性があるのか?

「あ、有明」

「探し物はみつかったか?」

「まだみつかんなーい。有明何処にあるか分かる?」

「さあな……社長かスカイに聞いた方が早いんじゃないか」

「そうだね。じゃあ聞いてくる。おばちゃんはギガノが戻って来るまで此処で待っててね」

「分かったわ。ありがとうね。ギガノちゃん」

社長達の居るであろう受付の方へ走って行くギガノが見えなくなったところで、俺の目の前にいる熟女から信じられない言葉を聞いた。

「あんさんがファイターマンで間違いないな。ええんか?ギガノンのこと一人にしてもうて」

「あんた……どうして俺の正体を知っている?」

「もしかしたらとは思っていたが、やはりそうか」

いきなり関西弁で話し始めた熟女が俺の正体を知っていたことに驚きを隠せずにいたら、そこに都合よく月神がやって来て、そんなことを口にする。

「その下手くそな関西弁にオッドアイ。お前、シャインだな」

「下手くそは余計や。ジャッチ、ワイが此処に来た目的、何なのか分かってるやろ」

「あの怪獣少女の命か?」

「ちゃう。ブラザーズの裏切り者。ファイタージャッチの命を奪うことや」

「俺様がお前の狙いか。構わん。態々逃げるつもりも無い。こうなった以上、いつかは殺しあう定めだ」

月神が刀を取り出し戦う意思を見せると、熟女に変化していたシャインがまたも別の人間へ姿を変える。

その姿は女のように長い髪をトップで結んでいるイケてるメンズで、この男が本来シャインが体を借りている地球人の姿なのかもしれない。

「あんさん等の敵はワイだけやないで。今日は特別に星人のお友達を連れて来とるんや」

「……星人?」

「お前さんのその片目を奪った目潰し星人や。嬉しいやろ。ちょっとしたサプライズや」

「何、だと……」

シャインの口にした星人はギガノと同じく指名手配がされている奴だった筈で、昔月神が仕留めるのに失敗した星人だ。社長が言うには中々の強者らしい。そんな奴を味方として連れてきたってのか。

「あの子の命をワイが直接奪うのはちぃと酷やからな」

「光大、ギガノのところへ行ってやれ。コイツは俺様に任せろ」

「悪い。頼んだ」

月神は現ブラザーズの実力者だ。相手が同じブラザーズだとしても心配は不要。

本当に心配するべきは戦闘経験皆無のギガノの方だ。

「うぎゃぁあああああああっ!!目がっ!目がぁあああああ!!」

図書館の中に響く誰かの悲鳴。

受付近くで俺が見たのは両目を押さえて床に蹲っている客人の姿だった。









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