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「どうもこんばんは、私幽霊で御座います」~余命(?)一カ月の幽霊ライフ~  作者: 伝説の自宅警備員
一章~いざ、彼女を求めて~
9/15

「こんばんは、私......新たな出逢いを遂げました」

 暑い季節が続いております。セミの鳴き声の煩いことこの上ない、そんなうなだれてしまう日々、あなたは今、どうお過ごしですか?



 さて、幽霊生活を始めて早七日目。

 私と黒美様との距離は一向に近づいておりません。



 先日、私は気持ちを込めて黒美様に愛の言葉を叫びました。


 届いてほしいという淡く切ない恋心を込めたつもりでしたが、いったい......何がいけなかったのでしょう? 全く反応がありませんでした。


 遠くを見つめ、ただ固まってしまっていた私の肩に、静かに置かれた白くて華奢な手。


 今まで全く温度の感じられないお方だったはずなのに、何故かその手からは温もりが感じられ、思わず頬を涙が伝っておりました。


 私は涙を拭い、気持ちを切り替えます。

 私はまだまだ諦めた訳では御座いません。

 たった一回の告白でどうこうできる程、黒美様は安いお方かではないということです。

 うん、燃えるじゃないですか!


 ただ、やはり......距離がありすぎる。

 もしかして、昨日の愛の告白は百メートルの距離に居られる黒美様に届いていなかったのでは......?


 ......いやいや、そんなはずはない。あれだけ思いっきり叫んだのですから......


 ......ん? そもそも私......叫べたのでしょうか?


「あー、あー、あー」


 声は出せてますから、たぶん叫べていたはず......です?


 呼吸をする必要はないのに、喋れている......今更になって可笑しな事に気付いてしまいました......


 う~む......不思議体験ですね? いや、ほんと。




 閑話休題(それはさておき)


 私の愛の告白は、黒美様に届いていなかったのでしょうか......?

 もし、届いていないとしたら......恥ずかしい。非常にお恥ずかしい。

 突然叫び出した怪しい人物にしか見えないじゃないですか......。

 まぁそうは言うても近くにいるのは死神様しか居られませんからいいんですけどね。



 しかし、そう思うと死神様のあの手はいったい......どちらの意味だったのでしょう?


 私は、あの手の意味は死神様が私を慰めて下さっている......そう解釈していたのですが、元々声が黒美様に届いていないものだとしたら......


 死神様は仮面の下でこみ上げてくる笑いを堪えながら、



「届くわけがないだろ、相変わらずお前は馬鹿だな」



 そんな台詞を言っていた......


 ......あれ? あれれ?


 普通にこの方が死神様らしく見えてしまうのですが......私の気のせいでしょうか?


 そーんな訳......ないですよね?


 私が感じたあの手の温もりは......

 私が流したあの涙は......

 私が抱いたあの感謝の気持ちは......

 ......無駄ではなかったんですよ......ね? ですよね??





 さーて、心をリフレーッシュ!


 私は死神様を信じているのです。

 死神様は私の恋を優しい表情で見守ってくれているのです。


「って事で......死神様? やはり、百メートルの距離を縮める事が出来ない現状......なんとか、なんとか死神様のお力で黒美様との橋渡しになってくれませんでしょうか? お願いします。お願いします」


 そう......私に今出来る事は、ただ死神様に頭を下げること。

 地面に頭をごしごしとさすりつけながら、必死に頼みこむこと。


 それが私の生きる道!


 ......ではなくて、恋を進展させるための私の出来る努力、というところでしょうか?


 恐る恐る顔を上げてみます。

 相変わらず表情の見えない死神様。

 その仮面の下にはどんなお顔が隠れているのでしょう?

 きっと慈愛に満ちた表情で私を見ておられるはずです。

 

 そうです。


 今私の頭の上にぐりぐりとかかる重みは、決して死神様の脚なんてことはないでしょう。

 普段私を冷たくあしらう死神様ですが、本当は凄くお優しい方なのです。

 そんなお方が頭を下げてお願いしている私に対し、いくらなんでもまさかそんなことをするわけがありません。

 今受けている圧力は、そうですねぇ......、たぶん死神様の圧倒的なオーラに私が気圧されているのです。そうなんです。それしかないです。それしか考えられません。


 まぁ、もし踏みつけられているのだとしたら......ありがとうございます! もう、感謝するしかないでしょう!



「って......し、死神様? そこだけは、そこだけは勘弁していただけないでしょうか? そこを踏みつけられると、もし輪っかが壊れたら、私消滅してしまいます。そこ以外でしたらどこでも......あっ......構いませんの......あんっ......で......」


 相変わらず冷たい視線(何度も何度も言いますが......以下略です)で私を見下ろしながら、ぐりぐりぐりぐりと踏みつけていただく、このご褒美......いやぁ~相変わらず死神様はわかっていらっしゃる。

 ただ......輪っかだけは本当に私の生命の危機(?)がありますので、どうかどうか別の......出来れば下の方を......



「......おぅ............」



 幽霊になっても、男の急所は変わらない。いい発見が出来ました。たぶん魂に刻まれているのでしょう。


 とりあえず......


「ありがとうございました」


 死神様へ心からのお礼を申し上げます。



 そんな私を再度強く踏みつけ、悶絶している私を尻目に死神様は行かれてしまわれました......


 う~む......そろそろこの性癖とも卒業しなければならないですかねぇ......


 このままだと本当に死神様が私に愛想が尽きて、軽く消滅......な~んて事にもなりかねません。


 しかし、そうは言ってもあの感覚、一度ハマったら抜け出せない......

 

 それが......

 

 それこそが......ドMの境地......


 ......いやぁ~恐ろしい。実に恐ろしい呪術です。


 正に。やめられない止まらない......ですね。いや、ほんと。



 なんて事を考え、そうこうしている内に、二つの人影(ニュアンスです。あくまでもニュアンスなのです)近付いてきました。

 一つは私がよく知っていて信頼しているお方、その名も死神様。

 

 さて、もう一つの人影は......やはり死神様はお優しい。なんだかんだ私に協力してくださるのですよね、本当に素晴らしいお方だ。



「で......あなたはどちら様でしょうか?」



 はい。私の目の前に現れたもう一人(?)の人物(?)は、待望の白川黒美様......ではなくて、ナイスなバディをお持ちなお方がそこに。



「あたい? あたいは筋内(すじうち)肉美(にくみ)。それよりあんた、あたい好みの良い男じゃない」



 そんなゴリマッチョなお姉さんが私の顔を覗きこみ、まるで獲物を狙う獣のようにギラリと瞳を光らせ、唇をペロリと舌で舐め回していました。



 ......はい........................




「たーすけてくださーーーい!!!」



 今日も一日黒美様にお会いすること叶わず、終わりを迎えてしまいました。


 こうして、私と新たな女性との恋愛模様が......始まりません! 始まってなるものですか! 私には心に決めた方がいるのです! いくら肉美さんのおぱぁ~いが魅力的だとしてもです!


 早く黒美様と結ばれたい......


 私は肉美さんの胸の内に吸い込まれ、バインバインとされるがままに弄ばれ、目を閉じている限りは幸せな気分を味わいつつ、黒美様との先の永い恋愛模様を妄想しながら今日という日は終了しましたとさ。



 これが私の日常。まだまだこれから!


 私の余命(?)......残り二十三日。

霊司さん! うつつを抜かしてないで、早く恋愛しましょうよ!

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