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「どうもこんばんは、私幽霊で御座います」~余命(?)一カ月の幽霊ライフ~  作者: 伝説の自宅警備員
一章~いざ、彼女を求めて~
7/15

「こんばんは、私......恋がしたいです」

奇跡的に文字数維持......というよりも、若干多めになりつつありますね。いや、ほんと。

 どうも~こんばんは~、私幽崎霊司で御座います。

 職業はなんと! 幽霊さんをやらしていただいております。

 深夜零時出社、二時退社の二時間勤務。仕事内容はなんとこれといって特にはなく、自由にしていいそうです。


 なんと素晴らしいのでしょうか!


 ですが、どうやら就業規則だけは厳しいようです......

 半径百メートルから先へは行ってはならず、幽霊さん特有の透ける能力や物を動かす能力が使わせてもらえません。

 なのでただただ二時間ぼーっと突っ立ってるお仕事なのです......


 ......うん、なんとまぁ働きがいのない会社なんでしょう!


 この職業について早五日目。


 そろそろ私......転職をしたくなってきちゃましたよ。



 しかし、どうやらこの会社......一カ月間の雇用契約らしく、こちらから破棄することが出来ません。


 どうやら私......完全にブラックな会社に勤めてしまったようですね~いや、ほんと。





 そういえば、私にも上司の方がお一人いらっしゃいます。

 名前は......何でしょう? そういえば知りませんね......。役職は『死神様』なんですがね? それ以上は全く知らないのです。


 ......謎な少女キャラでしょうか?


 ......いや、性別さえ知らないので少女かもわからないのですがね。




 そして、この方の職務内容は......私の一カ月間の監視だそうです。


「............」


 ............いくらそんなつまらない仕事だからといって私に冷たくし過ぎだと思うのですが......そこのところはどうなのでしょうか? 死神様?



 ......はい、すみません。


 最近......というか、昨日からなんですがね......

 なんだか......死神様のご機嫌が斜めなんです。


 いつもなら冷たくもどこか愛のあるツッコミを下さる死神様なのですが......昨日からはただただ冷徹に思念を私の脳に直接送ってくるだけなのです......はい......実に......辛い............


 これが巷で噂のモラルハラスメント......って奴ですかな?



 ......そうではなくて、ただ単にこの五日の内に死神様に見限られているのだとしたら............私............残りの二十六日間耐えられますでしょうか......?


 ......うん。頑張れ霊司! 負けるな霊司!


 お前には黒美様がいるじゃないかっ!!






 ってなわけで、私先日、初体験......というか初めて感じる快感を体験したんですがね......


 ......所謂(いわゆる)、ドMの境地って奴なんです、はい。



 一目惚れした黒美様に冷たい視線を向けられる......その目に私の背筋がゾクゾクとなんとも名条しがたい震えるような刺激が......あぁ......私......堪えられません!!


 もう一度......もう一度でいいので......あの体験を味わいたい............



 ......のですが、彼女は今はもう......遠い場所に行ってしまわれたのです.......



 私から距離にして......百五十メートル先でしょうか?


 柳の木の下で静かに佇む黒美様......ぎりぎり私の視界に映ります。



 あぁ......遠い......あなたまでの距離が......こんなにも遠いなんて............



 ても......愛をそうやすやす掴み取っても、安っぽくなってしまいますものね!


 難しいからこそ燃えるというものです!


 今日入れて残り二十六日の間で絶対に黒美様の心を鷲掴みにしてみせます!




 ......と、意気込んでるのですが............


 ずっと、ずーっと死神様は私に......


『......は? お前が? 無理だから。そろそろ現実見ろって? 幽霊になってまで何高望みしてやがんだ。黙ってそこで突っ立ったまま一カ月待ってろよ』


 等々......。黒美様の事を脳内妄想し出すと直ぐに冷めた目(何度も言いますが死神様は仮面を付けているので表情はわかりませんが)で、そんな辛辣な事をマシンガンの如くテレパシーを送ってくるのですよね............ほんと、何なんですかね............


 あまりの罵倒の嵐に......

 私の、私のあの子が......




 まぁ気にしていても仕方がありません。

 そうこうしている内に私の活動限界時間の半分......一時間があっという間に過ぎてしまいましたからね......


 そろそろ本気で黒美様を口説きにかかりましょう!


 ......ってなわけで......死神様? そろそろ横っ腹を抓るのを止めてくれませんか?

 もう先ほどからずっと同じところを抓られてますよね?

 そこ......もう......やられすぎて......麻痺しちゃってますよ......?


 まだ......しっかり......私のお肉......付いてますよね......? ......ですよね?





 ......本当にどうしてしまわれたのでしょうか? 死神様は......?



 ......まぁ、考えていても仕方がないですね。


 そんなことよりも、黒美様に近寄るのが先決です!


 行けるところまで行ってみましょう......


「てくてくてく......


 てくてくてく............」



 ちなみに、当然ながら私には足がありません。



「てくてくてく......


 てくてくてく.............」



 こうやって言葉に出すと、雰囲気が出るってものですよねぇ~。




 ......どうやらここまでが限界のようです。


 黒美様まで距離にして五十メートル......って言ったところでしょうか......


 ......やはり......これ以上は............



 びしびし、がしがし......


 叩いても引っ掻いても、この見えない壁が消えてくれません......



 ......ふむ。


 ......これは、どうやら作戦を変えた方がよろしいですかねぇ......


 ......ってなわけで、声を掛けてみるのみです!



「どうも~、こんばんは~」


「............」


「黒美様~、黒美様~?」


「............」



 ......やはり、あれ以来私をガン無視することに決めた御様子ですねぇ~......こちらを全く見ようともしていらっしゃりません............



 ......あぁ............


 ......この焦らしが、また............いいですねぇ~............



 ......あら......だめ......そんな..................




 一瞬......こちらを見たかと思うと、私の事をまるで汚物でも見るかのように顔をしかめ、黒美様が更に五十メートル程遠くに行ってしまわれました......



 ......なんで?


 ......どうして?


 ......私が、何をしたというんですか......?



 ......私は......ただ............




 ......餌を待つ犬のように......



 ......涎を......ぽとぽとと......垂れ流しながら......ただクネクネしていただけだというのに............



「............」


「あー......いだだだだだーー」




 ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとー! 死神様ーー!


 それは反則ですよ!


 そんなことしたら......私の大事な、だ~いじなあれ(・・)が......取れちゃうじゃないですかぁ!


 もし取れたら......死んじゃうんですよ?


 いや、もう......死んでるんですがね?



 ......じゃなくて! そんな大事なところを引っ張られたら私......消滅しちゃうじゃないですか!?



 ......いいんですか!? 私が消えてしまっても!?


 ......きっと、後悔しますよ!?





 ......一カ月見守ることが出来ずにお仕事失敗という形になってしまう......ということによって............





「............」



 ......なんでしょうか? もぅお前が消滅しようがしまいが本気でどうでもよくなってきた......ですって!? 何を仰るのですか!? ダメに決まってるじゃないですか!?


 もし私が消滅してしまったら、世界中の全人類が悲しみますよ!?


 ......いえ、アジアの皆が悲しみま......いえいえ、日本の皆が悲し......関東の皆が......東京のみん......千代田区の............ぅわぁーん、おかぁさぁぁんー!!!



 ......なんですか!? 私だってお母さんくらいは悲しんでくれますよ!? ......たぶん............。




 ......だから、もういい加減その手を離してくださいよ!


 このままだと......私の大事な大事な輪っか(・・・)が......取れちゃうじゃないですかぁ!




 ......そうなんです。私死んで、幽霊になってから......脚が無くなってしまったと共に、頭の上に黄色い輪っかが付いたのです......何、これ、ファンタジー? 的な感じです。



 この輪っか......幽霊になってしまった初日の日に、死神様に「何ですかこれ?」と伺ったのですが......どうやら幽霊の皆さん全てに付いているそうなんです。驚きですね~、いや、ほんと。


 そしてこの輪っか......どうやら取れてしまうと存在が消滅してしまうそうです......なんて恐ろしいんでしょう!?


 ......なんでこんなもの作ったのでしょう!? 消滅の危機が常にあるって......恐すぎじゃないですか!?


 ......と、死神様に訴えたのですが......どうやらこの会社......リストラが半端なく頻繁に起こるそうなんです......



 死神様以外にも数多くの死神さんがいらっしゃるらしく、その方達は私の担当の死神様よりどうやら相当気が短いらしいのですが、気に入らないことがあれば......ってか、気に入らない顔だったらすぐにでも輪っかを取っちゃって消滅させてしまうそうなんです......



 ......いやはや、私でさえ引くくらい恐ろしすぎますよ............



 そして......自称気が長い私のご担当の死神様が今、まさに、私の輪っかを引っ張っているのです......



「ひぇーーー!!!」



 引っ張られて初めて気が付いたのですが、この輪っか......引っ張られるとちょー痛いのです!


 それはもう、ほんと......男の子のあの大事な部分が握られてるような......あんな痛みです。



 ほんと......耐えられません。



 あぁ......あぁ......言ってるそばから......



 私の身体がだんだんと......だんだんと消えて............




 私は......このまま......消滅............







 ......いえいえ、どうやら今日の活動限界時間を迎えてしまったそうです。


 ......



 ............って、今日も私何も出来てなーーい!!!





 視界には、不適に笑う死神様の表情(何度も何度も言いますが、死神様は仮面を付けていらっしゃるので表情は全くわかりません!)を最後に、今日は終わります......



 私の恋は......いつ始まるのでしょうか......?




 私の余命(?)残り二十五日......


 

霊司さんの恋はまだ始まりません! 始まらせません!!(笑)


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