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「どうもこんばんは、私幽霊で御座います」~余命(?)一カ月の幽霊ライフ~  作者: 伝説の自宅警備員
一章~いざ、彼女を求めて~
5/15

「こんばんは、私......どうやら目覚めたようです」

『こ、こんばんは~。私、幽崎霊司でございます』

『あっ......はい、こんばんは。私、白川黒美です』


 私は普段綺麗なお嬢さん方と接するように......しかし、その何とも言えない美しさに何処か緊張の色が籠もった言葉遣いで自己紹介をしていました。


 それに対し黒美さんは......私が見過ぎてしまったためでしょうか......彼女は私の事を何処か怪しむような視線を送りながら挨拶を返してきたのです......


 そう......こんな綺麗な方から冷たい目線で見られたのです......


 あぁ......


 なんだか......


 私......

 



 ゾークゾクしてきましたぁー!!


 な~んですかこの高ぶる感情は!?


 初めてですよ! こんなに身体を熱くさせるときめきはっ!?



 これが......


 まさか......



 ドMの境地(・・・・・)............


 ってやつですか......?


 綺麗な人に踏まれたり......


 鞭でびちんびちんといたぶられると......



 血湧き踊る、あの興奮を味わえるという......あれのことですか!?



 あぁ......今ならわかります......


 いたぶられる立場なのに......


 逆に......『ありがとうございます』って言ってしまうその境地......


 

 一種のご褒美になってしまうんですよね......



 それが......これなんですね!? 


 


 あぁ......あぁ......もぅ............た~まりませんなぁ~!!!





 ......はっ! いけないいけない!


 私の滴り落ちそうな涎と、私の恍惚の表情を更に冷たくなった眼差しで見据える黒美さん......




 あぁ......


 これは......


 さすがに......


 一大事です......



 初めてお会いしたというのに......



 あんな表情をさせてしまうとは............



 はぁ......


 私......



 ......ゾークゾクが一向に止ーまりませーん!!



 これぞ、新境地って奴なんですね!


 死んで生まれ変わったことによって新しく芽生えた感情なんですかね!?


 なぁーんと素晴らしい事でしょう!!


 あぁ......


 素晴らし過ぎて......


 涙が......


 止まりません............



 ......って......あれ......? 


 黒美さんはいったい何処へ行ってしまわれたのでしょう......?


 先程は目の前に居らしたはずなのですが......




 え......? 


 そんな......


 馬鹿な......


 もう会えないとでも言うのですか......?


 嘘でしょう......? 


 ねぇ......


 嘘だと行ってくださいよ............




 しーにがーみさまーーー!!!



 ◇



 どうやら私が歓喜して涙を流している間に、彼女は汚物でも見るかのような表情を浮かべながら、すっ......と消えてしまったそうなんです......



 あぁ......


 私としたことが......


 歓喜するあまり............



 そーんな黒美さんの表情を見逃してしまうとは!


 なんたる不覚でしょう!?




 って......


 私......


 さすがに......そうじゃないでしょう!!


 黒美さんとのせっかくの出逢いだったというのに......結局碌に話もせずお別れをしてしまうなんて............


 あぁ、勿体ない......


 私......本当に......お馬鹿さんですね......


 反省します......


 ですので死神様............


 どうか......


 どうかもう一度......


 黒美さんと会わせて頂けないでしょうか......? 


 一生のお願いです......


 そして......会って......私の気持ちをお伝えするのです!



 ......えっ? 一生ってどうせあと一カ月もないだろ? そんな事より彼女なら桜の木の下に戻っただけ......ですって......!? 


 ......


 ............


 そーれを先に行ってくださいよぉ!?


 てっきりもう会えないのかと......


 もうあの冷たい眼差しを向けてもらえないのかと......


 そう思うと......


 胸がはちきれそうになったのですよ!? 



 って......まぁ死神様に対して言うことではありませんね......失敬、失敬。


 私は紳士ですので、そんな事じゃ怒りません。怒ってはいけません。


 そして、そんな紳士である私こそ黒美さんとお似合いなのです!


 誰にも譲りませんよぉ~!!


 そんな熱いパトスを胸に、私は黒美さんの待つ桜木の下へと向かいました。



 ◇◇◇



「先程は大変お見苦しい所をお見せしてしまいましたね」


「............」


 ......あれ?


「いや~ほんとすみません。あなたがお美しすぎるあまり、見惚れてしまったのですよ~いや~ほんと」


「............」


 ......あれれ?


「それにしてもあなたみたいなお美しい方、初めてお会いしましたよ~。生前はモデルでもやっていらしたのではないですか~?」 


「............」


 どうした事でしょう......

 先程から黒美さん......全く反応がありません......

 これは......放置プレイですか? うん、これはこれで堪らない!


 ......じゃなくて! 今はやはり、私はあなたの事が知りたいのです!!


「あっ、あの......黒美さん......?」


「............」


 さすがにいきなり下の名前で呼ぶのは駄目でしたか......


「白川さん......?」


「............」


 おっと......名字でも駄目ですか......ではどうしましょうか............


「白川黒美様......!?」


「......何ですか......?」

 


 おぉー!

 やっとお返事を頂けましたぁーー!!

 いや~......このまま一生お口を聞いて下さらないと焦っちゃいましたよ......いや、ほんと。

 でも様付けで反応ですか......いや~ほんと............黒美さん......いえ、黒美様は私のご趣味をわかっているご様子。


 これは......はい。

 今後のプレイが楽しみで仕方ありませんねぇ~

 おほほほほ~。



「あのー......」


「あっ、はい。何でしょう? 黒美様!?」


 私が思考の海へダイブしていると、なんと黒美様からお声を掛けて頂きました!

 なんと喜ばしいことでしょう!

 嬉しすぎて涙と鼻血が止まりませ......



「私に近寄らないでもらえませんか?」 


 

 あぁ......あぁ......


 その言葉......


 その表情......


 黒美様......


 やはりあなたは......


 


 ......最高です!



 そうして、気がついたら再び黒美様は私の前から姿を消してしまわれていました。



 どうやら私の恋は......先が長そうですね......いや、ほんと。



 私の余命(?)残り二十七日。

霊司さんは、どうやら新しい自分を見つけられたようですね。よかったです......いや、ほんと。

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