「こんばんは、私......決して諦めませんよ」
文字数がだんだん多くなっておりますね、おほほ。
「死神様、おはようございます。......いえ、ここはこんばんは......ですかね? まぁとりあえず、今日も一日宜しくお願い致します」
優雅に御辞儀をする私を相変わらずの冷めた眼差し――と言いましても相変わらず死神様は仮面を付けておられるので雰囲気ですが――で、挨拶も返さず私を見つめております。
......ご馳走様です。
はい、こうして私の新たな一日の始まりです。
なんと清々しい一日の始まりでしょう。
......まぁ、今は既に午前零時の真夜中真っ最中状態なんですがね、おほほ。
にしても、幽霊ライフ始まって早十日、そしてMに目覚めてから早八日といったところでしょうか。
飽きるどころかむしろ嵌まる一方で、この快感なくては生きていけない......そんな状態が続いております。
まぁ私、もう既に死んでますがね。のほほほほ~。
とまぁ、いつも通りおふざけから始まる一日なのですが、ここでいつもなら死神様の突っ込み......基お抓りが入るところなのですが......全くその様子が御座いませんね。ただただぼーっと私を見つめているご様子。
......いったいどうされたのでしょう?
「......死神様? どうかされました? 何か御座いましたか?」
と、聞いてみたところで私は今更ながらあることに気が付きました。
私は零時から二時の二時間しか活動時間が与えられていないのですが、ではいったいそれ以外の時間、死神様はどうされているのでしょう? 今まで全く気にしておりませんでした......これは死神様に失礼でしたね。
もしかしたら昨夜私が活動停止した後、何かあったのかもしれないですね......
「......」
「......」
やはり、死神様からの返答は御座いません。
私と死神様のつぶらな瞳(だと信じております)が重なり合います。
そこにあるのは......そう、私と死神様の確かな信頼。
何も語らなくても心と心で通じ合っているのです。
何も語らなくても分かり合えるのです。
......と思いたいのですが、私は全く死神様が何を考えているか分かりません。想像も出来ません。
私の考えは死神様からは分からないのですよね......
はぁ......私も死神様の心がテレパシーか何かで分かれば良かったんですけどね......そんな上手い話はないのですね。
昨夜はお恥ずかしながら、ボロボロと、それはもう大量のお涙を流してしまわれました。
そして、不甲斐ない私を、死神様はそれはそれは優しく背中をさすって慰めて下さいました。
本当に心が救われた......そんな気がしております。
で、あるからこそ!
今、死神様が何に悩まれているのかは分かりませんが、私に出来ることならば支えになりたい......!
そんな所存で御座います。
「例え、この身が滅びようとも......!」
そして、相変わらず無言の死神様......
はぁ......なんとも気持ちがいい。
私の決意の表情や想いを受けても、どこ吹く風な如く、ただぼーっと路肩の石でも見るように私を見つめております。
......まぁ、やはり仮面を付けておりますのでどんな目かなんて私にはさっぱり分かりませんがね。
ですが......そう想像すると、それがまぁ、なんとも気持ちがいい......
それはもう、なんともなんとも言い難い......そんな気持ちよさが......
......今はあまり起きませんね。
やはり、相談していただけないのは寂しいですね......信頼がないんですよね......悲しくなっちゃいます。
と、まぁ死神様が言いたくないのであれば、これ以上突っ込むのもどうかというものですね。
今はとにかく黒美様と再びどうお近付きになるかを考えなければなりません!
既に私の幽霊ライフも残り三分の二になってしまったのです。
もし、仮に、十日後に黒美様とお付き合いが出来たとしても、そこから僅か十日しか甘い生活を送れないのです。しかも一日二時間しか楽しめない......
それじゃあ......それだけじゃあ私は満足出来ません!
一刻も早く、一時間でも一分でも早く黒美様とお近付きにならなければ......
しかし、やはりアイツが邪魔してきます。
......そう、この見えない壁。
私の行く手を常に阻む、押しても叩いても殴っても、一切微動だにしない、絶対的な壁。
この壁を攻略しない限り、私が黒美様に近付くことは一生出来ません。
「しかし......いったいどうすれば......」
思わずそんな言葉が口から零れていました。
昨夜からずっと考えてきましたが、やはり私にはどうやってもどうにもならないものなのです。
なので、それこそ肉美様がやったように死神の力か何かでもない限り、私が近付くことは出来ないのでしょう。
だからと言って、死神様にお願いするのも、あんな元気のない死神様に頼み事など......憚れます。
「......うわっ!? ......えっ? ......あれ?」
なんて考えていると、不意に寄りかかっていた壁が消え、思わずその場に尻餅を付いてしまいました。
......いったい何が起きたのでしょう?
すると、何もなかったかのようにてくてくてく......と壁の消えた先へと歩を進めていく死神様が......
「......って、ちょっと待ってくださいよ、死神様ー!!」
......いえ、分かっているのです。分かってしまったのです。死神様が何かしらの力で壁を取り除いてくれたのだろうということを。
しかし......昨夜から死神様は私にとことん優しくしてくださっております。本当にどういった心境の変化なのでしょうか?
......気になります。
しかし、やはり無言で歩む死神様。
表情を覗き込もうと前に出ても、やはり仮面で表情は分かりません。
しかし、顔をこちらへと向けないようにするその姿......
まさか! まさかまさか!! 死神様が......デレてる!?
そう思った瞬間、死神様から久し振りのお抓りを頂くことが出来ました。
「お......おぅ、あ、ありがとうございます!」
あぁ......これです......これなんです......これを私は待っておりました!
照れ隠しの加減を見失った激しいお抓り......あぁ......溜まりません!
もう私、昇天間近で御座います!!
なんて風に死神様とじゃれていると、私の背後から影が差しました。
......ま、まさか............
背筋から冷たい汗が流れます。
私が恐る恐るぎぎぎっと首を回すと、そこにはタイガーなマスクを付けた爆乳を誇張するかのように腕をクロスさせて佇む巨体なレスラー......基、死神である肉美様がおられました。
足が竦む......腰が引ける......そんな言葉はこうゆう時に使うんですね。
直ぐにこの場から逃げたいのに、離れたいのに、全くもって身体が動きません。動いてくれません。
「......あんた、まだ生きてたんだね」
そして、上から見下ろす形でそんな言葉を漏らす肉美様に......
「い、いえ......私は死んでますよ......なんせ死んで幽霊やっておりますから......」
......あう。さすが私の性格です。こんなときにもボケを欠かさないその精神......私の勇気に脱帽です......
「はははっ、覚悟は出来てるようだねぇ」
そして、私は言ってしまったが最後......今度こそ塵も残らない形で本当に消滅させられてしまうのでしょう......
肉美様が私の大事なアソコを握ります。
「あっ......あぅ............」
徐々に......そう、徐々に強く握り締め、私の意識が薄くなりかけます......
「んっ」
そんなときでした。
肉美様の腕を私のアソコこと輪っかからやんわりと取り払い、死神様は肉美様と見つめ合い始めました。
当初、険しい表情だった(ような気がするだけですが)肉美様も、見つめ続けるに従って、だんだんとその表情が軟らかく(ような気がするだけですが)なり、ついには一息溜め息を吐くと、私の方へと顔を向けます。
「まぁ、しょうがないわね。あんた、この子に感謝するんだね」
どうやら死神同士のテレパシーで、死神様が肉美様を説得して頂けたご様子......
これで、遂に、晴れて、私は消滅の危機を脱せられたみたいです!
あぁ......なんて死神様はお優しいのでしょう。
昨日に引き続き、私の頬を再び涙が伝っております。
どんな心境変化があったのかは分かりませんが、ともあれ、これは確定しました!
「私は、一生あなたに着いていきます!!」
......ということで、あと残り二十日程宜しくお願い致します。
なんと短い一生だこと......おほほ......。
そうしてそんな遣り取りを繰り広げている中、あぁ......やっと見えてきましたよ。
柳の気に寄りかかる、白い着物を羽織った黒髪ロングの和風美人。白川黒美様が今目の前に......
嬉しさのあまり、涙で視界が霞んでしまいます......
今、あなたはどんなお顔をしているのですか......?
今、あなたは何を感じているのですか......?
今、会いに行きま......
「あぁあぁ、そこから先は駄目だよ。黒美が許可するまで近付くのは厳禁ね。もしそれを破ったら、今度こそ......わかってるね?」
......はい、百も承知です。見れただけでも十分で御座います。
はぁ......明日は良い日になるのかな......?
こうして私の恋は一歩前進致しました......と信じます。
私の余命(?)残り二十日。おほほ......。
霊司さんと黒美さんの恋愛模様を早く書きたい......という想いがあまり湧かないから二人の恋愛が始まらないのでしょうかね? すみませんね、霊司さん、おほほほほ~。




