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いざ、森へ!

 三歳になりました! 今日は私の待ちわびた日なので(この台詞は転生してから何回も聞いてる気がしますが)、テンションMAXなのです! 


 いつもの気象時間より一時間程早く起きた私は、布団の脇においてあった服を掴んだ。

 この前、お母さんが指を痛ませながら作っていたゴワゴワの生地のワンピースである。お母さんはどうやら料理は得意(私の味覚には全く合わないけど)のようだが、どうやら裁縫は苦手らしい。うん、でもまあこの服は後に汚れていくだろうから、良いとして。

 部屋をのそのそと歩き回っていると、お母さんとお父さんが起きてきた。私のその様子を見て苦笑いをした。


「ふふ、その様子じゃあ本当に楽しみなのね。おつかい」

「うん!」


 そう、今日はおつかいデビューの日なのです。

 ここらの子どもは3歳になったら、近くの森で遊びがてら食料を集めて家計を助けるのだそうだ。で、10歳からは各家庭の家業を手伝ったり、新しくお仕事につく。大体の子どもは家業を継ぐんだって。ちなみに、現在7歳である私の姉、モナは家業を継ぐより針子になりたいらしい。うーん、この小さな町……っていうか、村か。この村の掟は厳しくないだろうか。だって、10歳からすでに社会人見習いなようなもんだもん。まぁ、私は一流料理人、っていう進路がハッキリ決まりすぎているから、いいんだけどね。

 

「ティノ~、お待たせ!」


 お姉ちゃんのモナが、私とお揃いのワンピースを着て出てきた。遅いよ~! 待ちくたびれた。


「ごめんね。じゃあ、行こっか!」

「うん! 早くいこ!」


 ぐいぐいと引っ張る私に、「全くティノったら。落ち着いて」とお姉ちゃんが笑った。落ち着けないよ! 早く、森が、沢山の食料が! 私を待ってるッ!


 行ってきまーす、と元気よく言って、手を繋ぎながら家を出た。近所の人達が、「あら! ティノちゃん、今日からなのね!」と声をかけてくれる。本来ならそこで話していきたいところだけど、早く森に行きたいので自重。ブンブンと子どもらしく手を振って、先を急いだ。


 数分歩くと、ようやく森の入り口が見えてきた。──と、そこでモナが立ち止まった。


「お姉ちゃん? 早く入ろうよ」

「ああ、ごめんね、ティノ。実は、森って近所の子達も一緒に入らなきゃいけない決まりなの」

「えぇーっ!」


 なんてこった。あわよくば、一人でおうちを抜け出して食材集めーとか考えてたのに。がっくし。愛しの食材たちは私を今か今かと待ちわびているのよ! このままダッシュして行っちゃおうかなぁ……。


「あ、仮に一人で入ろうとしても、無駄だよ。一定人数いないと、入れないようになってるから」


 なにそのセキュリティ。たかが森に万全すぎやしない? 


「だって、少人数だと魔物が危ないからね」


 マモノ? ……ああ、狂暴な動物でもいるのかな。魔法の世界じゃあるまいし。


 それにしても、一人で入れないのかぁ……。早速、コンソメ作り──コンソメの基礎、ブイヨンの材料を集めようとしてたのに。鶏ガラと、玉ねぎとか人参みたいな香味野菜と、香辛料。周りに子どもがわんさかいたら、集められそうにないなぁ。


 ──っていうか、遅いよ皆ッ! 早く~!







「ティーノー! 起きて、皆来たよ」

「ん……ふぁ」


 いつのまにか居眠りしていたのか、森の入り口にはすでに10人くらいの子どもが集まっていた。大体が顔見知りで、私が寝ぼけ眼を擦っているのを見て笑った。「ティノは初めてだもんな。眠いよな!」って。失礼な。誰よりも早く起きましたとも! ……っていうかもう行けるよね? 


「ねぇ、お姉ちゃん。早くいこうよ!」

「あ……えっと、まだランス達が……」

「遅れたーっ! すまねぇ」


 後ろから声が聞こえたので振り替えると、私の家のお隣さん一家の兄弟がずらり。ああ、この兄弟が来てなかったから出発しようとしなかったのね。納得。


「遅いよー、みんな!」

「ごめんモナ。待っててくれたんだ」

「当たり前でしょ。あんたたちいないと出発できないんだから」

「……あんがとよ」


 無口で体が大きくて、無表情の長男ランス。モナに真っ先に話しかけた、いたずらっ子三男坊のルーク。その隣で大あくびをしている、無気力系男子、次男坊のリアム。


「お! 今日からティノもだったな、くたばんじゃねぇぞ~?」

「お前細っこいしな」


 ルークとリアムが、ワシワシと私の頭を撫でてきた。ちょ! 髪乱れる!


「おい、兄ちゃん! ティノ嫌がってる、やめてやれよ」


 グイッと腕を引かれて、頭ワシワシ攻撃から逃れた。私の腕を引いたのは、末っ子アレン。よくルークとリアムにいじられている。金髪碧眼で、なかなか整った顔立ちをしているので、多分モテるんだろう。さっきからこっちをチラチラと見る女の子がいるし。これは将来、どんな好青年になるか楽しみだ。


「なんだ? アレン、お前妹をとられて嫉妬かぁ~?」

「バッ……ちげーよっ!」

 

 真っ赤になって言い返すアレンに、ほわーっと気持ちがほっこりする。ああ、かわいいなぁ。弟がいる姉の気持ちはこんな感じだったのだろうか。アレンの方が一つ年上だけど、私は精神年齢では二十歳だからね。前世も今も女兄弟しかいないから、なんか新鮮だ。


「……ほら、早く行くぞ」


 淡々とした表情で、ランスが森に向かって歩きだした。ランスはこの子供たちの中で最年長の9歳だから、リーダー的な役割みたいだ。それほど声を張ってないのに、ぞろぞろとランスの後をついていくのがスゴい。洗礼されてますなぁ。よし、私も続こう! 沢山の食料が私を待っている~っ!


「あ! こら! 走らないの! すぐ疲れるよ!」


 モナの声が聞こえたけど、そんなものお構い無しに走った。うおおおおおお!!! 食べ物ォォォォォォォッ!






「はひ……はふ……ま、って……」

「ほらぁ、だから言ったじゃない」


 あれから数分後(・・・)。幼児の体力に過信してた……。あっという間にくたびれてしまった私は、トボトボとモナに手を引かれて歩いていた。


「まったく。ティノはご飯のこととなると、後先考えずに突っ走るんだから……」

「モナも大変だな、俺がおぶってやろうか?」


 ルークがひょいっと私を持ち上げた。うわわわ! 高い! すごーい!! 


「ルークお兄ちゃん、やっさしーい!」

「ダメよティノ、降りなさい。ルークに迷惑でしょう?」


 えー、少しぐらいおぶってもらってもいいじゃんか~。ルークがそう言ってるんだし。


「大丈夫だよモナ。ティノ、めちゃくちゃ軽いし」

「ダメだってば。それに、いくらルークでも重いでしょ? フラフラよ」

「ぐっ……」


 悔しそうにルークが唇を噛んだ。私、そんなに重いのか……がっくし。

 しぶしぶとルークの背中から降りると、「……じゃあ俺がおぶる」と声が聞こえ、またひょいっと抱き抱えられた。たちまち、気づいたらさっきより高い景色が。


「中央広場までならいいだろ、モナ?」


 持ち上げたのはランスらしい。ルークよりもしっかりとした足取りで歩き始めたランスに、モナは何も言えないみたいだ。


「ごめんね、ランス。大丈夫?」

「……ああ、別に平気。モナもティノを引っ張ってくの大変だろ?」

「……あ、ありがとうっ」


 ポッと顔を赤くさせて、モナが額に手を当てた。そして、あっと声をあげると「ルークもありがとね、気遣ってくれて」と言った。それまで、ランスとモナのやりとりに、面白くなさそうにしていたルークが「おう!」と、花のような笑顔を浮かべた。……ほうほう、なるほどねぇ。にやにや。



 




「うあああ! ランスお兄ちゃん!! あれ! あれは何!?」

「……あれはただの雑草」

「あれは!? あの赤いやつ!」

「……あれは毒草」


 すげぇぇぇぇぇ! とはしゃぐ私に、若干引きぎみな皆を他所に、ランスに質問攻め。おっ、あれは何だ!? なんか、レタスっぽいの! 野生にあんなの生えるの!?


「ちょっと、ティノ、ランスが困ってる」

「……いや別に構わないけど」


 ごめんねランス。でも、周りにある様々な物が、私には新鮮すぎて眩しいの! おっ、あれ! あの実美味しそう~!


「ランス兄ちゃん……ティノがこうなること予想して、おぶったの?」

「……まあな」

「さすが、兄貴!」

「それよりもさぁ、早く終わらせて帰らない? 僕、眠くて死にそうなんだけど」

 

 口々に違うことを言う四兄弟に、モナがクスッと笑って「そうね、そろそろ別れましょ」と言った。今私たちがいる場所だけ木がなくて、開けている。ここがさっき言ってた、中央広場かな?


「……ん、じゃあここで解散。陽が落ちる前には帰ってこいよ」


 無表情のまま呟くランスの声を聞くや否や、子供たちは四方八方に散らばっていった。よぉし! 私も、張り切っちゃうぞ~! 急げ~!


「おっと! ティノ、お前どこいくんだ?」

「おいおい、お前何もわからないままどっか行こうとするんじゃないの。足手まといは嫌だけど、今日はモナとティノは俺達と団体行動」


 ぐいっと首根っこ掴まれて、モナのところに連行された。うぅ……デスヨネェ。こんなに簡単にいくとは思ってませんでした。


 私とモナ、四兄弟は揃って森に入っていった。ま、まあ、何はともあれ! まずは香味野菜でも探してみようか。ありますように!





 


幼馴染みっていいですよね、私は転勤族だったので幼馴染みはいないので羨ましいです……。幼馴染みラブ万歳!


体育祭が迫っているので、今まで以上に更新が遅くなります。ご了承ください。

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