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ミルクはママの味


 しばらくたって、目が見えるようになりました。ついでに、耳も聞こえます。……うん、叫んでいいですか、驚きの展開すぎてビビってるんですけど。


「おぎゃあ! おぎゃあ!」


 誰の声って、私の声。いや、私は「なんでこんなことに!」って言ってるんですよ、こうしか聞こえないんです。


 ──はい、どうやら私、赤ちゃんに転生したようで。

 どこのファンタジーだよオラ! そりゃあ、体も動きにくいはずですよ! 


 やっぱり前世の私は死んじゃったらしい。ま、そりゃそうだよなぁ。だって、結構派手にぶつかっちゃったし。ああ、折角大学に合格したのになぁ……。お母さんとお父さんに、親孝行できなかったことと、何より一流の料理人になる夢が叶えられなかったのが悔い。ごめんねお母さんお父さん。

 それは、折角転生したんだから叶えるとして、怖いのは中2時代の日記とかが見られることですかね。恋煩いで「あの人の声を聞くと、溶けてしまいそう。ああ、まるでテンパリングをする職人と、チョコレートのようだわ」とかいう黒歴史をどうか見ないで! 早めに捨てておけばよかったァァァァァァァ!


 私が泣いているのかと勘違いをしたのか、どうやらお母さんらしき女の人──柔らかそうな栗毛に、焦げ茶の瞳の美人──が顔を出した。


「ティノ、$◆☆●△▽※?」


 うん、なに言ってるかサッパリ分かりません。私の名前がティノだって事しか分からない。よく、お母さんだけじゃなくて、お父さんらしき筋肉質な男の人と、お姉ちゃんらしき女の子が覗いてきて、ティノって呼ぶから多分間違いない。しかし、それ以外の言葉は全く。まぁ、それは転生物語ではいつのまにか身に付いていくことだろうから、大丈夫だと思うんだけど。

 ああ、ついでに私の性別は女らしい。それはまぁ、お察しの通りの羞恥プレイで分かりました。お父さんにオムツを変えられた時は、恥ずかしさで白目を剥いていたに違いない。……でも、言葉やオムツ以前にもっと嫌なのが……。


「ご飯だよ、ティノ」


 ──これ、ご飯についてだ。ちなみに、ご飯にしか執着のない私の性格のせいか、「ご飯」という単語はいち早く覚えました。って、それはどうでも良くてですね、そのご飯の内容が問題なんです。

 私は乳幼児ですから、当然ご飯は母乳な訳で。最初はなんかむず痒いような恥ずかしいような、羞恥心しか頭の中には無かったのだけど、今ではもう慣れました。さすがに脳内年齢18歳以上の一応大人が、母乳を吸ってる姿は想像したら卒倒しそうだけども。


 ……ただ、その母乳がとんでもなく薄味で美味しくないのです。

 なんだろ、コップに牛乳がちょっと残ってるのに、気づかずに水いれて飲んじゃったときの不快感。栄養は豊富なんだろうけど、不味いです。それに、お腹は確かにいっぱいにはなるけど、なんだろう。この、固形物を食べてない違和感。満足感が足りてない。


 ああ、肉が食べたい! 野菜が食べたい! 離乳食でもいいから、とにかく液体じゃないのが食べたいです!



 ということで、最近の暇潰しは、私以外の家族が食べているご飯を見つめつつ、クンカクンカして匂いを噛み締めること。多分、かなり凝視しているしスハスハしてるから怖いだろうけど、赤ん坊故に可愛らしく見えるらしい。私の目線に気づいたお母さんが、ニコニコと私の頭を撫でた。私が欲しいのは頭なでなでよりも、飯なのよ! と声を発したいけども、私の口から出てくるのは「あファぅあ~」って声のみ。


 ああ、早く、固形物が食べたい! 


 母乳ってどんな味がするんですかねぇ……牛乳の限りなく薄いやつなんでしょうか、気になります。

 固形物を食べる日まで、まだまだ続きます。ティノちゃんドンマイ!

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