表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RUN !  作者: このはな
7/8

7

 天ちゃんを追いかけて学校の敷地を出た。彼の家は、学校の近所だ。地元の商店街を抜けたところにある。

「商店街の中をぶらぶら歩きながら帰るんだ」と、天ちゃんはいつも言っていたので、わたしも商店街へ向かった。

 駅前の通りにあるファッションビルに到着した。この町では一番、規模の大きなビルだ。CD屋や本屋、マクドなんかが入っている。この間、天ちゃんにもらったクマのストラップも、このビルの中の雑貨屋で買ったものだ。

 セール中のせいか、今日に限って人が多い。天ちゃんをつかまえることができるだろうか。置いてきぼり感が募っていく。急激に心細くなってきた。

 も~う、天ちゃん。どこにいるんだよ。お願い、早く姿を見せて……。

 あてもなく、ぐるりと見渡したとき、人込みの中に、ふと見慣れたうしろ姿が目に入った。すらりと背が高く、薄い茶髪。長い手足。あれは、天ちゃんだ!

「天ちゃん、天ちゃん!」

 大きな声を出して、彼を呼び止めた。

「え? わ、えっこ?」

 わたしの声に気づき、彼は振り向いた。突然のことで、びっくりしたのだろう。なんか、うろたえている感じがする。

「よかった~、追いついて。大切な用があって、探していたんだよ――」

 そして、いつものように彼のところへ駆け寄ろうとしたのだけど。彼と同じようにこちらを振り向き、わたしを待つ人物が他にいたのだ。

 ……え?

 わたしは、言葉を失ってしまった。彼のとなりに立ち、彼と同時にふり返って、わたしを見た人が、とてもきれいな女の子だったから……。

 彼女は、雑誌のモデルみたいに華奢で、髪も長く、艶やかだった。潤んだような輝きを放つ大きな瞳。どう見たって、天ちゃんとお似合いのカップルに見える。実際に、ふたりの側を通る誰もが振り返り、「へえ~」とでも言いたげな様子でチラッと見ては立ち去って行くのだ。

「あ、え? えっと……」

 彼女は、わたしを見ると、にっこりと笑った。

「こんにちは。天の友達?」

 そういえば、あっこが「天ちゃんは一人じゃない」って言ってたっけ……。いつも学校でつるんでいる友達の誰かと一緒だと、すっかり思い込んでいた。こんなにきれいな女の子が一緒だなんて、わたしはちっとも思わなかったのだ。

 いったい彼女は何者なんだろう。どうして、天ちゃんと一緒にいるの? あの場所は、天ちゃんのとなりは、わたしのものなのに。それに、彼の名前を呼び捨てにしたりして……。

 黙って突っ立っていたら、天ちゃんの困ったような声が聞こえてきた。

「えっこ? どうして、えっこが、ここにいるんだ?」

 わたしが天ちゃんを問いただす前に、質問をされてしまった。答えようがなくて、仕方なくうつむく。胃のあたりがジクジクと痛んできた。おそらく、この痛みは後悔だ。そうに違いない。

「今日、えっこと約束してたっけ? してなかったと思うけど……」

 こんなことを彼に言わせている自分も、言われている自分も、両方とも嫌だった。今にもへたり込んでしまいそうだ。口を開くと、涙がこぼれてしまうかもしれない。これ以上、天ちゃんに迷惑をかけたくない。わたしは黙って頭を横に振った。

「やっぱ、そうだったんだ。おれ、約束をすっぽかしたのかと思って、ちょっとドキドキしちゃったよ」

 彼は、浮気現場をおさえられたことを、ぜんぜん気にしていないようだった。冗談っぽく、そう言う。それを聞いて、わたしはますます悲しくなってきた。なんのために、彼を一生懸命追いかけて走って来たのだろう。

 すると、思いもよらない展開が、目の前で起こった。天ちゃんが急に大きな声をあげたのだ。

「いって~!!」

 その声にぎょっとして、顔をあげたら、あの綺麗な女の子が、天ちゃんの横っ面を殴っているところだった。

「こら、天晴! なんなんだよ、その言い方! 彼女がわざわざ会いに来たっていうのにさ、どの面さげて言う! 逆に光栄に思え、バカ弟よ」

 すさまじい勢いだった。そのかわいらしい顔とは裏腹な、男らしい口ぶり。さっきまで潤んだ輝きを放っていた瞳が、ギラギラとした輝きへと異質なものに変貌を遂げている。

 天ちゃんは、赤くなったほっぺを手にあててさすった。

「くっそ~、むかつく。言われなくったって、わかってるよっ。バカ姉貴!」

 ……は? なんですと?

 わたしは、呆然と、目の前で繰り広げられている光景を見守るしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ