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「お姉ちゃん、バカだよ。なんでもっと彼を大事にしないのさ。ほんと、バカだよね」
食事を終えたあと妹の部屋をたずね、彼にキスを求められたことを相談したら、開口一番なじられた。あげくのはてに、「天ちゃん、かわいそうー」と彼への同情を口にする。
「ちょっと、天ちゃんじゃないでしょう。天晴くん、と言いなさいよ。一応、姉の彼氏なんだから。それとね、姉に向かってなんなの、その態度はさ」
「だってー、天ちゃん同級生だし。しかも同じクラスなんだし」
ほんと、女きょうだいは容赦がない。あっこは、憎まれ口を叩き続けた。
わたしの彼、天ちゃんの名前は天晴という。「あっぱれ」と書いて、「てんせい」と読むのだ。そして、わたしより一つ年下で、ルックスもいいから学校でもモテるみたいだった。
「あたし、知らないよ~。もたもたしてるうちに、他の女にとられても。天ちゃんを狙ってる子、いっぱいいるんだから」
「そんなこと、わざわざ言われなくたってわかってるよ」
「だったら、キスぐらいしてあげなよ。軽くでいいんだよ。軽くで! 初キッスがディープだったら、かえって引かれるかもしれないしね。控えめがちょうどいいんだよ」
「う……ん」
もちろん、軽くで済ませるつもりだ。なにしろ初めてのことだし。っていうか、何言ってんの、わたし!
「あっこのバカっ。変なこと言わないの! あと、天ちゃんにも余計なこと吹き込まないでよ。わかった?」
あー、もう。あっこのせいで……。どうしよう。どんな顔をして天ちゃんに会ったらいいか、わからないじゃん。
胸のドキドキが止まりそうになかった。今夜は、眠れないかもしれない。




