【タナベ・バトラーズ】ある意味似た者同士な二人
長いポニーテールの女性レディーナが部屋に入る。
「ハルメニー、頼みたいことがあるのだけれど」
そこにいたのはレディーナの部下であるハルメニー。
人間の女性に近い容姿はしているが、耳はなく、くすんだピンクの髪が作る二つの房は重力に逆らうように宙に浮いている。
そんなハルメニーは、目もとを仮面で隠している面を静かにレディーナの方へ向けた。
「……ルイゼラ様、の……頼み、ならば」
「またそういうことを言うのね。アンタはあたしの部下でしょ、ちょっとした頼みくらい聞いてちょうだいよ」
「……我、仕える……お主、違う……ルイゼラ様」
暫し、沈黙があり。
「いいから聞いて」
「……無意味」
「取り敢えず聞きなさいよ」
「……無駄、は……必要、ない」
なかなか話を聞いてもらえず苛立ったレディーナは傍らのテーブルを片手に手のひらで叩く。
木で作られている面と手のひらが躊躇いなくぶつかり、ぱぁんと乾いた大きな音が鳴った。
「聞きなさい」
「……意味なし」
共に、暫し黙る。
そしてその果てで。
「……だが、一度……聞こう」
ハルメニーはようやく折れた。
「……ただし、簡潔に……余計なこと……必要ない」
独り言のように呟くハルメニーを目にしたレディーナは呆れ顔で「明らかにこのやり取りの方が無駄でしょうが……」とこぼしていた。
「西の塔の荷物を運んでほしいの」
「……手伝え、と」
「簡単に言えばそんな感じね。確認してみたら意外と多かったのよ、あんなのあたし一人じゃ運べないわ。だから協力して?」
ほんの少し場の空気は和らいだ、のだが。
「……断る」
「は、はああ!? ここまで来て、まだ断るの!?」
返ってきたのは想像とは逆の言葉で。
「ハルメニー! アンタには拒否権なんてないのよ! 部下なんだから、ちょっとは協力しなさいよ!」
レディーナはガクッとなりつつも怒りを言葉に乗せた。
「……知るか」
「関係性分かってるの!?」
「……我、お主……関係、平等」
「何よそれどういうこと」
「……我、下……お主、上……形のみ」
ハルメニーは、目は出ていないが、それでも分かるくらい真っ直ぐにレディーナへ視線を向ける。
「……主、ルイゼラ様……我、お主、同じ。……共に、ルイゼラ様、仕える。……即ち、関係、同じ、平等」
――その時。
「やぁ」
ルイゼラが唐突に出現した。
彼の出現はいつだって突然だ。
どんなところにでも。
どんな時でも。
ふと思い立ったかのように、ぽん、と現れる。
「賑やかだね」
ハルメニーとレディーナ、両者の面持ちが引き締まったものに変わる。
「西の塔の話だよね? レディーナ」
「はい、そうです」
「ハルメニー、荷物運び手伝ってよ」
「……承知、従う」
先ほどまでは断り続けていたハルメニーだったが、相手がルイゼラになった途端、素直に言うことを聞いた。
「ちょっ……態度違いすぎじゃないの!?」
「……ルイゼラ様、我が主……故に、従う」
まさに、ぐぬぬ、といったような顔をするレディーナだったが。
直後ルイゼラに軽くぽんと頭を叩かれて。
想定外の触れられ方に頬を赤く染める時、レディーナの面から怒りの色は消えていた。
◆終わり◆




