第7話 噂の始まり
粉挽き機が回り続ける音が、小屋の中に響いていた。
ゴォォォン……ゴォォォン……
今までよりはるかに速く、そして滑らかに石臼が回っている。
ガルドは口を半開きにしたまま、その様子を見ていた。
「……すげぇ」
ぽつりと呟く。
「これ、前より全然速いぞ」
俺は石臼の振動を手で触って確認した。
問題なし。
むしろかなり安定している。
「無駄な処理を削っただけです」
「処理?」
「いや、魔力の流れを整理しただけです」
ガルドは腕を組んで機械を見つめていた。
「今まで一日かかってた量が半日で終わりそうだな」
それは予想以上だった。
どうやら元の設計が相当ひどかったらしい。
「これなら畑も助かるな」
ガルドはそう言って笑った。
だが。
その時だった。
小屋の外が騒がしくなる。
「ガルド!」
「レオン!」
村人たちが次々と入ってきた。
どうやら様子を見に来たらしい。
「どうだった!?」
「直ったのか!?」
ガルドはニヤリと笑った。
そしてレバーを指差す。
「見てみろ」
村人の一人が恐る恐る装置を見る。
石臼が勢いよく回っている。
「え?」
「え?」
「……え?」
一斉に固まった。
そして次の瞬間。
「動いてる!!」
「しかも速い!!」
「前よりすごいぞ!!」
小屋の中が一気に騒がしくなる。
俺は少し離れたところでその様子を見ていた。
なんというか。
大げさだな。
でも村人たちにとっては重要らしい。
小麦の粉は生活の基本だからだ。
その時、後ろから低い声が聞こえた。
「これもお前がやったのか」
振り向くと村長が立っていた。
いつの間に来たのか分からない。
俺は軽く頭を下げた。
「まあ…ちょっと改造しました」
「改造?」
村長は石臼をじっと見つめた。
そしてゆっくり言った。
「確かに速い」
少しの沈黙。
村長は俺の方を見た。
「井戸だけではないのだな」
「ええ」
俺は正直に答える。
「たぶん、ほとんどの魔道具は直せます」
その言葉に村人たちが静かになった。
そして。
「……本当か?」
誰かが呟く。
俺は頷いた。
魔法陣の構造はだいたい似ている。
違うのは用途だけだ。
つまり。
「見れば分かります」
その瞬間。
村人たちが一斉に声を上げた。
「うちの暖房魔道具!」
「うちのランプも!」
「倉庫の冷却箱も止まってる!」
「水車もだ!」
一気に仕事が増えた。
ガルドが横で腹を抱えて笑う。
「言っただろ」
「引っ張りだこだ」
俺は頭をかいた。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
だが。
悪い話ではない。
むしろ。
理想的だ。
いろんな魔道具を見られる。
技術を覚えられる。
そして。
「レオン」
村長が静かに言った。
「この村に住め」
俺は少し驚いた。
「住む?」
「空き家がある」
村長は続けた。
「食事も最低限は出す」
「その代わり」
村長の目が鋭くなる。
「この村の魔道具を見てほしい」
つまり。
専属の魔道具師。
俺は少し考えた。
王都には戻れない。
金もない。
住む場所もない。
でもここなら。
仕事もある。
研究もできる。
俺は笑った。
「お願いします」
村長は小さく頷いた。
それが。
後に大きな噂の始まりになる。
この時の俺たちはまだ知らなかった。
リンド村に
「魔道具を五分で直す男がいる」
そんな噂が。
商人たちの間で広がり始めることを




