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第5話 五分の修理

「……五分だと?」

村長は眉をひそめた。

部屋の中には村人たちも集まり始めている。

皆、半信半疑という顔だ。

無理もない。

三年も壊れたままだった魔道具だ。

それを五分で直すと言われても信じられるはずがない。

ガルドだけは腕を組みながらニヤニヤしていた。

「まぁ見てろよ」

俺は井戸用の魔道具をもう一度じっくり見た。

金属の箱の側面に刻まれた魔法陣。

円形の構造の中に複数のラインが走っている。

魔力制御。

回転制御。

出力調整。

構造はシンプルだ。

だが。

「……やっぱりか」

原因はすぐに分かった。

俺は床に落ちていた小さな釘を拾った。

村長が怪訝そうな顔をする。

「何をする?」

「ちょっと直します」

俺は魔法陣の一部を軽く削った。

ほんの数ミリ。

ガルドが前のめりになる。

「お?」

削った部分は、魔力の流れを制御するライン。

ここがズレているせいで、処理がループして止まっている。

プログラムで言えば無限ループみたいなものだ。

「これで…」

俺は魔道具の横についている起動レバーを押した。

一瞬。

何も起きない。

村人たちの空気が少し冷える。

だが次の瞬間。

ゴウン。

低い音が響いた。

魔道具の内部が動き出す。

「おい……」

ガルドが呟いた。

さらに数秒後。

ギギギギ……

井戸の外からロープの巻き上げ音が聞こえてきた。

村人たちが一斉に振り向く。

そして。

ザバァッ!

井戸から水を汲み上げる音が響いた。

「……」

誰も声を出さない。

信じられない、という顔だ。

村長がゆっくり井戸の方へ歩いた。

俺たちも後を追う。

井戸を覗くと。

水桶がゆっくり上に上がってきている。

三年間止まっていた魔道具が。

普通に動いている。

「……」

村長はしばらく井戸を見ていた。

そして。

「動いている」

ぽつりと言った。

その瞬間。

村人たちが一斉に騒ぎ始めた。

「うそだろ!?」

「直った!?」

「三年ぶりだぞ!」

「水だ! 水が上がってる!」

子供たちが歓声を上げる。

女性たちは井戸の水を見て驚いている。

ガルドは腹を抱えて笑っていた。

「ほらな! 言ったろ!」

俺は少し照れくさくなった。

ただ魔法陣を直しただけだ。

でも。

この村にとっては大事件らしい。

村長がゆっくりこちらに戻ってくる。

その表情は、さっきまでとは全く違っていた。

真剣な目だ。

「……レオンと言ったな」

「はい」

村長は俺の目をまっすぐ見た。

「お前、本当に魔道具師なのか?」

俺は少し考えた。

正直に言えば。

違う。

俺はただのプログラマーだった。

でも。

今この世界では。

魔道具を直せる人間だ。

「たぶん」

俺は苦笑した。

「そんな感じです」

村長は黙ったまま頷いた。

そして。

深く頭を下げた。

「礼を言う」

村人たちが驚く。

村長が頭を下げる姿は珍しいのだろう。

「この井戸は村の命だ」

村長はゆっくり言った。

「三年も壊れたままだった」

「本当に助かった」

俺は慌てて手を振った。

「いや、そんな大したことじゃ」

ガルドが横から口を挟む。

「いや大したことだぞ」

そしてニヤリと笑った。

「兄ちゃん、この村で引っ張りだこになるぞ」

村人たちが一斉にこちらを見る。

その目は、さっきまでとは違う。

期待の目だ。

その時だった。

村人の一人が手を挙げた。

「うちのランプも壊れてる!」

「うちの暖房魔道具も!」

「粉挽きの魔道具も止まってる!」

次々と声が上がる。

気がつくと、みんな俺を見ていた。

俺は少し空を見上げた。

どうやら。

思っていたより忙しくなりそうだ。

そして同時に思う。

この世界の魔道具。

「……バグ多すぎるだろ」

もし全部直したら。

いや。

直すだけじゃない。

改造したら。

俺は少し笑った。

もしかしたら。

とんでもないことになるかもしれない

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