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第41話 伯爵の答え

重厚な扉の前。

レオンは立っていた。

「……行くか」

コンコン。

「入れ」

低く響く声。

扉を開けると――

執務室。

そして机の向こうには

ヴァルディア伯爵。

鋭い眼光。

国を動かす男。

「どうした」

短い一言。

レオンは一歩進む。

「相談があります」

伯爵はペンを置いた。

「ほう」

「珍しいな」

レオンは少し迷い――

覚悟を決める。

「王女殿下に」

「告白されました」

空気が止まる。

沈黙。

数秒。

伯爵の眉がわずかに動く。

「……セレスティア様に、か」

レオンは頷く。

伯爵は椅子に深く座り直す。

「続けろ」

レオンは言う。

「ですが」

「自分はリシアが好きです」

今度ははっきりと。

伯爵の目が細くなる。

「……なるほどな」

そして静かに言う。

「で?」

「何を迷っている」

レオンは答える。

「立場です」

「王女を無下にはできない」

「でも」

「気持ちは曲げたくない」

伯爵はしばらく黙る。

そして――

小さく笑った。

「面白い」

レオンが目を瞬く。

伯爵は言う。

「普通は逆だ」

「王女を選んで」

「他を切り捨てる」

そして鋭く見る。

「お前は違う」

レオンは黙る。

伯爵は続ける。

「確認する」

「お前は」

「リシアを娶る覚悟があるのか?」

その一言は重かった。

レオンは迷わない。

「あります」

即答。

伯爵の目が一瞬だけ柔らぐ。

「ならば」

一言。

「答えは決まっている」

レオンが息を呑む。

伯爵は言った。

「王女に媚びるな」

「リシアを選べ」

断言だった。

レオンが驚く。

「いいんですか…?」

伯爵は鼻で笑う。

「誰に聞いている」

「父親だぞ」

その言葉は強い。

だが――

次の言葉はさらに重かった。

「だがな」

空気が変わる。

「その選択には」

「責任が伴う」

レオンは頷く。

伯爵は続ける。

「王女の想いを退けるということは」

「王家との距離を誤れば」

「家ごと潰れる可能性もある」

レオンの表情が引き締まる。

伯爵はじっと見つめる。

「それでも行くか?」

一切の逃げ道はない。

レオンは答える。

「行きます」

迷いはない。

伯爵はゆっくり頷いた。

「よろしい」

そして言う。

「ならばやることは三つだ」

指を立てる。

「一つ」

「リシアに正直に伝えろ」

「逃げるな」

レオンは頷く。

「二つ」

「王女にも誠実であれ」

「嘘をつくな」

「曖昧にするな」

重い言葉。

「三つ」

伯爵の目が鋭く光る。

「力を持て」

レオンが息を呑む。

伯爵は続ける。

「お前自身の価値を」

「王家が無視できないレベルまで引き上げろ」

「そうすれば」

「“選ばれる側”から“選ぶ側”に立てる」

核心だった。

レオンは理解する。

これは恋愛の話ではない。

「国家レベルの交渉」だ。

伯爵は最後に言う。

「覚えておけ」

「王女に選ばれる男ではなく」

「王女が欲しがる男になれ」

静寂。

レオンは深く頭を下げた。

「……ありがとうございます」

伯爵は手を振る。

「行け」

「時間は多くないぞ」

レオンは振り返る。

そして扉へ。

その背に――

伯爵が一言。

「レオン」

止まる。

振り返る。

伯爵はわずかに笑っていた。

「いい女を選べ」

父としての顔だった。

レオンは小さく笑う。

「はい」

扉を開ける。

そして――

歩き出す。

向かう先は一つ。

リシアの元。

こうして

恋は

感情から覚悟へと変わった。

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