第34話 研究所建設
伯爵邸の会議室。
長い机の上には地図が広げられていた。
伯爵は腕を組んでいる。
その向かいには
セレスティア・フォン・アルヴェリア。
そして隣には
アルベルト・グランディス。
ディランも当然のように参加していた。
「さて」
王女が言う。
「研究所の場所を決めましょう」
伯爵が地図を指す。
「領都の南側」
「旧騎士訓練場があります」
アルベルトが頷く。
「広さは?」
伯爵は答える。
「かなりある」
ディランが笑う。
「商人としては道路が近いと助かる」
レオンが言う。
「できれば」
「試験できる場所が欲しいです」
王女が聞く。
「飛行実験?」
レオンは頷く。
「はい」
アルベルトが言う。
「ならば城壁の外がいい」
伯爵も同意する。
「事故があっても安全だ」
王女は地図を見ながら言った。
「ここね」
地図の一点を指す。
丘。
草原。
街から少し離れた場所。
伯爵が言う。
「そこは未開発地です」
王女は笑う。
「じゃあちょうどいい」
ディランが言う。
「研究所」
「試験場」
「倉庫」
「全部作れますね」
レオンがぽつりと言う。
「なんか」
「話がでかくないです?」
アルベルトが笑う。
「お前が始めたんだ」
王女はさらっと言った。
「王立魔道研究所」
「アルヴェリア分所」
伯爵が頷く。
「建設は我が領地で引き受けます」
ディランが言う。
「資材はクロード商会が」
アルベルトが言う。
「魔道具職人はギルドから」
レオンは頭をかく。
「なんか」
「本当にできそうですね」
王女は微笑む。
「もう決定よ」
そして護衛騎士に言う。
「王城に伝えて」
「予算承認」
騎士は敬礼する。
「はっ!」
その時。
アルベルトがふと聞いた。
「ところで」
レオンを見る。
「飛行魔道具」
「次の段階は?」
レオンは少し考えた。
「箱じゃなくて」
「人が乗れるやつ」
ディランが言う。
「それは楽しみだ」
伯爵が聞く。
「何人乗りだ?」
レオンは紙を出す。
さらさらと図を描く。
細長い板。
その下に魔法陣。
横に羽のような補助板。
アルベルトが覗き込む。
「……ほう」
王女も見る。
「これは?」
レオンは言った。
「浮遊板」
リシアが聞く。
「ボード?」
レオンは頷く。
「立って乗る」
ディランが笑う。
「空飛ぶ板ですか」
アルベルトがつぶやく。
「面白い」
伯爵が言う。
「安定するのか?」
レオンは説明する。
「重心制御」
「あと補助魔法陣」
アルベルトは頷いた。
「理論は通る」
王女が楽しそうに言う。
「いいじゃない」
「それ」
レオンが言う。
「最初は低空です」
「1メートルくらい」
伯爵が笑う。
「それでもすごい」
王女が言った。
「完成したら」
レオンが言う。
「乗ります?」
王女は即答した。
「もちろん」
アルベルトが頭を抱える。
「王女殿下…」
王女は笑う。
「大丈夫」
そしてレオンを見る。
「あなたが作るんでしょ?」
レオンは苦笑した。
「まあ」
王女は言った。
「なら安心」
アルベルトがぼそっと言う。
「その理屈はおかしい」
ディランは楽しそうだ。
「これは歴史に残りますね」
レオンはまだ実感がなかった。
だが。
研究所建設。
飛行魔道具。
王女の後ろ盾。
すべてが揃い始めていた。
そしてこの研究所から――
やがて。
空を飛ぶ船。
空を飛ぶ都市。
そんな未来の技術が
生まれることになる。
だが。
その前に。
最初の問題が起きる。
それは――
研究所の人手が足りない。




