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第29話 王都商会

魔道具都市計画の会議から三日後。

街の入口に、一台の立派な馬車が止まった。

貴族のものとは違う。

だが高級な造りだ。

扉には商会の紋章。

金色の秤を模した印。

御者が扉を開ける。

中から男が降りてきた。

三十代後半。

整えられた髪。

落ち着いた服装。

そして鋭い目。

その男は街を見回した。

夜になり始めた街。

通りにはいくつもの光が灯っている。

街灯魔道具。

男は小さく笑った。

「なるほど」

「噂通りだ」

その頃。

レオンの工房では作業が続いていた。

職人たちが出入りし、部品を運んでいる。

「レオン!」

鍛冶職人が声をかける。

「この部品でいいか?」

レオンが確認する。

「大丈夫です」

「魔石はこっちに付けてください」

職人が頷く。

「分かった」

その時。

工房の扉が開いた。

入ってきたのはリシアだった。

少し慌てた様子だ。

「レオン」

「来ました」

レオンが聞く。

「誰が?」

リシアは言った。

「王都の商会です」

レオンは少し笑った。

「早いですね」

リシアは小さくため息をつく。

「アルベルトさんの言った通りでしたね」

その時、工房の奥から声がした。

「呼んだか?」

振り向くと

アルベルト・グランディス

が立っていた。

レオンが言う。

「王都商会来たみたいです」

アルベルトは小さく笑った。

「やはりな」

そして続ける。

「どこの商会だ?」

リシアが答える。

「クロード商会です」

アルベルトの眉がわずかに動いた。

「ほう」

レオンが聞く。

「有名です?」

アルベルトは腕を組む。

「王都でも大きい商会だ」

「貴族との繋がりも強い」

リシアが少し不安そうに言う。

「揉めたりしませんよね…」

アルベルトは少し考えた。

そして言う。

「相手次第だ」

その頃。

伯爵邸の応接室。

伯爵の前に一人の男が座っていた。

先ほどの商人だ。

男は優雅に紅茶を飲む。

そして言った。

「初めまして」

「クロード商会副代表」

「ディラン・クロードと申します」

伯爵が頷く。

「ようこそ」

ディランは穏やかな笑みを浮かべた。

だが目は鋭い。

「今日は一つ」

「素晴らしい提案を持ってきました」

伯爵が聞く。

「提案?」

ディランは言った。

「街灯魔道具」

「非常に興味深い技術です」

伯爵は黙って聞いている。

ディランは続ける。

「我が商会が」

「王都への販売を引き受けましょう」

伯爵の表情は変わらない。

「条件は?」

ディランは微笑む。

「簡単です」

そして言った。

「独占契約」

部屋の空気が少し冷えた。

ディランは続ける。

「王都への販売権」

「我が商会にお任せください」

「莫大な利益をお約束します」

その時。

応接室の扉が開いた。

入ってきたのはレオンだった。

後ろにはリシアとアルベルト。

ディランの視線がレオンに向く。

数秒。

そして微笑んだ。

「あなたが」

「レオン殿ですね」

レオンは普通に答える。

「はい」

ディランはゆっくり言った。

「お会いできて光栄です」

レオンは席に座る。

そして聞いた。

「独占契約の話ですか?」

ディランは嬉しそうに頷く。

「話が早い」

レオンは少し考えて。

そして言った。

「それ」

「断ります」

部屋が一瞬静まり返る。

リシアが少し驚く。

ディランの笑みが少しだけ固まる。

「……理由を伺っても?」

レオンは普通に答えた。

「街を明るくするのが目的なので」

「独占はちょっと」

沈黙。

ディランはレオンを見つめた。

数秒後。

そして――

小さく笑った。

「なるほど」

その笑顔は先ほどと少し違う。

商人の顔だ。

ディランはゆっくり言った。

「では」

「別の提案をしましょう」

アルベルトが小さく呟く。

「来るぞ」

ディランは指を組んだ。

そして言った。

「もし」

「他の商会が」

「もっと強引な手段で技術を手に入れようとしたら」

リシアが顔を曇らせる。

ディランは続ける。

「その時」

「あなた方は守れますか?」

伯爵の目が鋭くなる。

レオンは静かに聞いていた。

ディランは最後に言った。

「我々は」

「守ることもできます」

その言葉は――

提案でもあり。

警告でもあった。

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