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第26話 ヴァルディア公爵の目的

伯爵邸の前庭に、一台の豪華な馬車が止まっていた。

黒塗りの車体に金の装飾。

扉には翼を広げた双頭の鷲の紋章。

ヴァルディア公爵家の紋章だ。

伯爵、リシア、レオン、そして

アルベルト・グランディス

が並んで出迎えていた。

執事が扉を開ける。

ゆっくりと男が降りてきた。

白髪交じりの髪。

年齢は五十代半ば。

ただ立っているだけで周囲の空気が引き締まる。

伯爵が深く頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました」

「ヴァルディア公爵閣下」

公爵は軽く頷いた。

「突然の訪問、失礼する」

低く落ち着いた声だった。

その視線がゆっくりと周囲を見渡す。

そしてアルベルトで止まった。

「ほう」

「アルベルト殿ではないか」

アルベルトが軽く頭を下げる。

「お久しぶりです、公爵閣下」

リシアが小さく驚く。

「知り合いなんですか…?」

アルベルトが静かに答える。

「王都では顔を合わせることも多い」

公爵は頷いた。

「なるほど」

「では噂は本当のようだな」

伯爵が聞く。

「噂、ですか?」

公爵はゆっくりと視線を横に移した。

そしてレオンを見る。

数秒の沈黙。

「君がレオン殿か」

レオンは普通に答えた。

「はい」

「レオンです」

公爵は少し目を細めた。

「若いな」

レオンは苦笑する。

「よく言われます」

伯爵が言う。

「まずは中へ」

応接室へ案内する。

全員が席に着くと、公爵はゆっくりと紅茶を一口飲んだ。

そして静かに言った。

「今日ここへ来た理由は一つ」

全員の視線が集まる。

公爵は続けた。

「街灯魔道具だ」

リシアが目を丸くする。

「街灯…?」

公爵は頷いた。

「王都に報告が上がっている」

「魔力消費を大幅に抑えた街灯魔道具」

アルベルトが静かに言う。

「事実です」

「確認しました」

伯爵が少し驚く。

「そこまで広まっているとは…」

公爵は腕を組んだ。

「都市を治める者にとって」

「夜の光は非常に重要だ」

そして続ける。

「街灯は都市の安全、治安、商業」

「すべてに影響する」

レオンは頷いた。

「確かに」

公爵はレオンを真っ直ぐ見る。

「だが王都で使われている街灯は」

「魔力消費が大きい」

「設置できる場所も限られている」

アルベルトが言う。

「その問題を」

「レオン殿の魔道具が解決している」

公爵は静かに頷いた。

「だから来た」

伯爵が聞く。

「つまり…」

公爵ははっきり言った。

「この街灯技術」

「都市運営に使える」

リシアが小さく呟く。

「そんな大きな話に…」

公爵は続けた。

「もしこの魔道具が量産できるなら」

「地方都市の夜は大きく変わる」

レオンは少し考えてから言った。

「量産ならできます」

部屋が一瞬静かになる。

伯爵が聞く。

「本当か?」

レオンは頷く。

「魔法陣を少し調整すれば」

「もっと作りやすくなります」

アルベルトが笑う。

「この男は」

「そういう男です」

公爵はしばらくレオンを見ていた。

そして言った。

「では提案しよう」

伯爵も身を乗り出す。

公爵は静かに続けた。

「この街灯技術」

「街全体で実用化する」

レオンが聞く。

「実験都市ですか?」

公爵は少し笑った。

「察しがいい」

そして言った。

「この街を」

「魔道具都市にする」

リシアが息をのむ。

伯爵も驚いていた。

公爵はさらに続ける。

「そのための支援は」

「公爵家が出す」

それはつまり。

公爵家の全面支援。

地方の伯爵領にとっては破格の話だった。

伯爵が慎重に聞く。

「条件は?」

公爵はレオンを見た。

「研究だ」

「好きなだけやれ」

レオンは少し笑った。

「それいいですね」

公爵も笑った。

「ただし」

少し真剣な顔になる。

「その技術」

「この国の未来を変えるかもしれん」

レオンは肩をすくめた。

「そんな大げさな」

だがアルベルトは真顔だった。

「いや」

「本当にそうだ」

そして小さく言った。

「魔法陣を理解している人間など」

「この国にほとんどいない」

公爵はゆっくり頷く。

「だからこそ」

「今のうちに押さえておく」

レオンは首を傾げた。

「押さえる?」

公爵は静かに言った。

「技術には」

「必ず争いが生まれる」

その言葉に、部屋の空気が少し重くなる。

公爵は続けた。

「いずれ王都の商会」

「貴族」

「他国」

すべてがこの技術を狙う。

そして言った。

「その前に」

「守る必要がある」

伯爵は深く頷いた。

「なるほど…」

レオンは少し考えてから言った。

「じゃあ」

「いっぱい作りましょう」

全員がレオンを見る。

レオンは笑った。

「光が増えれば」

「街も人も元気になります」

公爵は一瞬驚いた。

そして――

大きく笑った。

「ははは!」

「いい!」

「その考え方、気に入った!」

こうして。

この小さな街は――

魔道具都市計画の中心になろうとしていた。

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