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第24話 王都首席魔道具師

三日後。

伯爵邸の前に一台の豪華な馬車が止まった。

王都からの使者。

それだけで街の空気が少し変わっていた。

門の前には伯爵、リシア、そしてレオンが立っている。

御者が扉を開ける。

ゆっくりと一人の男が降りてきた。

黒いローブ。

銀の刺繍。

胸元には魔道具師ギルドの紋章。

年齢は四十前後。

鋭い目をした男だった。

伯爵が一歩前に出る。

「ようこそお越しくださいました」

「アルベルト殿」

男は軽く頷いた。

「ヴァルディア伯爵」

落ち着いた低い声だった。

その視線がすぐに周囲を見渡す。

そしてレオンで止まった。

「……」

数秒の沈黙。

リシアが小声で言う。

「この方が」

「アルベルト・グランディス」

王都魔道具師ギルド

首席魔道具師。

王都でも数えるほどしかいない最高位の技術者だ。

アルベルトは静かに言った。

「あなたがレオン殿か」

レオンは普通に答えた。

「はい」

「レオンです」

アルベルトは一歩近づく。

そして言った。

「……若いな」

レオンは笑った。

「よく言われます」

アルベルトは無表情のままだ。

「地方で革新的魔道具を作った人物」

「もっと年配だと思っていた」

伯爵が言う。

「まずは中へ」

アルベルトは頷いた。

邸の応接室。

紅茶が出される。

しかしアルベルトはカップに触れない。

真っ直ぐレオンを見る。

「さっそくだが」

「魔道具を見せてもらいたい」

伯爵は少し驚いた。

「旅の疲れもあるでしょう」

アルベルトは首を振る。

「技術確認が最優先だ」

レオンは立ち上がった。

「じゃあ工房へ」

三人は屋敷の裏にある工房へ向かう。

扉を開ける。

アルベルトは一歩入った瞬間、目を細めた。

「……ほう」

作業台。

魔石。

分解された魔道具。

そして――

レオンが作った魔法陣の設計図。

アルベルトは一枚手に取る。

数秒。

十秒。

二十秒。

沈黙。

リシアは少し緊張していた。

伯爵も黙っている。

そして。

アルベルトがぽつりと言った。

「……なるほど」

もう一枚見る。

さらに別の設計図。

彼の眉が少しだけ動いた。

「……面白い」

レオンが言う。

「それ街灯用の魔道具です」

アルベルトは顔を上げた。

「この魔法陣」

「魔力消費を三割以上削減しているな」

レオンは普通に答える。

「たぶんそれくらいですね」

リシアは驚く。

(たぶん!?)

アルベルトはレオンを見る。

初めて、少し興味を持った顔になった。

「どうやって思いついた」

レオンは肩をすくめた。

「効率悪いなと思ったので」

「書き直しました」

沈黙。

そして。

アルベルトはゆっくり言った。

「……君は」

「魔法陣を理解しているのか?」

リシアが驚く。

この世界の魔道具師は

魔法陣を理解していない。

ただコピーして使うだけ。

だがレオンは違う。

レオンは普通に答えた。

「はい」

「一応」

その瞬間。

アルベルトの目が変わった。

完全に。

技術者の目だ。

「……面白い」

そして言う。

「少し試していいか」

レオンは笑った。

「どうぞ」

アルベルトは机の上にある魔石を一つ持つ。

そして紙を取り出す。

さらさらと魔法陣を書き始めた。

速い。

さすが王都首席魔道具師。

だが。

レオンは一瞬で気づいた。

「あ、それ」

アルベルトの手が止まる。

「?」

レオンは指をさす。

「そこ」

「魔力の流れ逆になります」

アルベルトの目が細くなる。

紙を見る。

数秒。

沈黙。

そして――

彼はゆっくりとペンを置いた。

「……なるほど」

伯爵とリシアは何が起きたのか分からない。

だが一つだけ分かる。

王都最高の魔道具師が。

今。

レオンを本気で見始めた。

アルベルトは静かに言った。

「レオン殿」

「少し」

「二人で話をしよう」

空気が変わった。

リシアが小さく呟く。

「……本気モードです」

レオンは軽く笑った。

どうやら――

面白くなってきたらしい。

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