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第2話 魔法陣がコードに見える

城門の外に立ったまま、俺はしばらく動けなかった。

「……いや、本当に追い出されたな」

目の前には石畳の街道。

背後には巨大な城門。

振り返っても、もう誰もいない。

兵士たちはさっさと城内へ戻り、門の上にいる見張りは俺を完全に無視している。

つまり――

本当に終わりだ。

「異世界召喚されて一日で追放って……」

ブラック企業でももう少し研修期間あるだろ。

俺は小さくため息をついた。

手に持っているのは小さな袋。

中身は銀貨数枚と、固いパン。

「生活費三日分くらい?」

さすがに笑えない。

とはいえ、ここで突っ立っていても仕方がない。

俺は街道を歩き始めた。

王都から離れるように。

しばらく歩くと、道端に壊れたランタンが転がっているのが目に入った。

古びた金属の筐体。

中には魔石のようなものが埋め込まれている。

そして表面には複雑な紋様が刻まれていた。

「これ……魔道具か?」

ゲームとかでよく見るやつだ。

俺はしゃがみ込み、それを手に取った。

どうやら壊れているらしい。

光はついていない。

何気なく、表面の紋様を眺める。

その瞬間だった。

「……あれ?」

違和感が走った。

紋様の線が、ただの模様ではなく――意味のある構造として見える。

円の内側にある記号。

そこから伸びる線。

分岐している部分。

まるで回路のような構造。

だが、よく見るとそれは回路というより――

「コード……?」

思わず口に出た。

魔法陣の線は処理の流れ。

刻まれた記号は命令。

円は処理領域。

頭の中で何かが繋がる。

これはただの魔法陣じゃない。

プログラムだ。

プログラムとして見ると、急に全部理解できた。

どこから魔力が入るのか。

どこで処理されるのか。

どこで光を発生させるのか。

その流れがはっきり見える。

そして――

「……バグってる」

思わず笑ってしまった。

発動条件の部分が明らかにおかしい。

このランタンは、本来なら魔力が少し流れ込むだけで光るはずだ。

なのに条件が厳しすぎて、ほとんど魔力が流れない。

だから発動しない。

つまり。

「壊れてるんじゃなくて、設定ミスか」

俺はランタンをひっくり返した。

魔石の周囲に小さな魔法陣が刻まれている。

その一部をじっと見る。

ほんの少しだけ線を削れば、条件を変えられる。

そんな確信があった。

近くに落ちていた小石を拾う。

そして、魔法陣の一部分をほんの少しだけ削った。

ほんの一ミリ程度。

それだけだ。

「これで……」

俺はランタンを持ち上げた。

次の瞬間。

ぱっと柔らかい光が灯った。

白く優しい光。

壊れていたはずのランタンが、普通に光っている。

「……マジか」

俺はしばらくランタンを見つめていた。

さっきまでただのガラクタだったものが、普通に動いている。

つまり俺は――

魔法陣を修正した。

普通の人は魔法陣をただ使うだけだ。

改造するなんて発想はない。

いや、そもそも構造が理解できない。

でも俺には見える。

この魔法陣が。

プログラムとして。

「これ……ヤバくないか?」

俺はランタンを回して眺めた。

この世界では魔道具は貴重品のはずだ。

それを俺は――直せる。

いや。

直すだけじゃない。

「改造もできるよな……?」

頭の中にいくつものアイデアが浮かぶ。

魔法陣はプログラム。

ならば最適化もできる。

機能追加もできる。

性能も上げられる。

つまり。

「魔道具、作れるじゃん」

さっきまでの絶望が、嘘みたいに消えていた。

追放された。

戦闘能力ゼロ。

魔力も弱い。

でも。

俺には、この世界の誰にも理解できない技術がある。

俺はランタンを持って立ち上がった。

王都の城門はもう遠くに見える。

「役立たず、か」

王の言葉を思い出す。

思わず笑った。

「その役立たずが、魔道具を作りまくったらどうなるんだろうな」

異世界生活。

最悪のスタートだったけど。

どうやら――

少し面白くなってきた。

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