第19話 魔法陣の正体
「見せてください」
リシアの目は真剣だった。
レオンは少し笑いながら答える。
「いいですよ」
そう言って、近くにあった紙を手に取った。
ペンを借り、ゆっくりと円を描く。
魔法陣の外枠。
そこから線を伸ばし、いくつかの符号を書き込んでいく。
リシアは身を乗り出して見ていた。
「……これ」
小さく呟く。
レオンはさらに線を追加した。
矢印。
分岐。
符号。
普通の魔法陣とは少し違う形だった。
リシアの眉が動く。
「流れが……整理されてる」
レオンは頷く。
「魔力って、水の流れみたいなものなんです」
伯爵も興味深そうに見ていた。
レオンは説明を続ける。
「普通の魔法陣は、流れがぐちゃぐちゃなんです」
「だから魔力が無駄に消える」
リシアがすぐに反応する。
「だから効率が悪い」
「そうです」
レオンはさらに線を書き加える。
「ここで魔力をまとめて」
「ここで処理する」
リシアは驚いた顔をしていた。
「処理……」
その言葉が気になったらしい。
レオンは少し考えて言い換える。
「えっと……動作の順番ですね」
「順番?」
「はい」
レオンは紙に番号を書いた。
1
2
3
「まず魔力を受け取る」
「次に変換する」
「最後に発動する」
リシアの目が大きくなる。
「……そんな考え方」
小さく呟く。
「聞いたことない」
レオンは肩をすくめた。
「僕の世界では普通なんです」
「世界?」
伯爵が少し興味を持った顔になる。
レオンは慌てて誤魔化した。
「あ、いや……」
「考え方の話です」
リシアは紙をじっと見ていた。
そして突然言った。
「これ」
レオンを見る。
「魔法陣じゃないですよね」
レオンは一瞬だけ固まった。
伯爵も少し驚いた顔をする。
「どういう意味だ?」
伯爵が聞く。
リシアは紙を指さした。
「これは」
「設計図です」
レオンは思わず笑ってしまった。
「鋭いですね」
リシアは少し得意そうな顔をする。
「やっぱり」
レオンは頷いた。
「魔法陣はプログラムみたいなものです」
「プログラム?」
伯爵が聞き返す。
レオンは簡単に説明する。
「命令の集合です」
「こう動け」
「こう処理しろ」
「そういう指示を書いてるだけです」
リシアは完全に目を輝かせていた。
「つまり」
「書き換えれば動きも変わる?」
レオンは笑った。
「その通り」
リシアは思わず机を叩いた。
「すごい!」
伯爵が少し苦笑する。
「リシア」
「落ち着きなさい」
だがリシアは止まらなかった。
「レオン!」
「お願いがあります!」
レオンは苦笑する。
「今度は何です?」
リシアは目を輝かせながら言った。
「一緒に魔道具を作りましょう!」
レオンは少し驚いた。
伯爵も眉を上げる。
リシアは続ける。
「ずっと考えてた魔道具があるんです」
「でも作れなくて」
レオンは少し興味が出てきた。
「どんな魔道具です?」
リシアは迷いなく言った。
「魔力の自動充電装置」
部屋が一瞬静かになった。
伯爵がゆっくり言う。
「……それは」
「この国の魔道具師が何十年も研究している技術だ」
レオンは少し驚いた。
そんなに難しいものなのか。
だが。
頭の中ではすでに考え始めていた。
魔力入力。
蓄積回路。
変換処理。
レオンは少し考えたあと言った。
「……たぶん」
リシアが身を乗り出す。
「たぶん?」
レオンは普通の顔で言った。
「作れますよ」
伯爵とリシアは同時に固まった。




