第16話 騎士団の目的
街の大通りを、騎士団がゆっくりと進んでいた。
重い鎧の音。
整った隊列。
街の人々が道を開ける。
「おい、どこの騎士団だ?」
「紋章見ろ……あれは伯爵家じゃないか?」
人々がざわめく。
レオンも思わず目を向けていた。
「……すごいですね」
村ではまず見ない光景だ。
村長は小さく頷く。
「貴族の私兵だろう」
クラウスは目を細めて騎士たちを見ている。
そして小さく呟いた。
「ヴァルディア家だな」
「ヴァルディア?」
レオンは聞き返す。
「この地方を治める伯爵家だ」
クラウスは簡単に説明した。
「つまり、この街の一番偉い人間の家だ」
レオンは少し驚く。
そんな大物が関わる騎士団が、なぜこんな街に?
騎士団はそのまま大通りを進み、やがて冒険者ギルドの前で止まった。
「……ギルド?」
レオンは眉をひそめる。
クラウスも腕を組む。
「珍しいな」
普通、貴族がギルドに直接来ることは少ない。
用があれば使いを出す。
だが今回は違う。
中央の騎士が馬から降りた。
背の高い男だった。
鎧も他の騎士より豪華だ。
ギルドの扉を開け、中に入っていく。
「何かあったのか?」
村長が呟く。
レオンはなんとなく胸がざわついた。
嫌な予感というほどではない。
だが、妙に気になる。
その時。
ギルドの扉が再び開いた。
中から査定官の男が出てくる。
そして騎士と何か話している。
騎士は真剣な顔だった。
何度か頷く。
そして――
査定官が周囲を見回した。
レオンは思わず顔を逸らす。
だが。
「……あ」
査定官の視線が止まった。
完全に目が合った。
レオンの背中に冷たいものが走る。
査定官は騎士に何かを言う。
騎士がゆっくりこちらを見る。
「……おい」
村長が小さく言った。
「こっち見てるぞ」
レオンは苦笑する。
「ですよね」
騎士は真っ直ぐこちらに歩いてきた。
鎧の音が近づく。
周囲の人が道を空ける。
やがて騎士はレオンの前で止まった。
じっとレオンを見る。
そして低い声で言った。
「君がレオンか?」
レオンは少しだけ姿勢を正す。
「はい」
騎士は一度頷いた。
「私はヴァルディア家騎士団副団長、アルド」
周囲がざわめいた。
副団長。
つまりかなり偉い立場だ。
アルドは続ける。
「君の魔道具の話を聞いた」
やはり、と思った。
レオンは静かに聞く。
「どこまで聞きました?」
アルドは簡潔に答える。
「魔力効率の高い魔道具を作る魔道具師」
そして少し間を置く。
「それも、独学で」
レオンは苦笑した。
「そんな大したものじゃ」
アルドは首を振る。
「判断するのは我々ではない」
「え?」
アルドは真剣な顔で言った。
「ヴァルディア伯爵が」
「君に会いたいそうだ」
レオンは完全に固まった。
「……伯爵が?」
クラウスが小さく口笛を吹く。
村長は驚いた顔をしている。
アルドは淡々と言う。
「安心しろ」
「連行ではない」
「正式な招待だ」
だが次の言葉は重かった。
「明日、伯爵邸へ来てほしい」
レオンは少し空を見た。
なんだか。
話がどんどん大きくなっている気がする。
昨日まで村の魔道具師だったはずなのに。
今は。
伯爵に呼ばれている。
レオンは苦笑した。
「……断れます?」
アルドは少しだけ笑った。
「形式上はな」
そして続けた。
「だが」
「断る者は、まずいない」
レオンはため息をついた。
どうやら。
異世界生活は、また一段階動き始めたらしい。




