第12話 魔道具師レオン
ベルクが去ったあと。
俺とガルドはしばらく村の入り口で立っていた。
荷馬車はもう見えない。
ガルドが腕を組む。
「王都か」
ぽつりと呟く。
俺は肩をすくめた。
「まだ決めてませんよ」
ガルドは笑う。
「まあな」
そして村の方を見る。
「でもあいつが言ってたことも間違ってない」
俺は何も言わなかった。
確かに。
王都に行けば仕事は増えるだろう。
魔道具もたくさん見られる。
研究環境としては最高だ。
でも。
「今はここでいいかな」
俺はそう言った。
ガルドが少し驚いた顔をする。
「王都より?」
「はい」
俺は村を見回した。
畑。
井戸。
小さな家。
そして。
村人たち。
「ここ、まだ魔道具足りてないんですよ」
ガルドが笑う。
「確かにな」
実際そうだ。
壊れた魔道具もまだある。
それに。
「改造できるものも多い」
俺はそう呟いた。
ガルドがニヤリとする。
「またやるのか?」
「はい」
俺の頭の中にはもういくつも案が浮かんでいる。
粉挽き機は三倍速くなった。
でも。
まだ改良できる。
暖房魔道具も効率が悪い。
冷却箱も改造できそうだ。
つまり。
この村の魔道具は全部。
「バージョンアップできる」
ガルドは腹を抱えて笑った。
「お前ほんと面白いな」
その時だった。
「レオンさーん!」
遠くから声が聞こえる。
ミアだった。
手を振りながら走ってくる。
「どうしました?」
ミアは少し息を切らしていた。
「村長が呼んでます」
「村長?」
ガルドと顔を見合わせる。
俺たちはすぐに村長の家へ向かった。
───
村長の家の中。
村長は机の前に座っていた。
その表情はいつもより少し真面目だ。
「レオン」
「はい」
村長はゆっくり言った。
「さっきの商人」
「王都の商会だな」
どうやら知っているらしい。
「ベルク商会」
ガルドが言う。
「そこそこ大きいぞ」
村長は頷いた。
そして俺を見る。
「王都に行くのか?」
俺は少し考えた。
そして答えた。
「今は行きません」
村長は小さく頷いた。
「そうか」
それだけ言う。
だが少しだけ安心した顔にも見えた。
村長は続ける。
「この村に住むなら」
「正式に頼みたい」
俺は首をかしげる。
「何をです?」
村長ははっきり言った。
「魔道具師として」
一瞬。
部屋が静かになった。
ガルドが笑う。
「いいじゃねぇか」
ミアも嬉しそうだ。
村長は真面目な顔で続けた。
「給料は出せない」
「だが」
「家と食事」
「そして修理代は自由に取っていい」
俺は少し考えた。
でも答えはすぐ出た。
「やります」
村長は小さく頷いた。
「今日から」
「お前はこの村の魔道具師だ」
その言葉に。
ミアが嬉しそうに笑った。
ガルドは俺の肩を叩く。
「出世だな」
俺は少し笑った。
王都から追放された役立たず。
それが今。
小さな村だけど。
魔道具師になった。
でも。
俺の頭の中にあるのは別のことだった。
この世界の魔法陣。
まだまだ未完成。
つまり。
「……もっと面白くできる」
俺は机の上の魔道具を見た。
この村から。
魔道具を変えていく。
そんな気がしていた。




