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第1話 役立たずの勇者召喚

眩い光が視界を埋め尽くした。

次の瞬間、足元に違和感を覚える。

硬い石の感触。冷たい床。

ゆっくりと目を開けると、そこには巨大な魔法陣が広がっていた。

幾重にも重なった円。

複雑に絡み合う紋様。

淡い青白い光を放つ線が、床一面に刻まれている。

そして――

「成功だ! 勇者召喚は成功したぞ!」

誰かの歓声が響いた。

俺は状況を理解するより先に、周囲を見回した。

高い天井。

壁には巨大な柱。

ステンドグラスから差し込む光。

完全に中世ヨーロッパ風の大広間だ。

その周囲には鎧を着た騎士たち。

ローブをまとった魔法使い。

そして正面の高い玉座には、金の冠を被った男が座っている。

どう見ても日本ではない。

「……え?」

思わず声が出た。

その声に反応するように、玉座の男がゆっくりと立ち上がった。

威厳のある顔。

豪華な衣装。

周囲の者たちが頭を下げているところを見ると、どうやら本当に王様らしい。

王は俺を見下ろすように言った。

「お前が勇者か?」

「……いや、違います。たぶん人違いです」

正直に答えた。

しかし、周囲はざわめくだけだった。

「鑑定を」

王の言葉に、ローブを着た老人が前に出てくる。

白い長い髭。

年季の入った杖。

どう見ても魔法使いのテンプレみたいな人物だ。

老人は俺の前に水晶玉を置いた。

「手を触れなさい」

「え?」

「鑑定を行います」

言われるまま手を伸ばす。

触れた瞬間、水晶玉が淡く光り出した。

ホールの中央に、光の文字が浮かび上がる。

老人はそれをじっと見つめる。

そして――

眉がピクリと動いた。

「……おかしい」

「どうした、宮廷魔導師」

王が尋ねる。

老人は困惑した顔で答えた。

「戦闘能力……ゼロ」

一瞬、ホールが静まり返った。

「魔力は?」

「……一般人以下です」

ざわざわと騒ぎが広がる。

騎士の一人が鼻で笑った。

「ハズレ勇者か」

「いや、勇者ですらないだろう」

「ただの平民では?」

好き勝手言われている。

俺は思わず口を開いた。

「いや、そもそも呼んだのそっちですよね?」

しかし、誰も聞いていない。

王は大きくため息をついた。

「……使えんな」

その一言が妙に重く響いた。

「この男を国外へ追放しろ」

「え?」

思わず声が裏返った。

「ちょっと待ってください」

俺は慌てて言った。

「いやいやいや、召喚したのそっちですよね!?

なんで追放なんですか!?」

王は冷たい目でこちらを見る。

「勇者召喚は国家の命運をかけた儀式だ」

「だが、お前は失敗作だ」

失敗作。

その言葉が胸に刺さった。

騎士たちが近づいてくる。

ガチャリ、と鎧が鳴る。

「さあ、来い」

腕を掴まれた。

「いやちょっと待ってください!

説明とか! 補償とか!」

しかし騎士は無表情のまま俺を引きずる。

「無能を養う余裕はない」

王の声が背中から聞こえた。

「追放しろ」

その日のうちに。

俺は王城から放り出された。

城門の外。

渡されたのは、小さな袋だけだった。

中身は――

銀貨数枚と硬いパン。

「……マジか」

重厚な城門がゆっくり閉まる。

ゴォン。

大きな音が響いた。

これで完全に締め出されたらしい。

俺は空を見上げた。

青い空。

異世界っぽい景色。

遠くには森。

そして石畳の街道。

「異世界召喚されて……」

俺は呟く。

「一日で国外追放って何?」

ブラック企業

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