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仇巡の残火行 (あだめぐりのざんかこう)― 信長への復讐譚  作者: 直助


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京の馬揃

 同じ道が、続いた。


 山を越える。


 また山に入る。


 敵は、出てこない。


 村は、静かだ。


 煙も、少ない。


 列は、止まらない。


 日が過ぎる。


 また過ぎる。


 戦は、ない。


 だが、


 列は、まだ動いている。


 ある日、


 声が入る。


「京だ」


 誰かが言う。


 別の声。


「集めてるらしい」


「何をだ」


「兵よ」


 短い間。


 誰かが笑う。


「もう戦はねえだろ」


 答える者はいない。


 別の声。


「信長様だ」


 それで話は終わる。


 列の向きが、


 変わる。


 山を外れる。


 道が広がる。


 人が増える。


 別の列が、横から入る。


 旗が見える。


 木瓜だ。


 それだけではない。


 桔梗もある。


 別の旗もある。


 列は、


 長くなる。


 前も、


 後ろも、


 見えない。


 市蔵は、歩く。


 前を見る。


 敵はいない。


 だが、


 列は、集まっている。


 道の先に、


 平地がある。


 煙が上がる。


 音がある。


 人の声だ。


 京が、


 近い。



 道が、ひらける。


 山が、消える。


 土が、広がる。


 人が、いる。


 多い。


 列が、止まる。


 その場で、並ぶ。


 横に、伸びる。


 また、並ぶ。


 別の列も、


 同じように止まる。


 誰も、走らない。


 誰も、叫ばない。


 ただ、


 並ぶ。


 槍が、そろう。


 先が、揃う。


 音が、消える。


 人が、


 多すぎる。


 前が、見えない。


 後ろも、見えない。


 誰かが、小さく言う。


「なんだ、これ」


 別の声。


「全部、兵か」


 答える者はいない。


 別の足軽が言う。


「信長様だ」


 それで終わるかと思ったが、


 また別の声。


「とんでもねえな」


 短い沈黙。


 誰かが言う。


「戦じゃねえ」


 別の声。


「ああ」


 短い間。


「……見せてる」


 それだけだ。


 遠くで、


 音がする。


 低い。


 重い。


 地面が、揺れる。


 馬だ。


 列が、動かないまま、


 視線だけが動く。


 旗が、進む。


 木瓜だ。


 揺れない。


 まっすぐ進む。


 その下を、


 馬が通る。


 鎧が光る。


 音が、揃っている。


 誰も、乱れない。


 ただ、


 進む。



 市蔵は、見ている。


 動かない。


 槍を持ったまま。


 戦ではない。


 だが、


 目を離せない。


 京の中で、


 軍が動く。


 人が、


 見ている。


 兵を。


 誰かが言う。


「これが……」


 言葉は、続かない。


 列は、動かない。


 その中で、


 市蔵は、

 

 見ている。


 どこかに、


 いる。


 見えない。


 だが、


 いる。



 信長の軍が、


 進んでいる。


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