掃討の山
山に、戻る。
道は、同じだ。
土だ。
石だ。
木がある。
列は、変わらない。
だが、
前にいる敵は、少ない。
山の中に、
人がいる。
逃げた兵だ。
見つかる。
槍が出る。
短い。
それで終わる。
追う。
倒れる。
動かなくなる。
市蔵は、止まらない。
列は、進む。
城は、ない。
村も、静かだ。
煙は、少ない。
人の気配も、薄い。
丹波は、
もう終わっている。
だが、
列は、止まらない。
昼。
列が、止まる。
木の陰だ。
座る。
水を飲む。
飯を出す。
固い。
噛む。
音がする。
それだけだ。
誰かが、言う。
「見たか」
別の声。
「安土か」
「ああ」
少し間がある。
別の足軽が言う。
「すげえな」
「城じゃねえ」
「山だ」
短い笑いが出る。
だが、続かない。
誰かが、声を落とす。
「……波多野」
音が、少し止まる。
「磔だとよ」
別の声。
「ああ」
「降ったのにな」
誰も、すぐには答えない。
やがて、
別の足軽が言う。
「信長様だ」
それで、終わるかと思ったが、
もう一人が続ける。
「光秀様の母上よ」
少し、間が空く。
「人質だったんだろ」
別の声。
「らしいな」
「なのに、やるか」
誰かが、息を吐く。
「やるんだろ」
短い沈黙。
誰かが言う。
「分かっててやる」
別の声。
「さすがだな」
少し、間。
「……魔王よ」
笑いは、出ない。
誰も、否定しない。
風が、通る。
葉が鳴る。
それだけだ。
誰かが、立つ。
それに続く。
列が、また動く。
山の中だ。
人の跡がある。
踏まれた土だ。
新しい。
逃げている。
追う。
音がする。
枝が折れる。
走る音。
すぐに止まる。
短い。
それで終わる。
市蔵は、歩く。
前を見る。
槍を持つ。
動かす。
止まる。
また歩く。
丹波は、静かだ。
市蔵は、歩く。
前に、
敵はいない。
だが、
列は、止まらない。




