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仇巡の残火行 (あだめぐりのざんかこう)― 信長への復讐譚  作者: 直助


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16/22

丹波の戦火

 列が、また動く。


 城の煙は、すぐに山の向こうへ消える。


 振り返る者はいない。


 市蔵も、見ない。


 道は、また山へ入る。


 土は固い。


 石が多い。


 槍の穂先が、揺れている。


 列は、長い。


 前も、後ろも、同じ槍だ。


 誰かが言う。


「丹波は、まだ終わってねえ」


 別の声。


「城が多すぎる」


 短い笑いが出る。


「山ばっかりだ」


 列は進む。


 山を越える。


 また山に入る。


 同じ山が続く。



 やがて、


 柵が見える。


 小さな城だ。


 声が上がる。


 槍が前へ出る。


 梯子が運ばれる。


 木が折れる。


 柵が揺れる。


 叫びが混じる。


 長くは続かない。


 柵は、すぐ崩れる。


 また、列が動く。


 山道。


 谷。


 村。


 煙が上がる。


 城。


 また城だ。


 同じ戦が続く。


 槍が入る。


 抜く。


 倒れる。


 また歩く。


 丹波は、広い。


 城は、まだ残っている。



 列は、止まらない。


 山の向こうに、


 また城がある。


 だが、


 今度は違う。



 山の上に、


 柵が重なっている。


 石もある。


 城は、山を抱えている。



 道が、狭い。


 谷が、深い。


 前の足軽が言う。


「あれだ」


 誰かが聞く。


「どれだ」


「あれが八上だ」


 声が、少し低くなる。


 別の男が言う。


「波多野の城だ」


 短い沈黙がある。


 誰かが、吐く。


「あれが落ちりゃ終いだ」


 別の声。


「丹波もな」


 列は、止まらない。


 山の道が、ゆるく曲がる。


 木の間から、城が見える。


 山の上だ。


 柵が続いている。


 その下の斜面にも、


 人がいる。


 槍だ。


 木瓜の旗もある。


 別の陣だ。


 誰かが言う。


「まだ囲ってる」


 別の声。


「長え戦だ」


 矢が、ひとつ飛ぶ。


 遠い。


 土に刺さる。


 誰も走らない。


 誰も登らない。


 市蔵は、立ち止まらない。


 列のまま、山を回る。


 城は、上にある。


 人は、下に残る。


 八上城の戦は、


 まだ続いている。


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