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婚約破棄されたので、同僚に泣きついたら恋でした  作者: 絹ごし春雨


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3/3

03 その距離を越えるとき (完)

「お花?」


私のところにセレンは毎日やってくる。

もう2週間。


療養、と両親に休まされているから、セレンに仕事の負担は行ってるはずなのに。


「……花とか全然わからないから、花屋の受け売りなんだけど、その前も一本、一昨日も一本、昨日も。そして今日も。どう? いつか花束になるんじゃない? その前に枯れるか。はは」


「ダメじゃん」


自然と笑顔になる。


セレンは優しい。


でも、あんまり優しいから、ちょっと期待してしまう。


だから線を引く。


「散歩でも行く?」


断ろうとして。


「行ってくればいいじゃない」


母の声。ニヤニヤしてる。


「でも……」


「だめ?」


眉を下げたセレンの顔に。


「……ダメじゃない」


……ずるい。イケメンは、卑怯だ。





公園に着くと、夕日が溶けているようだった。

セレンの姿が照らされて、鮮やかに浮かぶ。


思わず見惚れて。


「綺麗だ」


セレンが、こちらを見て、うっとりと笑った。


どきりと胸が音を立てる。


「……セレン」


セレンは、落ち着きなく手を握ったり開いたりしながら言った。


「リディア」


あんまり真剣で、向き直る。


彼はひざまづいた。


「ごめん……限界だ。

ちょっと早いけど、言わせて」


「セレン?」


「僕は……君が、好きだ」


その言葉に、咄嗟に反応できなかった。


長年のアーノルドの婚約者であった時の名残から、ダメだと反応しそうになる。


でも、もうそれは終わっている。


私は、深呼吸した。


「続けて、セレン」


ああ、と彼は頷く。


「もっと、リディアが落ち着くまで待とうと思ってた。でも、僕には策略家は向いてないみたいだ」


情けなさそうに笑いながら、その目は私をしっかり捉ええて離さない。


「……いつから、私のこと好きだったの?」


ずっと前から、と彼は言った。


あの時も、この時も、セレンと過ごした時間が浮かびすぎて、私まで胸が苦しくなってしまった。


「ごめん……気づかなくて」


いいよ、と彼は言った。

すっきりした顔で。それにむっとした。


「ちょっと、返事いらないの?」


「そんなに、気持ちって簡単に整理できるもんじゃないだろ?」


待つよ、なんて言うから。


「……待てない」


思わず私はセレンを睨んだ。


「セレンのバカ。……すき。」


え? と彼の唇が動く前に


「さっさと立ち直って、仕事するよ。……やけじゃないの。ちゃんと……すきだから」


私の顔はきっと真っ赤だと思う。


セレンが嬉しそうに、微笑ましそうに笑ったから。


「もう」


怒ったふりをすれば、セレンは今度こそ声を出して笑った。


「リディア」


後ろから腕を引かれ、抱きしめられる、ひっくり返され、額にキス。


「……調子に乗らないで」


ごめんね、なんて余裕たっぷりに笑うから、

私はセレンをぎゅっと抱きしめた。


彼は、いつも私を調子に乗らせてくれる。

すき。

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