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02 (SIDEセレン): 泣かせない準備
「やってしまった……」
僕は内心頭を抱えながら、リディアを送る。
包み込んだ頬の柔らかさを、手がまだ覚えている。
「気をつけて……辛くなったら呼んで。愚痴ぐらい聞くから」
「うん。ありがとう」
まだ赤い目でリディアは僕を見送っている。
振り返りたがる自分の足を叱咤しながら、家に戻った。
さて、やることは山ほどある。
両親の説得。
書類の作成。
何を隠そう、僕はリディアが好きだから。
薄々婚約破棄の予感はあった。
リディアの愚痴を聞きながら、内心期待してた僕はクズだ。
でも、諦められない。
「……好き、なんだよなぁ」
彼女の栗色の髪と、空色の瞳を思い出す。
……触りたい……おっと脱線。
粛々と手を動かす。
傷ついた彼女を手に入れるには。
「ごめんね……リディア。
でも、もう泣かせないから」
それだけは、誓う。
間違えないように。




