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42不死身

最近、色々迷いが生まれて、他の小説を書こうか、とか、新しい話を作り始めたりしていたのですが、なんとか話が続きました。


もっと先まで続くはずの話なので頑張りたいと思います

デッサン人形の腕は、福の腹を貫いている。


かに見えたが……。


大柄な男が、その黒焦げの木の棒をしっかりと捕まえていた。


「おい、玩具野郎!

俺の弟に傷をつけたら、テメエなんぞ浜焼きの薪にしてやるからな!」


大だった。

ついさっきまで意識不明だったのだが、まるで無意識が福の危機を察知したかのように、誠の影から飛び出ると、一瞬の差でデッサン人形の腕を両手で握りしめていた。


「兄ちゃん!」


福が兄の背中に片手でしがみついた。


「福、よく頑張ったな、もう後は心配するな。

兄ちゃんに任せろ!」


大の言葉にデッサン人形は嘲笑う。


「一度は我々の手に落ちた奴が、何を言うのかな?」


「一度、あんたらの手の内を見たから、二度とあんたらに騙されない、と言えば分かるかよ!」




幽霊たちはしばらく前からこの岩場におり、誠たちに状況を見せていた。

爆風から二人を守ったのも幽霊と蒸気の壁だ。


「あれ?

なんであいつ、燃えてるの?」


カブトにしてみれば完封に近い形で影が使えなかったものが、あっさり炎上していることに驚いた。


「多分、福が出したのは単に石油で、ユリは石油に火を点けただけで、泥人間を攻撃していないから、燃やせたんだと思う」


誠は教えた。


「おー、あいつら、頼りないと思ったけど、実はかなり知恵の回る逞しい奴らだったんだな」


ユリコも見直す。


「でも不死身とか言ってるすよ」


川上が不安げに語った。


「だけどユリ君の虫がデッサン人形の背中に穴を開けたですよ」


猫の言葉に美鳥は、


「多分、攻撃の時は攻撃だけしか出来ないのよ。

そして修復の時は修復だけに力を割り振ってるんだわ」


「って事は」


不意に目を覚ました大が呟く。


「今なら奴を細切れに出来るって事か!」


呟き、大は誠の影の手から飛び出したのだ。




「ギガトンパンチ乱れ打ち!」


大は祭りの大太鼓をそうするように、足を踏み出すと、その反動も借りて、高速連打をデッサン人形に放った。


背後で福がデッサン人形の片腕を液体窒素で固めているため、黒焦げの人形は高速連打をもろに、そして長時間受け続けることになった。


ユリのシロアリたちがデッサン人形の体内を食い荒らしていた。


人形の顔面に、ピシッとヒビが走った。


胴体が肩からバランと崩れると共に、福の固定していた腕が粉々に砕け、デッサン人形は、天井に突き刺さり、無数の木の欠片に砕けた。


「あいつもなかなかやるわね」


ユリコが唸る。




福は不安げに、


「死んだべか?」


破片を見下ろすが、今のところは動く素振りはない。


「不死身の言葉が本当なら、息を吹き返すかもしれないけど、あれだけバラバラなんだ。

時間はかかるよ」


誠は明るく言った。


「じゃ、俺たちは下から登ってきたから、奥の穴が先に続くのかな」


ユリコは黒焦げになった岩の奥に続く丸い穴を指差した。


誠は幽霊に偵察をお願いし、美鳥はトンボを飛ばした。


川上は匂いや音を探るが。


「ん、遠いけど、男子の臭いがするようだな。

芋之助か信介か?」


「どっちにせよ助かるよ、先に進もう」


誠は言った。


「まー、あたしゃ小百合やハマユに会いたいけどね」


ユリコは言うが、彼女たち三人の中では、一番、男女を気にしない気さくな性格をしているように思う。


「皆、忘れてるようだけど井口さんもいるはずだよ」


と誠は苦笑した。


大きな岩の空洞の横腹に、真円の穴が奥に続いていた。

なにか人工的なトンネルにも見えるし、動物が掘った巣穴にも見えるが、川上は微かに男の臭いがするという。


誠は先頭を歩いた。

後に美鳥と川上が歩く。


男の臭いはとても微かで、川上もどこ、とは言えないらしい。


幽霊も探しているが、真円のトンネルには横穴もあり、均一の大きさで広範囲に続いていた。


「信介くんがいたら助かるんだけどね……」


感知能力では、ここまで離れた臭いは追いきれなかった。


道が入り込み過ぎていて、幽霊でも手が足りない。

位置さえ分かれば影の手で仲間を運べるのだが、このトンネルではそれも難しい。


だが先に仲間がいるはず、ならば諦めるわけにはいかなかった。

一瞬の遅れが死に繋がることもあり得るのだ。


とにかく前進を続けていた僕たちは、えっ、と立ち止まった。


トンネルの天井に、左右の道と同じような穴があるのだ。


「この穴を掘った奴、空を飛べるっすかねぇ?」


「あたしなら、別に歩けますけどね」


猫が川上に絡んでくる。


「猫ちゃん、チームプレーを心がけようね」


誠はやんわり注意したが、


「あれ、あたしケモミミ男って好きですよ。

ただU様と親しくしてると腹が立つだけです」


「あんた、時折モテるわよね」


美鳥は冷笑した。


「特にイケメンではないので……。

コアなファン層なんですよ」


誠は苦笑しながら、


「蛇みたいな奴かもしれませんね。

それなら、上でも平気で進める訳です」


「蛇はあまり得意じゃないわ」


不意に美鳥が言い出す。


「僕は生きた蛇を見た事が無いかも」


誠は言って。


「まあ、蛇と決まった訳でもないし、ちょっと上に行ってみましょうか?」


誠は言うが、美鳥は川上に、


「蛇の臭いはしないの?」


と聞いた。

川上も困惑し、


「俺もあんまり蛇の臭いとか、分からないっすよ」


と申し訳なさそうに言った。


「U様は田舎の事なんて知らないのは当然だけど、川上はそのくらい知りなさいよ。

鼻以外にあなたになんの意味があるの」


猫は相変わらず川上イビリが止まらない。


誠は縦穴に幽霊を偵察に出した。


穴は数百メートル弧を描くように続き、やがて二股に分かれるようだ。

上に桃源郷があると考えられるので、誠は皆を影の手で包んで、弧を登った。


傾斜を飛んで進み、道が平坦になると誠は皆を降ろした。


二股まではまだ四、五百メートルはあるだろう。


だが足元は石のように固い土だし、むしろ石よりも多少のクッションがある分、歩きやすい。


「でも、これが蛇の穴なら、アナコンダなんてチビッコな蛇ですよねー」


猫は何故か楽しそうに言った。


「蛇ってトンネルなんて掘ったっけ?」


とはカブト。


「種類で違うべ。

でも日本の蛇は冬眠するから、ある程度は穴は掘れると思う」


と福。


だけど、地面はかなり硬いぜ?」


川上が疑問を投げかけるが福は、


「大きさが桁違いだから、一概には言えないべ」


と冷静に返した。


確かにこのトンネルが蛇の穴なら、ほぼ体の直径とイコールだと思っていいはずだ。


つまり立った誠はおろか、大より巨大な直径、という事になる。


百九十近い大の頭にもぶつからない。

二メートルを超える直径ということになる。


「何十メートルの蛇っすかねぇ」


川上が呟くが、美鳥は想像し、青ざめた。


「あたしは戦力にならないから。

毒でも爆発でもいいから、チャッチャとやっちゃって!」


美鳥が叫んだ直後。


土壁が爆発した。


誠は蒸気の壁で皆を守った。


蒸気の壁は、また、土埃を消し去る効果もあった。


それは蛇と言うよりは、ワニのような鋭い歯の並ぶ怪物だった。


それは前を歩いた川上を一口で飲み込むような動きを見せた。


が、大が即座に顎に飛び込み、つっかえ棒のように顎を支えた。


カブトが、容赦なく怪物の体内に火炎を撃ち込むが、巨大すぎるのか明確なダメージは感じられない。


誠は、怪物の出てきた穴を石化した。


「目を潰すぜ!」


ユリコが頭に飛び乗った。


ユリは手のひらに幼虫を育てていた。


だが。


川上が、怪物の舌に捕まって動けなくなっていた。


福は銛を産み出し、怪物に接近した。

柔らかい口の中が見えている今なら、普通の銛でも傷はつけられそうだ。


誠は川上を透過して、影の手で引き寄せた。


川上の全身には褥瘡が出来ていた。

誠は治療に専念する。


「福君、舌を切るから、待ってて!」


猫は、同級生の福とは良いコンビのようだ。

素早く蛇の細い舌を爪から伸びるビームのような光の線で切断した。


素早く福は、口に飛び込み、上顎に銛を突き立てた。


テトロドトキシンをリットル単位で蛇に撃ち込んだ。


一方、誠は背後で川上の治療を急いでいた。


顔や手に褥瘡が出来ていたので、時間を遡らせた。


と、突然、壁が爆ぜ、別の大蛇が誠や後に下がっていた美鳥を襲う。


あらかじめ蒸気の壁を張ってあったため、誠たちは、蒸気に包まれたまま、滑るように蛇から逃げられた。

足元もシールドされていたので、蒸気が靴と床の間に入り、滑ったらしい。


と、美鳥の虫が蛇を襲う。


「あれ、美鳥さん?」


「顔だけだったら、蛇感は全く無いわね」


確かに、ニョロニョロした蛇が嫌いだ、という場合、今の頭だけ突き出した状態なら逆にワニでもトカゲでも同じだった。


腕のように自在に動く舌が危険だったが、そこは蒸気の壁で防いでいる。


誠は蛹弾を撃ち込み、蛇の口肉に食い込むとムカデに孵化させて体内を切り刻んだ。


川上は全快した。

体の表面だけを戻しただけなので、迂闊にも蛇に飲まれて舌に巻かれてしまった記憶はある。


ユリや福もパワーアップしてるってのに!


確かに影のウサギも強くはなってるし、角笛には、今までにない能力も生まれた。


だが、いかんせん鼻や耳以外では戦いの役に立てていない気がする。


また猫にイジられるだろう。


殴る蹴るは得意だが、他にこれと言った武器がない。

せめて角でもあれば、攻撃力も上がりそうだが……。


角か……。


頭の中で、ウサギに角が生えるイメージが、不意に形になった。


どうなのかな?

強いのか……?


川上にも分からなかったが、とにかく。


川上は蛇に一矢報いるべく、影のウサギに一角獣のような角の生えた、角ウサギとでも言うような生き物を発生させ、蛇の口の中に飛び込ませた。


影の角ウサギたちは、蛇の舌より早く動き、角で蛇の口の中を切り裂いた。


また、角の切っ先は鋭く、ナイフのように切断も出来る。


散々に蛇の口内を切り刻んだ後、川上は角笛が震えるのを感じた。


何かある……!


よく分からなかったが、川上は角笛を吹いた。


八匹のウサギが合体し、巨大な獣になると、その物干し竿のような長い角を突き出し、影の兎は蛇の喉奥に、鋭い角を突き立てた!


蛇は、ガクンと力を失い、そのまま地面に倒れた。


「川上君、それ、凄いよ!」


誠も驚いて叫んでいた。


「誠っち!

まだ戦いは終わっちゃいねーぜ!」


川上の兎は、最初の蛇に突進していった。


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